shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

DCC Compact Classics盤で聴く70年代ポール特集

2014-06-22 | Paul McCartney
 前回に続いて今日もDCC盤のポール特集だ。真空管を採用したマスタリング機材を使うことによってアナログ・レコードが持っていた温かみのあるサウンドをCDというメディアで再現することに情熱を注ぐエンジニア、スティーヴ・ホフマンがリマスターしたポールのシングル曲を「ウイングス・グレイテスト・アンリリースト」で聴いてその骨太サウンドの大ファンになった私は彼が手がけた他のポール盤も聴いてみたくなり、早速ネットでDCCのディスコグラフィーを調べてみた。
 その結果、 DCC Compact Classics シリーズで出ているポールのアルバムは「マッカートニー」、「ラム」、「レッド・ローズ・スピードウェイ」、「バンド・オン・ザ・ラン」、「ヴィーナス・アンド・マース」、「スピード・オブ・サウンド」の6枚ということが判明、「ワイルド・ライフ」と前回取り上げた「ウイングス・グレイテスト」はマスタリングが済んでいるにもかかわらず何故か未発売となってしまい、スティーブ・ホフマンの公式サイト上で公表れたテストCD-Rをコピーしたものがブートレッグとして(←当然ゴールドCDじゃないですが...)出回っているとのことだった。
 しかし1990年代にリリースされた初期のDCC盤はとうの昔に廃盤になっており、その音の良さもあってか中古市場でもビックリするような値段で取り引きされている。CD1枚に即決価格で$300~$600とか、呆れてモノも言えない。そこで私は eBayやヤフオク、アマゾンマーケットプレイスetcで網を張って辛抱強く待ち、3ヶ月ほどかかったものの上記の6枚すべてを比較的安く(約4,500~7,500円)入手することができた。
 これら6枚のホフマン・リマスター盤を聴いて感心したのは、どの盤も中低域が太く高域の伸びもナチュラルで、リミッターやコンプレッサー類を使って音をいじるということをしていないために柔らかくて温かみのある音でありながら一つ一つのアタック音は力強く表現されているという、アナログ・ライクな音作りに成功しているということ。ただ音圧を上げただけの凡百リマスター盤の類とはモノが違うのだ。とにかくウチの巨大スピーカーでヴォリュームをガンガン上げて聴いてもまったく聴き疲れのしない気持ちの良い音なので、アーカイヴ・コレクションのオフィシャル・リマスター盤を差し置いて(!)ついついこれらのDCC盤に手が伸びてしまう。
 DCC盤のような高音質盤は使用するオーディオ装置との相性も重要な要素だが、私の場合、プライマーのCDプレイヤー、マッキンの真空管アンプ、そしてアルテックの大型スピーカーという組み合わせがスティーヴ・ホフマンの作り出すサウンドとドンピシャにハマったという感じ(^.^)  他の装置でも同じように聞こえるという保証はないが、私なりに感じたそれぞれの盤の印象を書いてみたいと思う。

【マッカートニー】
 1曲目の「ラヴリー・リンダ」の最初の一音を聴いただけで “CDでこんな音が出せるのか!” と驚かされた。そのアナログライクな質感は2011リマスター盤を凌駕する素晴らしさ。アコギの音色がとにかく魅力的で、ポールのヴォーカルも実に生々しい。やはり人の声の再現は中域に尽きるということを再認識させられた。「メイビー・アイム・アメイズド」の入魂ヴォーカルも必聴だ。これら “リンダノタメニ カキマシター” な2曲を始め、どのトラックもシンプルな音作り故にホフマン効果が際立つ逸品に仕上がっている。
Paul McCartney - The Lovely Linda - McCartney - 1970 [24 Karat Gold Disc - 1992]


【ラム】
 我が最愛の「ラム」をホフマン・リマスターで聴ける喜びを何と表現しよう? とにかく全編を通して濃厚でリッチなサウンドに仕上がっており、メロディーの洪水とでも言うべき「ラム」の魅力を最大限に引き出している。改めてホフマンの音楽的センスの良さと腕の確かさ、そして何よりもマッカートニー・ミュージックに対する造詣の深さが分かろうというものだ。2012リマスター盤も悪くはないが、私としては豊潤なサウンドのDCC盤に軍配を上げたい。
Paul & Linda McCartney - Monkberry Moon Delight - RAM - 1971 [DCC Remaster - 1993]


【レッド・ローズ・スピードウェイ】
 この盤はアップテンポな曲が少なく一聴して地味に聞こえるが、そんな中で冒頭の「ビッグ・バーン・ベッド」の切れ味鋭いサウンドは既発のオフィシャル盤とは激しく一線を画するカッコ良さ(^o^)丿  B面ラストのメドレーの聴く者を包み込むような雄大なサウンドも聴き応え十分だ。ボートラで「Cムーン」「ハイ・ハイ・ハイ」「ザ・メス」「アイ・ライ・アラウンド」の4曲が入っているのも嬉しい。尚、この「レッド・ローズ・スピードウェイ」は他のDCCポール盤よりもレアらしく、総じて高めの値段で取り引きされている。
Big Barn Bed [DCC Ver.]


【バンド・オン・ザ・ラン】
 私がこれら6枚の中で最初に買ったのがこの「バンド・オン・ザ・ラン」なのだが、ぶっといベースがブンブン唸る「ミセス・ヴァンデビルト」を聴いて完全KOされ、“スティーヴ・ホフマン恐るべし” を痛感、その後DCC盤にハマるきっかけとなった記念すべき1枚だ。テンポ・チェンジから一気に加速するカッコ良さがたまらないタイトル曲、ノリ一発で突っ走る熱気ムンムンの「ジェット」、重心の低いグルーヴ感にゾクゾクさせられる「レット・ミー・ロール・イット」、スリリングな展開の波状攻撃がたまらない「1985」など、すべてが圧巻だ。
Mrs Vandebilt [DCC Ver.]


【ヴィーナス・アンド・マース】
 この盤は何と言っても「ヴィーナス・アンド・マース」から「ロック・ショー」へと移行する瞬間に音量が一気にハネ上がるパートが一番の聴き所。このガツン!とくる衝撃はハンパなく、コンプレッサーのかけられたオフィシャル音源と聴き比べればその凄まじさが実感できるだろう。「ワインカラーの少女」における重戦車のような低音の響きもたまらんたまらん... (≧▽≦)  終盤の「トリート・ハー・ジェントリー」~「ロンリー・オールド・ピープル」~「クロスロードのテーマ」と続く雄大な流れに身を任せるとまるで温泉に浸かっているかのように癒し効果満点で、日頃の疲れも吹き飛ぶというものだ。
ワインカラーの少女 [DCC Ver.]


【スピード・オブ・サウンド】
 この盤の一番の聴き所はやはり「心のラヴ・ソング」におけるポールの歌心溢れる自由闊達なベース・ラインに尽きるだろう。“ベースの音を骨太に再現することに命を懸ける問答無用の仕事人” ことスティーヴ・ホフマンのリマスタリングでこの曲を聴くだけで10年は若返れそうだ(笑) パワフルにロックする「ビウェア・マイ・ラヴ」のゴリゴリした押し出し感も手持ちの95年盤を軽く一蹴するカッコ良さだ。
心のラヴソング [DCC Ver.]
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