昨年暮れだったか『源氏物語』の写本・大沢本に
標準本と大きく異なる内容が見つかったという
記事が新聞に載っていた。
「花宴巻」(はなのえんのまき)で、標準本では、
20歳の源氏が恋心をよせる朧月夜に車ごしに歌
を詠みかけると、歌が返ってきたが、それ以上の
描写がなく、巻が終わる。
声を確認できた喜びと、政敵の娘のためにどうす
ることもできない心情が表現されていると今まで
は解釈されてきた。
だが、大沢本ではさらに、
「かろかろしとてやみにけるとや」と続く。
「軽薄な女だと判断してそれ以上は動こうとは
しなかった」といった意味か。
これによると、すぐに返事をする女性は品性に
欠けると、(源氏が)幻滅したことになる。
『源氏物語』には紫式部自筆本は現存せず、
次々と写し返されていくうちに、ちょっと異
なる写本が生まれた。
約200年後の鎌倉前期に、藤原定家らが
それらの写本を集めて54帖に整理。
それが標準本として最も知られているのだ。
それに含まれなかった未整理の写本があり、
大沢本もその一つというわけである。
それにしても、
車ごしに歌詠みで声をかける王朝の恋も
悠長だが、現代のように、
即メールで❤❤(ハートマーク)を送らな
ければ相手に伝わらないというのも、忙し
過ぎる。
道を歩きながらメールを打っている女の子
をみて、そう思った。
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