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shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Mind Games / John Lennon

2009-12-06 | John Lennon
 1973年にリリースされたジョンのソロ4作目にあたる「マインド・ゲームズ」は、前作「サム・タイム・イン・ニューヨーク・シティ」は一体何やったん?と言いたくなるような落ち着いた内容で、攻撃一辺倒だった前作とは違って様々なタイプの楽曲が収められていたが、特に歌詞の面では架空の理想国家 “ヌートピア” に言及したり、ヨーコへの愛を綴ったりと、「イマジン」時代に立ち返ったかのような作りになっているのが一番の特徴だ。もう政治ごっこに飽きたのか、はたまた前作の商業的な失敗に懲りたのか(ライバルであるポールの復活もめっちゃ意識してたハズ...)、様々な理由が考えられるが、とにかく歌いたいことを歌いたい時に歌うだけというこの無軌道無責任ぶりこそがジョン・レノンなのだと思うし、私はそんなジョンの人間臭さが大好きだ。又、これまで続いてきたプロデューサー、フィル・スペクターとの蜜月関係も終わりを迎え、ジョン自身がプロデュースしていることもあって、それまでのシンプルな音作りから一転、華やかなサウンドになっている。
 アルバム・タイトル曲の①「マインド・ゲームズ」はジョンにしか歌えないような雄大な曲想を持ったナンバーで、歌詞の面でも昔のように “愛と平和” 路線に軌道修正されている。元々のタイトルは「メイク・ラヴ・ノット・ウォー」といい、フェイド・アウト直前に歌詞の中に登場させ “前にも聞いたことがあると思うけど...” と結ぶところがいかにもジョンらしい。②「タイト・A$」は爽快なロックンロールで、ラバー・ソウルなリズムをバックに気持ちよさそうに歌うジョンがカッコイイ(^o^)丿 タイトル通りのタイトでシャープな歌と演奏に思わず引き込まれてしまう。“愛と平和”もエエけど、やっぱり私は無心でロックンロールを歌うジョンが一番好き!A面では(←CDにはそんなモンないけど...)べストなトラックだと思う。
 ③「あいすません」は日本語のタイトルからも分かるようにヨーコに向けて歌われた個人的なメッセージ・ソング。このアルバムには他にも④「ワン・デイ」、⑧「アウト・オブ・ザ・ブルー」、⑩「アイ・ノウ」と、全収録曲の1/3にあたる4曲がヨーコに語りかけるように歌われているが、いくら何でもこれはやり過ぎだろう。③の歌詞を聴いてると何でそこまでして媚びへつらわなアカンねんとイライラしてくるし、⑧はジョンらしい旋律を持った佳曲だが、アレンジ、特にバックの女性コーラスは大仰すぎてイマイチ好きになれない。これら4曲の中ではエルトン・ジョンもカヴァーした④とビートルズ的な懐かしさを感じる⑩が良いと思う。特に④はヨーコの存在なんか忘れさせるほどの美旋律に溢れた哀愁舞い散る名曲で、ジョンの切ない歌声に涙ちょちょぎれる。これでもう少し女性コーラスが控え目だったら言うことナシやったのに...(>_<)
 ⑤「ブリング・オン・ザ・ルーシー」は前作を彷彿とさせる挑発的な歌詞を、ペダル・スティールの音と華やかな女性コーラスが耳に残る煌びやかなサウンドでコーティングしたようなナンバー。歌詞の重さを絶妙なヴォーカルによって軽くしているところなんか、天才ヴォーカリスト、ジョン・レノンの真骨頂と言えるのではないだろうか。B面トップの⑦「インテューイション」は肩の力の抜けたポップなナンバーで、初めてこのアルバムを聴いた時からずぅーっと大好きな1曲。ジョンを代表する名曲とは言えないかもしれないけれど、私の感性のスウィート・スポットにジャスト・ミートしたようで、何度も聴きたくなるスルメ・チューンだ。軽快な⑨「オンリー・ピープル」はノリノリのお気楽ポップ・ソングだが、歌詞は “人々だけが世界を変える方法を知っている” というメッセージ・ソング。⑤にも言えることだが、前作の反省を踏まえた明るい音作りが成功している。
 ⑪「ユー・アー・ヒア」はリラクセイション溢れる癒し系隠れ名曲で、“リヴァプールから東京まで...” とか、 “海の彼方3,000マイル” とか、またしてもヨーコとの関係を歌ったものだが、珍しくクールで客観的な視点で語られており、 “またですか感” はない。この曲が醸し出すゆったりした雰囲気がどことなく「ビューティフル・ボーイ」に似ているような気がするのは考え過ぎか。⑫「ミート・シティ」はジョン・レノンここにあり!と声を大にして言いたくなるような猥雑なロックンロール。「コールド・ターキー」を裏返しにしたようなこの曲、水を得た魚のようにシャウトするジョンがたまらなくカッコイイし、ラウドなギターが唸りを上げてオフ・ビートを刻むところなんかもう最高だ(^o^)丿 私の中では「ニューヨーク・シティ」や「ムーヴ・オーヴァー・ミズ・L」と並んで三指に入る “究極のジョン・レノン・ロックンロール・クラシックス” という位置づけの超愛聴曲だ。何やかんや言うたかて、やっぱりジョンはロックンロールに限るでぇ~(≧▽≦)

