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イネ苗床の管理の3つの要点

2021-04-29 04:39:28 | 「ちいさな田んぼのイネづくり」


 苗床の管理は的確に行う必要がある。苗作りは稲作で一番神経を使うものだろう。苗についてまとめて考えてみる。目標とする良い苗いと考えるものは、滞りない生育をした緑色濃い5葉期2分げつである。

 長いこと黄色い苗しかできないで、苦労してきた。やっと黄色にならない健全な苗が出来るようになり、畝取りが出来るようになった。苗の生育は5葉期で5週間が理想の生育の早さである。それより遅いのであれば、何か成育を疎外している理由がある。

 もちろん黄色い苗であれば、5週間で3葉期程度である。ということは8週間ぐらい苗床において、5葉期になって植えるのか、あるいは3葉期で止まってしまい、田植えをするのかになる。


 播種三日目で発芽した状態。

 自給の為の小さな田んぼのイネ作りは手植えである。3畝までの手植えは一人で一日で出来る。田植え機を使ったとして、機械の準備やら掃除やらを考えれば、同じ一日仕事になる。その上に、一年一度の機械は肝心な時に動かいないかもしれない。小さな田んぼは機械はいらない。

 5葉期2分げつの苗を手植えで行うことは、畝取りするための重要な条件になる。自給の為のイネ作りはイネのもつ力を十分に発揮させるものだ。その一番の要因が苗床における苗作りである。苗半作と言われてきたが、これは江戸時代の苗床でのイネ作り以来のことなのだ。

 まず、保温である。江戸時代はきっと保温に苦労をしたのだろう。田植えは今よりもひと月は遅かった。温度が高くなければ苗は健全に育たない。子供の頃油川のおばあさんの実家の石原家で見た苗床は、常に目の届く家の脇にあった。そして昼間は障子がかぶせてあった。夜はその上から油紙をかけてあった。

 現代では穴あきビニールを掛けている。ビニールを掛けることは保温であるが、それに加えてスズメに食べられることを防いでいる。穴あきビニールの優秀なことは、案外に地表面の温度が高くなり過ぎないことだ。穴から高温の空気は抜けてゆく。

 35度くらいまでだ。トンネルの上部は穴から高温の空気が抜けてくれる。上部の温度は50度を超える。水のある地表面は高温になり過ぎない。重要なことは種のある高さの温度が下がり過ぎず、上がり過ぎないことだ。

 意外に穴あきビニールと脇からの空気で中の温度が調整できる。温度は朝と昼に計測する。重要なことは1週目から、3週目までである。特に気温が高くなる後半ビニールをめくるなど、調整が必要になる。ビニールを外すのは雀が食べなくなった時である。3葉期ぐらいか。


入水口は酸素が混ざるように噴水型にしている。
 
 次が水管理である。発芽までは水をかぶっていても大丈夫だ。発芽してからは水を控えなければならない。水没を避ける。朝・夕と水を入れてすぐに止める。湿りが足りなければ昼間も行う。それ以上は水を入れない。土が濡れていれば、充分である。

 苗の成育の高さに合わせて、水没しない様に水を入れる。私たちの苗床は4畝ある広い苗床なので、高低差がどうしてもある。深くなるところにあわせて水管理する。これが意外に難しい。水没するようなら、水を切ってまた水を入れるを繰り返す。

 苗が2葉期ぐらいになれば、水を張っても沈まなくなる。そこからは水位を保ち、稲の成長に合わせて、水位を上げてゆく。水はわずかに動いていて、十分にある状態が良い。

 3つ目が苗床の土壌管理である。苗床には十分な肥料がなくては良い生育にならない。2,5葉までは種の力で生育する。それ以降は発芽した根が土から肥料を吸収して成育を始める。この時に十分な肥料がなければ、苗は育たない。

