shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

何もなかったように / 荒井由実

2012-04-19 | J-Rock/Pop
 先週13日の金曜日、目に入れても痛くないくらい可愛がっていた愛犬のルミ(マルチーズ)が亡くなった。彼女は15才で人間の年齢に換算すれば90才だから長生きした方なのだが、もう完全に家族の一員として一緒に生活してきただけに何だか心の中にポッカリ穴が開いたような感じがする。今日はそんなルミへの追悼の意味も込めて、ユーミンの「何もなかったように」にしよう。
 ユーミン4枚目の、そして “荒井由実” としての最後のアルバム「14番目の月」に収録されていたこの曲は、当時彼女が飼っていたシェパードが死んで、その供養のために彼女が作ったもので前々から好きな曲だったが、いざ自分が愛犬に死なれてみると、その歌詞の一言一言が痛いくらいに胸に沁みてきて、それまでとは全く違った特別な意味を持った曲として心に響く。
 特に “人は失くしたものを 胸に美しく刻めるから いつもいつも 何もなかったように 明日をむかえる” のラインなんか、さすがはユーミン!と唸ってしまう見事な歌詞だし、 “本当の光に満ちてた頃がいつかを知るのは 過ぎ去ったあと” なんてフレーズを淡々と歌ってのけるユーミンのクールネスがこの曲の魅力を更に高めているように思う。
 彼女はよく “歌は下手” だとか “歌唱力は素人並み” だとか言われるが、歌詞に込められたメッセージを表現するには、あのつかみどころのない彷徨ヴォーカル(?)が一番合っているような気がする。自分の音楽をトータルで捉えてその中で自分を活かすスタイルを熟知しているというあたりは、ジャズで言えばさしずめセロニアス・モンクのピアノみたいなモンか?
 基本的にユーミンは全部好きだが、バブルの象徴的存在として時代を牽引していった80年代のミリオンセラー・アルバムが今聴くとやや古さを感じさせるのに対し、荒井由実時代の素朴な作品の方は風化せずにいつまでも瑞々しい響きを保っているように聞こえるところが面白い。
 今夜はユーミンを聴きながら、可愛かったルミの思い出を胸に美しく刻んでおくとしよう。

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