John Lennon - Meat City

Some Time In New York City / John Lennon

2009-12-05 | John Lennon
 「ジョンの魂」、「イマジン」に続くソロ第3作「サム・タイム・イン・ニューヨーク・シティ」はそれまでとは打って変わったようなアグレッシヴな内容のアルバムで、当時の世界情勢とジョンを取り巻く環境の変化を色濃く反映した政治色の強いものだった。
 まずは何と言ってもニューヨーク・タイムズ紙をパロッたジャケットのインパクトが強烈だ。ニクソンと毛沢東が裸で踊っている合成写真とか、 “血の日曜日事件” の写真とかをフィーチャーし、記事にあたる部分にに歌詞を載せているのだ。このアイデアは非常にユニークで面白いし、これほど攻撃的な歌詞をジャケットに印刷すること自体、ジョンの並々ならぬ決意の表われだと思う。
 アルバムはスタジオ録音の Disc-1 と 過去の2つのライブを収めた Disc-2 の2枚組で、当初の予定では前年にライブ単独で「ロンドン・エアー・アンド・ニューヨーク・ウインド」というタイトルで出す予定だったものが、「バングラデシュ・コンサート」とリリースが重なるということで翌72年のこのアルバムに組み込まれることになったという。そのせいかアルバムとしての立ち位置が曖昧になってしまい(「ロンドン・タウン」に「USA ライブ」がカップリングされてるよーなモンやね...)、そのあまりにも政治的な内容と相まって不当なほど低い評価に甘んじているのだが、私は一部の不快なパート(笑)を除けばこの盤が大好きで、ジョンの全作品中でもトップ3に入るほど愛聴しているアルバムなのだ。
 ①「ウーマン・イズ・ザ・ニガー・オブ・ザ・ワールド」はフィル・スペクターの “音の壁” で強化されたエレファンツ・メモリーの分厚いサウンドをバックに、腹の中にあるものをストレートにぶちまけるジョンの潔いヴォーカルがカッコイイ!放送禁止?上等じゃねえか!発売禁止?大いに結構!ゴチャゴチャぬかしてる奴はこれでも食らえ、と言わんばかりの熱唱が素晴らしい。それでこそジョン・レノンだ (^o^)丿 
 ⑤「ニューヨーク・シティ」はジョンの全ソロ作品中トップ3に入るほど大好きな曲で、ジョン・レノンの魅力ここに極まれりといった感じの痛快なロックンロール。これを聴かずしてジョンを語るなかれと声を大にして言いたくなるような疾走系のナンバーだ。エレファンツ・メモリーの演奏もノリノリで、2分59秒からのピアノの連打なんてもう最高!!! 向かうところ敵なしといった感じのゴリゴリのブギー・ロック・サウンドが圧巻だ。
 ⑥「サンデイ・ブラッディ・サンデイ」は非武装のアイルランド市民がイギリス軍に虐殺された “血の日曜日事件” を取り上げたもので、U2 のものとは同名異曲。ジョンの戦闘的な姿勢が最も顕著に表れた歌詞とサウンドがスリリングだ。⑦「ザ・ラック・オブ・ジ・アイリッシュ」は「ハッピー・クリスマス」に非常に似た雰囲気を持った大名曲で、何と言ってもメロディー展開が素晴らしい!とにかくあまりにも良く出来た曲なので、苦手なヨーコのヴォーカルも気にならないほどだ(笑)。歌詞はその穏やかな曲調に反して過激で、 “略奪者” や “大量虐殺” といった言葉のバズーカ砲を容赦なく浴びせ、祖国イギリスを徹底的に非難している。