 ただし、有機農業では化学肥料のように即効性のある肥料はないので、秋から冬の間に苗床の土づくりを特別に行う。米ぬかやそば糠を1か月おきくらい、田んぼとしては少し多肥になるかという位撒いておく。緑肥がない場合なら、撒くつど耕す。

 苗床の土は細かく耕し、水を入れたならば少し深めの丁寧な代掻きを行う。土を深めに柔らかくして置けば、苗取りの時に楽になる。3畝の田んぼなら、1メートル幅で3メートルになる。できる限り丁寧作業を行い表面を水平にする。

 この「温度、水、土」の3要件を調整することで良い苗が出来る。すべては稲の本来の資質を引き出すことにある。初期こじらせると、イネは十分な生育が出来ず、畝取りは出来ない。イネ本来の力を発揮するためには初期生育がイネの植物として万全な状況が必要である。

 イネの種の播種は1㎡200g~100gで、面積があるなら疎であるほど良い。これで2畝分の1本植えの播種量である。不安もあるのでもう少し広く、もう少し多く種を播いた方が安心。種は出来るだけ均等に播き、その上から燻炭を被せる。さらにぼかし肥を軽く撒いておく。

 今年は久しぶりに直播の実験を行っている。これはもう30年前からやっているやり方である。簡単に言えば、苗床のような状態の田んぼを1畝で始めたのが最初である。田植えをせずに1畝ぐらいだから、種をすじ蒔きにした。


3,3m×3,3mの実験田

 直播用の実験の田んぼである。30センチの幅で線をひき、線に沿って種をまいた。発芽してから、間の苗を取り除いて、30センチ間隔の直播田んぼにする。その取り除いた苗を発芽しなかったところに捕植をしたい。

 畝間、株間、はころがしで除草をした。1畝ぐらいであれば、このやり方でそれほど手をかけずにできた。そして60キロ採ったのだ。これが私の稲作の始めた時の形である。
 
 塩沢という丹沢の不老山の奥で、1反の田んぼをやった。歩いて30分も行かなければならない田んぼだった。1反に筋蒔きをして、同じように株間のあまり苗で周辺の田植えをした。確か糯米を作り、餅つきをしたはずだ。

 やはり、苗床のように土づくりや保温が出来るのはそう広くては無理である。実験の直蒔きの場所も保温は行っていない。鳥にやられない様にネットだけは張ってある。穴あきトンネルの苗床とどのような違いが出るか、楽しみにしている。

 自然農法を目指すのであれば、やはり直蒔きである。イネを移植するというのはやはり自然ではない。出来れば、直播をやりたいと考えていたのだが、最終的に草に負けた。雑草の勢いが強くて、どうしてもイネが負けた。

 あまりに手がかかるので、苗床で苗を作るようになった。それでもいまでも直播をやってみたいという気持ちはある。福岡農法の様な素晴らしいものを自給のイネ作りで実現できたならば、最高である。以下その構想である。

 1メートル幅の苗床を作る。穴あきビニールトンネルの中かに、30センチ畝の筋蒔き3本の苗床を作る。苗床としてもつくる。30㎝間隔で、間に育った苗を間引く。間引いた苗を他の部分に移植する。苗床と直播と不耕起田植えの混合とする。

 苗床の両側に田植えする。田んぼ中央に1mで、両側に3mずつ植えれば、7m幅の田んぼになる。14mの長さであれば、100㎡の田んぼになる。自給の為の小さなイネ作りとしては今より前進形ではないだろうか。

 これは一人でやる場合の話ではあるが、14メートルのトンネルを2本作り、この倍の14mの正方形の田んぼであれば、200㎡の田んぼで120キロを目指すことが出来る。

 苗床に水を入れると同時に田んぼ全体に水を入れ始めれば、苗を作っている間の5週間で苗床の周りは、代掻きをしないでも、不耕起水田としてほぼ田植えが出来る状態になっているかもしれない。それなら草も減るだろう。こうした妄想をしては試してみたくなるのだ。
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