shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ホーム (ホエン・シャドウズ・フォール) / マット・デニス

2012-03-01 | Standard Songs
 「Kisses On The Bottom」の通常盤には12曲のスタンダード・ナンバーが収録されているが、前にも書いたようにその選曲はめっちゃ渋い。いわゆる“超有名A級スタンダード”というのは「バイ・バイ・ブラックバード」と「イッツ・オンリー・ア・ペイパー・ムーン」ぐらいで、「手紙でも書こう」でB級、それ以外はC級D級、下手をすると曲名すら聞いたことがないようなE級(←ここで言う○級とは曲の良し悪しではなく、あくまでも知名度のことです、念のため...)の佳曲が選ばれている。
 アマゾンで予約した UK 盤が予想よりも早く届いて有頂天になり、その場の勢いで始めたこの “ポールのスタンダード特集” 、最初は上記の2~3曲で打ち止めにするつもりだったのだが、手持ちの盤を色々調べていくとカヴァーしているアーティストが結構かぶっていたり新発見があったりしてコレが結構面白い。同志のみながわさんや shoppgirl 姐さんにも楽しんでいただけているようなので、企画(?)を延長してC級D級まで掘り下げてみることにした。ただ、A級B級とは違ってカヴァーしているアーティストが少ないので、3つのヴァージョンで何とかお許しを... m(_ _)m

 ということで “ポールのスタンダード特集” 第4弾は「ホーム(ホエン・シャドウズ・フォール)」だ。この曲は1931年にオランダのバンド・リーダー、ピーター・ヴァン・スティーデンがハリーとジェフのクラークスン兄弟と共作して自分の楽団の演奏でヒットさせたもので、有名なところでは1932年にルイ・アームストルングが、1933年にミルドレッド・ベイリーが、1950年にナット・キング・コールが(←「ラッシュ・ライフ」収録)、1964年にサム・クックが(←「エイント・ザット・グッド・ニューズ」収録)それぞれカヴァーしている。
 歌詞の内容は “夕闇が迫り 木々が一日の終わりを囁く時、私の思いは家へと向かう... 太陽が丘の向こうに沈むと 星々が一つまた一つと姿を現し 夜の帳が下りる 運命の女神が私を見放したとしても いつだって甘い夢が私を家へと導いてくれるのさ...” というもので、えもいわれぬ郷愁を感じさせる美旋律との相乗効果もあって、愛する者の待つ “家” への思いが聴く者の心にしみじみと沁みわたる佳曲だと思う。

①Matt Dennis
 男性ジャズ・ヴォーカルで私がシナトラとキング・コールの二人に次いで好きなのがこのマット・デニス。その絵に描いたような “粋” な語り口は唯一無比のカッコ良さだ。美しいメロディーを持った曲を洒落たピアノの弾き語りでスマートに歌うのが彼の十八番で、そういう意味でも “home” をテーマにした曲ばかりを歌った「ウェルカム・マット・デニス」に収録されていたこの曲なんか、彼にピッタリの旋律美を持ったナンバーと言えるだろう。サイ・オリヴァー楽団のゴージャスな演奏に乗ってゆったりと歌うデニス... その寛ぎに溢れたハートウォーミングな歌声がリスナーの “home” への思いをかきたて、大いなる共感を呼ぶ。ホンマにコレはたまりませんわ(≧▽≦) 何となく曲想がポールの「ベイビーズ・リクエスト」と相通ずるモノがあるように思うのは気のせいか? 尚、アルバム・ジャケットも自分の名前と玄関マットを引っ掛けた洒落っ気たっぷりのもので、見ても聴いてもそのセンスの良さに唸らされる。私にとっては “ジャズ・ヴォーカル座右の盤” の1枚だ。
ホーム


②Helen Humes
 ヘレン・ヒュームズのコンテンポラリー盤「スインギン・ウィズ・ヒュームズ」は歌良し、演奏良し、スイング良しと三拍子揃ったジャズ・ヴォーカルの隠れ名盤。このレコードの魅力はヘレンの伸びやかなヴォーカルとそんな彼女を支えるバックの演奏陣の豪華さにあり、ジョー・ゴードン、テディー・エドワーズ、アル・ヴィオラ、リロイ・ヴィネガー、フランク・バトラーといったウエスト・コースト・ジャズの腕利きたちがガッチリと彼女をサポートしているのだが、中でも注目すべきはウイントン・ケリーのピアノだ。ダイナ・ワシントンのバックで鍛えられた彼の歌伴には定評があり、ここでもお得意の軽快なタッチでツボを心得たプレイを聴かせてくれる。ミディアム・テンポで軽快にスイングする「ホーム」というのも中々オツなものだ。
Helen Humes - 02 - Home (When Shadows Fall)


③Ventures
 ベンチャーズがメジャー・デビューする前にドン・ウィルソンとボブ・ボーグルが自ら立ち上げたブルー・ホライズン・レーベルから1960年に出したシングル「ウォーク・ドント・ラン」のB面がこの曲で(←印税を稼ぐために、ドルトンから再発されたレイター・プレスでは自作曲の「ザ・マッコイ」に差し替えられたが...)、同年にリバティー系列のドルトン・レコードからリリースされたデビュー・アルバム「ウォーク・ドント・ラン」ではA面3曲目に収録されていた。まだメル・テイラーは加入しておらず、ドラムスはスキップ・ムーア。リード・ギターはボブ・ボーグルで、ノーキー・エドワーズがベースを弾いている。この頃の彼らはチェット・アトキンスをよりロックンロールにしたようなスタイルで、彼らのトレードマークであるモズライト・ギターの野太い音色も一世を風靡したあのテケテケ・サウンドもないが、そのおかげで原曲の持つチャーミングなメロディーの素晴らしさが浮き彫りになっている。フェンダー・ギターのすっきり爽快なサウンドが耳に心地良く響く快演だ。
The Ventures - Home
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