 ⑧「ジョン・シンクレア」は心地良いドブロ・ギターのサウンドが耳に残る佳曲で、 “ガッタ ガッタ ガッタ...♪” を15回も繰り返すなど、アレンジも凝っている。⑨「アンジェラ」は旋律の起伏に乏しく、ストリングスを加えたりタンバリンでメリハリをつけたりとあれこれとこねくり回してサウンド・プロダクションに工夫を凝らしてはいるが、このアクの強い曲が揃ったアルバムの中ではイマイチ印象が薄いように思う。
 Disc-2 の前半は1969年12月にロンドンで行われたユニセフのチャリティー・コンサートのライブで、ジョージやクラプトン、キース・ムーン、アラン・ホワイト、クラウス・ヴアマン、ビリー・プレストン、ニッキー・ホプキンスといった錚々たる顔ぶれによる演奏で、8分を超える①「コールド・ターキー」は混沌とした中にもこの曲が内包している殺気のようなものを見事に表現した緊張感溢れる演奏だ。
 Disc-2 の後半は1971年にニューヨークのフィルモア・イーストで行われたフランク・ザッパ & マザーズ・オブ・インヴェンションとのライブ・セッション。ジョンの “昔リヴァプールのキャヴァーンで歌っていた曲だよ。” という MC から始まる③「ウェル(ベイビー・プリーズ・ドント・ゴー)」はジョンの第一声 “ャノウ アィ ラーヴュー ベイベェー プリーズ ドン ゴゥ~♪” がもう鳥肌モノ。大げさではなく、音楽を聴いて背筋がゾクゾクする瞬間というのはこういうのを言うのだろう。バックで “キェェェ~” と叫び始めるヨーコを圧倒するかのように爆裂するザッパのギター・ソロが最高だ(^o^)丿 ⑤「スカンバッグ」は非常にテンションの高いインスト演奏をバックに “スカンバッグ!” と連呼するだけの曲なのだが、全員が一体となって疾走するグルーヴは快感の一言だ。この際、何かワケのわからんことをわめいているヨーコは無視しよう(笑)
 とまぁジョンのレコードを聴く時に何かとしゃしゃり出てきて鬱陶しいことこの上ないヨーコだが、 Disc-1 の②「シスターズ・オー・シスターズ」は前衛かぶれのヨーコととはとても同一人物と思えない軽快なガール・ポップ風の佳曲だし、歌詞が面白い⑩「ウィー・アー・オール・ウォーター」は気色悪い叫び声(←頭おかしいとしか思えん!)に目をつぶればエレファンツ・メモリーのノリノリの演奏が楽しめるブギー・ロックに仕上がっている。両方とも曲として十分傾聴に値する中々の出来だと思うが、 Disc-2 における発狂した魔女の断末魔のような雄叫びは相も変わらずで、ジョンとザッパの初共演に泥を塗って涼しい顔の KY ぶりを存分に発揮している。厚顔無恥とはこういう人のことを言うのだろう。まぁ Disc-1 は彼女の曲を飛ばして聴けばすむので特に問題はないが、ライブの Disc-2 はそうもいかないので、最新のデジタル技術を駆使してヨーコの声をキレイサッパリ消し去ってくれたら超愛聴盤になるのになぁ...(>_<)

