shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

別ヴァージョンで楽しむキャンディーズ特集②

2015-12-11 | 昭和歌謡
 キャンディーズの「やさしい悪魔」には通称 “木魚ヴァージョン” と呼ばれるレア・ミックスが存在する。もちろんこれは演奏で実際に木魚を叩いているというワケではなく、多分ウッドブロックの音だと思うが、ポクポクと聞こえるその音色が “木魚” の音を連想させるのだ。もうかなり前のことだが私はネットのファン・サイトみたいな所でこの木魚ヴァージョンの存在を知り、 “へぇ~、そんなヴァージョンがあったんか...(゜o゜)” と興味を引かれたのだが、その当時は未だCD化されておらず、たまたま YouTube にアップされていた音源をCD-Rに焼いてお茶を濁していた。
 しかし2008年にリリースされた究極の20枚組ボックス・セット「キャンディーズ・タイムカプセル」のボーナストラックとしてついにこのレア音源のCD化が実現、しかもそのタイトル表記が “初期プレス・ミックス・ヴァージョン”(←まぁいくら何でも “木魚ヴァージョン” とは書けへんわな...)ときたもんだ。初期プレスが木魚ということはセカンド・プレスから今のオフィシャル・ヴァージョンに差し替えが行われたということか? 早速手持ちの「やさしい悪魔」のシングル盤のランオフ・エリア(レコード内周の無音部分)を確認してみると、マトリクス枝番は -2 となっている。これはつまり枝番 -1 のファースト・プレスが存在し、それがレアな “木魚ヴァージョン” ということだ。
 アナログ・レコードのファースト・プレスがスベッたとかマトリクス枝番がコロンだとかいうマニアックな知識はビートルズのUKオリジナルLPを集めていた時に学んだことだが、まさかキャンディーズの、それもシングル盤でマトリクス番号を調べるハメになろうとは夢にも思わなんだ(笑) 私は「ラバー・ソウル」のラウドカット盤に完全KOされて以降、頭の中には “ファースト・プレス盤 = めっちゃ凄い音” という刷り込みがなされていたので、「タイムカプセル」でCD音源を既に手に入れていたにもかかわらず、やさしい悪魔の “木魚ヴァージョン” もラウドカットみたいな轟音で聴いてみたいと思い(←この発想がおバカやね...)、レコ屋を廻ることにした。
 関西エリアで歌謡曲のシングル盤を探すなら何はさておき日本橋である。私は枝番が-1のファースト・プレス盤を求めてNAKA、サウンドパック、ディスクJJと探し回り、今は亡き大十(←歌謡曲ファンにとっては宝の山みたいな店はだったので閉店を知った時は結構ショックだった...)で運良く発見できた時はめちゃくちゃ嬉しかった(^o^)丿 
 私はルンルン気分で家に帰り、大いなる期待をもってこのファースト・プレス盤をターンテーブルに乗せた。しかし、出てきた音は私の予想とは正反対のこじんまりした音で、全体の音圧も聴き慣れたセカンド・プレス盤よりも低いように感じられる。よくよく考えればすべてのファースト・プレス盤がラウドカットなワケがないのだが、それにしてもこの音圧の低さは一体どういうことなのだろう?
 木魚ヴァージョンの一番の特徴はもちろん木魚音がかなり大きくミックスされていることだが、サビの間だけでは飽き足らずにギターソロのバックでもずっとポクポク鳴り続けている感じで、特に1分50秒過ぎや3分10秒あたりでヤケクソ気味に炸裂する木魚の乱打は奇異にすら聞こえてしまう。一方、セカンド・プレス以降のオフィシャル・ヴァージョンではそのあたりの楽器間のバランスが改善され、木魚が聞こえるのはサビの間のごくわずかのパートで、その代わりにソリッドなギターやグルーヴィーなオルガン、絶妙な隠し味になっているエレピといった一つ一つの楽器のフレーズを際立たせるような素晴らしいミックスになっている。特にイントロのコツコツという靴音の響きに続くドラムのフィルインが木魚ヴァージョンよりもかなり大きな音で入っていて、楽曲全体をビシッと引き締めているところがいい(^.^)  ということで私はオフィシャル・ヴァージョンのミックスの方が気に入っている。
 音のミックス以外の違いとしては、ファースト・プレス盤はジャケ裏に印刷されているニュー・アルバムの発売日が “4月1日” になっているのに対し、セカンド・プレス盤では “4月21日” に修正されている。このことから考えてもこのファースト・プレス盤はごく短期間だけ出回ってすぐにマトリクス-2盤に差し替えられたものと推察される。
 尚、「タイムカプセル」のブックレットに載っていた高島幹雄氏の解説によると、ソニーにはこの木魚ヴァージョンのマスターテープが現存しておらず、CD化に際しては “最後の手段として保存状態の良いシングル・レコードを素材に、最新のデジタル・リマスタリングの技術で可能な限り音のクリーンナップをして収録が実現した” とのこと。マスター紛失はいただけないが、さすがは技術のソニーだけあって、とても盤起こしとは思えないような素晴らしいサウンドに仕上がっている。

やさしい悪魔 キャンディーズ 歌詞 /フル バージョン


やさしい悪魔 木魚ver