New York City - John Lennon

Imagine / John Lennon

2009-12-04 | John Lennon
 純粋なスタジオ録音盤としてはジョンのソロ2作目にあたるこのアルバム「イマジン」には、彼の書いた曲の中で多分最も有名であろうタイトル曲を含め、全10曲が収められている。前作「ジョンの魂」は “これを聴かずしてジョン・レノンを語るなかれ!” と言っていいような、ジョンにとってのいわばプライベート・アルバム的内容で、私のようなビートルズ・ファンにとっては必聴の超重要作だったが、一般の音楽ファンにとってはへヴィーすぎるアルバムだった。そのせいか、それなりにヒットはしたものの、チャート上ではライバルのポールはおろか、ジョージにすら及ばないという結果に終わり、ジョンとしては内心忸怩たる思いがあったのだろう。このアルバムでは前作で見られた “重さ” は影を潜め、一般受けするような聴きやすいアルバムになっている。
 パッと聴いてわかる一番大きな違いはピアノを主体とした穏やかなサウンドが目立つことで、逆にシャープでエッジの効いたアップテンポの曲が少なく、ロックンロール色は非常に希薄なアルバムと言える。美しい旋律を持った曲が多く、アルバム「レット・イット・ビー」でも顕著なように、フィル・スペクター流のふわっとした包み込むようなサウンド処理や一般ウケしそうなストリングス・アレンジが随所に活かされている。それ故、世間では “ジョン・レノンの代表作” として大絶賛され、屈指の名盤的な扱いを受けているのだが、アルバム「ロックンロール」を取り上げた時に書いたように、純粋なロックンローラーとしてのジョンに惚れ込んでいる私としては、アスコットの白亜の豪邸の白い部屋で、白い服を身に纏って白いピアノを弾きながら歌うジョンよりも、「スタンド・バイ・ミー」のプロモ・ビデオのエンディングでペロッと舌を出すジョンの方が数段好きなのだ。困ったものである(笑)。
 ①「イマジン」は今や泣く子も黙る “平和のアンセム” として学校の教科書に載っていたりとか、不相応なまでに美化され、すっかり神棚に祭り上げられてしまったような感があるが、そーいった一連の流れにはどうしても違和感を覚えてしまう。私はこの曲を聴く時は、ただただ旋律の美しさとジョンの絶妙なヴォーカルを楽しむことにしている。②「クリップルド・インサイド」は軽妙な味わいがたまらない愛すべき小曲で、ジョージの弾くドブロ・ギターが絶妙なアクセントになっている。この曲、結構好きです(^o^)丿 ③「ジェラス・ガイ」も①と並ぶジョンの代表曲で、ジョンのヴォーカリストとしての素晴らしさが存分に味わえる名曲名唱。間奏部の口笛なんかもう見事としか言いようがないカッコイイ演出なのだが、バックのストリングスがうるさすぎるのが玉にキズだ。このスペクター・アレンジは好きじゃない(>_<)。
 ④「イッツ・ソー・ハード」は前作の流れを組むへヴィーなブルース・ナンバーで、このアルバムでは浮いてしまいそうなハードなギターとキング・カーティスのネチこいサックスに “ハウ・ドゥー・ユー・スリープな” ストリングスが絡む展開が面白い。⑤「アイ・ドント・ウォント・トゥ・ビー・ア・ソルジャー」はやや一本調子なメロディー展開の曲だが、凝りに凝ったサウンド・プロダクションとスペクターの見事なエコー処理、そしてジョンのヴォーカルの吸引力で聴かせてしまう。⑥「ギヴ・ミー・サム・トゥルース」のイントロのジョージのギター、もろ「アビー・ロード」ではないか!ハッキリ言って旋律は薄味で曲そのものの印象も薄いが、このギターのサウンドだけで萌えてしまう(笑)。⑦「オー・マイ・ラヴ」は前作に入っていた「ラヴ」の流れを汲むジョン的名バラッドで、そのメロディーの美しさには “アップテンポなロッケンロー命” の私も思わず頭を垂れて聴き入ってしまう。ニッキー・ホプキンスのリリカルなエレピが絶妙な隠し味になっている。
 ⑧「ハウ・ドゥー・ユー・スリープ」はポールを露骨に、そして痛烈に皮肉った歌詞であまりにも有名なナンバーだが、私がこの曲を聴いて感じるのは、ドロドロした憎しみではなく、 “嫌い嫌いも好きのうち” みたいな、ジョンのポールに対する複雑な感情である。歌詞をじっくり読んでみると、その行間から盟友でありライバルもあるポールに対する思いが伝わってくるのだ。まぁ皮肉屋ジョンの面目躍如といったところだろうか。そういう意味でも私はこの曲が大好きなんである。⑨「ハウ?」はいかにもジョンな佳曲だが、いかんせん⑧の後ではインパクトが弱すぎてほとんど印象に残らない。逆にラストの⑩「オー・ヨーコ」は非常に軽快なフォーク・ロック調のナンバーで、何度聴いても心がウキウキするようなハジけるようなメロディーがたまらない。(^o^)丿 エンディングのハーモニカもごっつうエエ味出してて、思わず鼻歌で口ずさみたくなるような(歌詞が歌詞だけに名前の部分は引いてしまうが...)愛すべき曲だと思う。

John Lennon - How do you sleep

John Lennon / Plastic Ono Band (Pt. 2)

2009-12-03 | John Lennon
 この「ジョンの魂」というアルバムは「マザー」や「ゴッド」etc、聴く者の耳に突き刺さるようなジョンの赤裸々な心の叫びを表現した曲を多く含んでいるため、どうしても歌詞に目が行きがちだが、もう一つ忘れてはならないのがプロデューサー、フィル・スペクターの存在である。60年代前半のフィレス・レーベル黄金時代に彼がプロデュースしたドリーミーなポップ・ソングの数々は全人類の宝物と言ってもいいくらい素晴らしいものだったが、ロックの音がしないアルバム「レット・イット・ビー」に対する世間の風当たりは強かった。私が思うに人一倍プライドが高いフィルのこと、きっとリベンジの機会を狙っていたのだろう。重い反響音を巧く使った彼のレコーディング・テクニックがこのアルバムのシンプルなサウンドの良さを見事に引き出している。同時期の「インスタント・カーマ」や「パワー・トゥ・ザ・ピープル」、ジョージの「マイ・スウィート・ロード」なんかもスペクターの “ウォール・オブ・サウンド” がなければあれほど強烈なインパクトは与えられなかっただろう。
 そんなスペクター流の見事なサウンド処理が活かされた曲がB面トップの⑥「リメンバー」だ。へヴィーなピアノの連打(←フォリナーの「ブルー・モーニング・ブルー・デイ」はこの曲の影響をモロに受けているように思う...)とそれに付かず離れず追従するベースとドラムス、そして絶妙な間を生み出すエコー処理が印象的なこの曲は私の愛聴曲。シンプルなバンド編成でありながらこれだけの切迫感、緊張感を出せるのが凄い。爆発音で唐突に終わるエンディングも衝撃的だが、その余韻の向こうから⑦「ラヴ」のイントロのピアノの音が徐々に近づいてきて、おもむろに“ラヴ イズ リアル~♪” とジョンがかすれた声で歌い出す瞬間なんかもう鳥肌モノ(≧▽≦) ジョン・レノンのヴォーカリストとしての魅力を活かしきった実に見事な演出だと思う。ジョンの歌声は説得力に溢れ、アコギとピアノのマッチングも絶妙な “シンプル・イズ・ベスト” を地で行くような歌と演奏で、聴いていると心が優しくなれるような気がする名バラッドだ。
 ⑧「ウェル・ウェル・ウェル」は初めて聴いた時はジョンの絶叫に圧倒されてインパクトも強かったが、今の耳で聴くと何となく “作り物” 的に響く。要はそういう時代だったということだろうが、そういった作品ほど風化の度合いは激しいように思う。それでも思わず引き込まれてしまうあたりはさすがジョン・レノン。そしてそれに輪をかけて凄いのがリンゴのドラミングで、それと感じさせないハイ・テクニックの連発は圧巻だ。⑨「ルック・アット・ミー」は何となく「ホワイト・アルバム」的な匂いが濃厚に立ち込めるバラッドで、「ジュリア」を「ディア・プルーデンス」で包んでチンして一丁上がり、みたいな感じの1曲だ。
 ⑩「ゴッド」はこのアルバムの、いやジョンの全ソロ作品中のベストと言えるナンバーで、何と言ってもその歌詞のインパクトは測り知れないものがあった。リリースから5年経って後追いで聴いた私があれほどの衝撃を受けたのだから、この曲をリアルタイムで聴いたビートルズ・ファンの心境は察するに余りある。ポピュラー音楽の歴史を変え、ポールと共にビートルズを引っ張ってきたあのジョンが “信じないモノ” を延々と羅列し、そのラストに “ビートルズを信じない!” と言い切ったのだ。今から考えれば迫真の演技だが、当時はこの歌詞がめっちゃリアルに響き、エンディングの “夢は終わった...” というジョンの歌声が胸に突き刺さった。この表現力、この説得力、この吸引力... 天才ヴォーカリスト、ジョン・レノンの真骨頂といえる屈指の名曲名演だと思う。
 ⑪「マイ・マミーズ・デッド」はまるで小さなラジカセから流れてくるようなサウンド処理を施され、ジョンが子供のような歌い方で “僕の母さん死んじゃった...” と淡々と綴っていく。超大作「ゴッド」の後にさりげなく置かれたこの小曲を聴いて、私は何となく「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の後の「インナー・グルーヴ」や「アビー・ロードB面大メドレー」の後の「ハー・マジェスティー」を思い出してしまった。“ビートルズを信じない!” と叫んだ直後のこの展開、ジョンが思いっ切りビートルズを引きずっているように感じたのは私だけだろうか?

GOD- john Lennon

John Lennon / Plastic Ono Band (Pt. 1)

2009-12-02 | John Lennon
 私が音楽を聴き始めた1970年代半ば、ビートルズは既になく、リアルタイムではポールがウイングスを率いて US ツアー中でわが世の春を謳歌していたのに対し、ジョンはベスト・アルバム「シェイヴド・フィッシュ」を出して70年代前半の自らの音楽活動を総括した後、主夫生活に入り沈黙していた。私は後追いの形でビートルズのアルバムを1枚ずつ買いながら、それと並行する形で各メンバーのソロ作品も少しずつ買い集めていった。当時の私は音楽誌のレヴューを参考にしてなけなしの小遣いをやりくりしながら次に何を買うかを決めていったが、ほとんど全てのレビューで大絶賛されていたのがこの「ジョン・レノン / プラスティック・オノ・バンド」で、「ジョンの魂」という秀逸な邦題が付けられていた。
 確かにどのレヴューにも “自らの個人的な苦悩を曝け出したジョンの赤裸々な叫び!” みたいなことが書いてあったように思うが、まだ自分の音楽観が確立していなかった私は何も分からずに“ビートルズの元メンバーのソロ作品中最高のアルバム”という讃辞に目がいき、愚かにもビートリィなサウンドを期待してこのアルバムを購入、初めて聴いた時はそのあまりにも重苦しい雰囲気に満ちた内容に圧倒されてしまった。何と言ってもアルバムの冒頭からいきなり “ゴ~ン、ゴ~ン... ” と重厚な鐘の音が響き渡り“マザァ~ ユゥ ハド ミィ~♪” とジョンの鬼気迫るヴォーカルがスピーカーから飛び出してくる。そこには私の大好きな「レヴォリューション」や「ヘイ・ブルドッグ」といった後期ジョンのへヴィーなロックンロールも、「トゥモロー・ネヴァー・ノウズ」や「アイ・アム・ザ・ウォルラス」のようなサイケなロックとは全く違った、非常にシンプルな形のロックとして提示されていた。
 で、その①「マザー」だが、アルバムのA面1曲目にインパクトの強い曲を配置するというビートルズ由来の手法に則っての大抜擢。シンプルながら一度聴いたら耳から離れないような強烈なメロディーに乗って、パーソナルでへヴィーな歌詞がジョンの切迫感溢れるヴォーカルで歌われるという、耳に心地よいポップスとは対極に位置するような曲で、絞り出すような声でシャウトするジョンの歌声には凄味すら感じられる。歌詞もシンプルながら実に生々しいもので、“母”そして“父”への想いが赤裸々に綴られている。特に後半のリフレインの部分で “mother, father” ではなくまるで子供のように “mama, daddy” と叫んでいるところなんかめっちゃリアルでゾクゾクさせられる。尚、この曲はアメリカではシングル・カットされたらしいが、ヒット・チャート番組で聴くには最も似つかわしくない、凡百のポップ・ソングとは激しく一線を画する名曲名演だと思う。
 ②「ホールド・オン・ジョン」はジョン自らが客観的な視点から当時色々と世間を騒がせていた “ジョンとヨーコ” に対して “しっかり頑張れ!” と励ますという変わった作りの歌。穏やかなメロディーを持ったこの曲、あまり印象に残るようなトラックではないが、あの強烈な「マザー」の後に置けるのはこんな曲しかないだろう。
 ③「アイ・ファウンド・アウト」はシンプルにしてソリッド、そのシャープでエッジの効いたサウンドはこの時期のジョンが書いた極上のロックンロール・チューンだ。ジョンの歌心溢れるリード・ギター、クラウス・ヴアマンのポールを想わせるような躍動的なベース・ライン、そして “ザ・ワン・アンド・オンリー” リンゴの絶妙なドラミング... まるでホワイト・アルバムに入っていても全然おかしくないような、まるで “進化した「ハイパー・グラス・オニオン(笑)」みたいなカッコ良い演奏だ。
 ④「ワーキング・クラス・ヒーロー」も初めて聴いた時から強く印象に残っているナンバーで、アコギの弾き語りで淡々と歌われる歌詞は痛烈そのもの... “fuckin’ crazy”、“fuckin’ peasant” と、“fuckin’” という言葉が2度も使われていたり、“笑いながら人殺しを出来るぐらいでないと奴らのようにはなれないぜ” とか、とにかく切っ先鋭い言葉の刃による波状攻撃だ。メロディーだけでも超一流の名曲だと思うが、歌詞カードを見ながら聴けば、ジョンの感情の込め方etc を含め、この曲を更に深く味わえるだろう。
 穏やかなピアノのイントロで始まる⑤「アイソレイション」は “孤独” を歌った内容がこれまた生々しい(>_<) 曲のメロディー的には②同様やや薄味なのだが、ジョンとしてはとにかく歌詞を聴かせたかったのではないか。ダブル・トラッキングを効果的に使ったジョンのヴォーカルは説得力に溢れている。(つづく)

Working Class Hero - John Lennon

Live Peace in Toronto '69 / Plastic Ono Band

2009-12-01 | John Lennon
 今日からもう12月、1年が過ぎるのは本当に早い。私の場合、毎年この時期にカレンダーをめくると頭をよぎるのはボーナスでもクリスマスでも正月でもなく、ジョン・レノンのことである。ジョージの命日が済んだらすぐに気持ちを切り替えて今度はジョンと、ビートルズ・ファンの師走は忙しい。ということで、ビートルズ・マラソンが終わったばかりというのに性懲りもなく今日から勝手にジョン・レノン・ウイークに突入だ。
 ジョンの本格的なソロ活動のスタートはこの「ライヴ・ピース・イン・トロント '69」(それ以前のワケのわからんヨーコ主導型前衛アルバムは論外)である。ビートルズのバラバラな動きが顕著になっていた1969年の9月13日にカナダ、トロントで行われたロックンロール・リヴァイヴァル・フェスティヴァルでビートルズのコンサート活動停止から約3年ぶりにステージに立ったジョン・レノンの雄姿を捉えたライブ・アルバムだ。サイドメンはエリック・クラプトン、アラン・ホワイト、クラウス・ヴアマンという布陣である。
 アルバムの冒頭のサウンド・チェック、コレがめっちゃカッコイイ。スリリングな演奏が始まりそうな雰囲気に満ちている。ジョンが “僕たちがよく知っている曲を演るよ。一緒に演奏するのは今日が初めてだからね。” と言っているように、ジョンの十八番であるロックンロールのスタンダードが3曲と自作の3曲がセット・リストに選ばれている。まずカール・パーキンスの、というよりプレスリーの①「ブルー・スウェード・シューズ」、いきなり “ウェリッツァ ワンフォザマニ...” と歌い出すジョンのヴォーカルのカッコ良さ!この全身に電気が走るような快感を何と表現すればいいのだろう(^o^)丿 まさにロックンロールを歌うために生まれてきた男、ジョン・レノンの魅力が全開だ。間奏でこれまたカッコ良いソロを聴かせるクラプトンもお見事。もうノリノリである。このアルバム中一番好きなトラックがこれだ。
 ②「マネー」ではアラン・ホワイトとクラウス・ヴアマンの生み出すへヴィーなリズムに煽られて熱唱を聴かせるジョンがタマランのだが、「ウィズ・ザ・ビートルズ」収録のあの究極ヴァージョンと比べてしまうと今一歩何かが足りない。元々単調なメロディーの曲なので急造バンド(何でもショーの前日に出演が決まり、たった1日でジョンがメンバーを集め、トロントへ向かうヒコーキの中でリハーサルをしたらしい... ありえへん!)としてはこのあたりが限界なのかもしれない。
 ③「ディジー・ミス・リジー」、忘れもしないあのシェア・スタジアムでジョンが熱唱していたロックンロール・クラシックだ。やっぱりジョンのロックンロール以上のものはこの世にないなぁ...(^.^) とここまでの耳に馴染んだロッケンロー3連発ですっかりエエ気分に浸っていると、それをブチ壊すかのように突如として奇声が...(>_<) それまで大人しくしていたのがついに我慢できなくなったのか、ホンマによぉやってくれるわ...(>_<) ただ、この曲ではまだギターの爆音に掻き消されてそれほど目立たないのがありがたい。
 ④「ヤー・ブルース」はライブということもプラスに作用したのか、「ホワイト・アルバム」のテイクよりも遥かにワイルドな演奏で、特にジョンとクラプトンが繰り広げるギター・バトルが生み出すグルーヴは圧巻の一言!①と並んで気に入っているトラックだ。
 ⑤「コールド・ターキー」はまだシングルが出る1ヶ月以上も前の初演ということで、歌詞の方はカンペを見ながら歌っているが、中々力感に溢れたソリッドな演奏だ。しかしここにきてついにヨーコが大爆発、“メェェェ~” としか聞こえないような奇声を発し続けてこの快演をブチ壊す。アンタここを一体どこやと思うてんねん!ロックンロールにアヴァンギャルド如きの入り込む余地など何処にも無いわい!どっかよそへ行って一人で前衛ごっこでも何でもしてなさい。個人的には別に彼女のことを好きでも嫌いでもないが、前衛音楽とかフリージャズとかいった騒音雑音の類を蛇蝎の如く嫌っている私にとっては、ヨーコ嫌いを決定づけることになったトラックだ。
 ⑥「ギヴ・ピース・ア・チャンス」は “この曲を歌うためにここに来たんだ。” とジョンが言うだけあってヨーコも出しゃばらず、しっかりとこの曲を堪能できる。この曲は演奏よりも歌詞を聴かせるための歌だと思うのだが、ここでは即興でクラプトンからルーズベルト、ニクソンまで様々な人の名前が歌詞に織り込まれている。この辺の言葉感覚の鋭さはさすがジョン・レノンやね(^.^)。
 アルバムのB面(CDの⑦⑧)はハッキリ言って聴くに値しない。もうエエかげんにせえよ、と言いたくなるようなヨーコのワンマンショーだ。あ~あほくさ...(>_<) とまぁこのように私にとっては愛憎半ばするややこしいアルバムなのだが、一部を除けばめっちゃ素晴らしいA面と、目の覚めるようなブルーが印象的なアルバム・ジャケットだけで十分価値がある1枚だと思う。
John Lennon&Plastic Ono Band - "Blue Suede Shoes"
コメント (4)

Rock 'n' Roll / John Lennon

2009-02-21 | John Lennon
 才能のことを英語で gift という。キリスト教の文化では、天賦の才能は神様からの贈り物ということだろう。では歌手にとっての「才能」とは何だろう?それはヴォイス・トレーニングetcで鍛えることの可能な歌唱力ではなく、先天的に生まれ持った「声」だと思う。星の数ほどいるヴォーカリスト達の中で、そのような「声」を持った天性の歌手といえる人は数えるほどしかいない。一声発すればその場の空気が一変して自分の色に染め上げてしまうような人達だ。
 ジョン・レノンはそんな数少ない“本物の”ヴォーカリストだった。「ツイスト・アンド・シャウト」も、「イット・ウォント・ビー・ロング」も、「マネー」も、「ロックンロール・ミュージック」も、みんなジョンのあの翳りのある太いシャウト・ヴォイスを得て新たな生命が吹き込まれ、生き生きと躍動し始めるのだ。ジョンの歌声を聴いた後では他のシンガーのヴァージョンが貧相に聞こえてしまう。ジョン・レノンのカヴァーをするということはベスト・ヴォーカリストと同じ俎上に乗って比較されるだけの覚悟が必要だし、ジョン・レノンによってカヴァーされるということは(それだけでも名誉なことだが...)オリジナルである自分の存在が消し飛ぶ危険性をはらんでいるというわけだ。それほどジョンの「声」の存在感は圧倒的なのである。
 そういう意味において、私にとっては「ジョンの声」+「ノリの良いロックンロール」=「最強」なのだ。だから私が常日頃愛聴しているジョンは、世評の高いソロ初期の「ジョンの魂」や「イマジン」よりも、ラウドなロッケンローが一杯詰まったこの「ロックンロール」なのだ。正直「ジョン・レノン=イマジンでキマリ!」みたいな世間の風潮にはウンザリする。ジョンを「愛と平和の使者」として神棚に祭り上げるのはもう止めてくれ。ビートルズといえば、ジョン・レノンといえば何よりもまずロックンロールではなかったか! 平和運動は他の人間にも出来るが、あんな凄いロックンロールを歌えるのはこの地球上にジョンをおいて他にいない。
 ついついコーフンしてしまったが、この盤には初期ビートルズもレパートリーにしていたような炎のロックンロールが満載なのである。しかも別居中に製作されたこともあってこの盤には私の苦手な「ヨーコの影」が微塵もない。つまり「ジョン&ヨーコの」アルバムではなく唯一の「ジョン・レノンの」アルバムということで、もういいことずくめの1枚なのだ。
 いきなり「ウェ~♪」からロック・シンガーとしてワン&オンリーの存在感を示す①「ビー・バップ・ア・ルーラ」、艶っぽい歌唱でオリジナルのベン・E・キングの存在を完全に消し去った②「スタンド・バイ・ミー」、リトル・リチャードの2曲をメドレーにして豪快に料理した③「リップ・イット・アップ~レディ・テディ」、「カム・トゥゲザー」の出自を自ら示した④「ユー・キャント・キャッチ・ミー」、まるで自分の曲であるかのように生き生きとした歌いっぷりでがむしゃらに突っ走る⑧「スリッピン・アンド・スライディン」、バディー・ホリーのしゃっくり唱法をそのまま真似てみせた⑨「ペギー・スー」、強烈なグルーヴ感に圧倒される⑪「ボニー・モロニー」、3人のビートルたちへのメッセージに涙ちょちょぎれる⑰「ジャスト・ビコーズ」...どこを切っても会心のロックンロールが飛び出してくる。
 ジャケットに映るのはハンブルグのスター・クラブ前でポーズを取る若き日のジョン・レノン。「ジョンの魂」は今も昔も「ロックンロール」なのである。

John Lennon Slippin' And Slidin' 1975 The Hit Factory NYC
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