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イネ作り、直播き

2022-11-09 04:27:39 | 楽観農園
 



 イネ作りの一番自然な形が、直播きである。当たり前の事で今更のことだが、自然界の稲はすべて、直播きである。自給農業を志すとすれば、田植えが当たり前になっていることを覆す必要がある。それが私の35年のイネ作りの結論である。

 それが、石垣島で実現できそうになっている。自然の稲という植物は、河岸の水が季節によって上下する場所で水位に合せて発芽していたのだろう。苗を作り、田植えをするというのは、裏作があるとか、雑草の対策をするとか、特段の理由がある栽培側の事情で作られた技術である。

 始めて山北の山の中で、1畝の田んぼを作り、やってみたのが直播きの田んぼだった。苗を作り、田植えをするというのが、植物本来の形には見えなかったからである。自然農法と名乗りながら、田植えをする川口由一さんの本を読んで、どこか自然農法と名乗るのは違うような気持ちを抱いていたと言うことがある。

 直播きと言っても、いくつかの方法がある。乾田直播、湛水直播、折衷直播など様々な方法があるが、私は折衷直播きの30センチ角蒔きの方法を行っている。小田原と石垣と言う環境や土壌がまるで違うところでやってみて、成功しているから、大抵のところで可能な方法だと思われる。

 収量については、土壌が良くなるまでの間は直播きの方がむしろ多いという結果が出ている。それは田植え方式であると、どうしても苗作りが大変になるので、1本植えになる。田植え方式の土壌の出来上がったイネ作りは総合的に見ると一本植えが良いのではあるが、欠株の補植や、田植え著語の強風の被害など、障害が起きやすい。

 結果として一番省力的な農法が、直播きになる。しかも自然のままの栽培だから、田植えによる移植という稲に負荷を与えることがない。しかし、直播きは特別な技術が必要になることもある。雑草との兼ね合いや、鳥害は上手く避けなくてはならない。種まき時の土壌の状態や蒔く種の発芽の状態も難しい。

 一般にドローンなどを使う大規模農業の直播きは、大量の除草剤を使う農法になる。直播きの方が環境汚染を引き起こしやすい問題点がある。岡山県は直播きが多くて、問題が起きているという話を聞いたこともある。稲の種子が発芽して一ヶ月ぐらいの間、雑草が生えてこない状態を作る。そうしないと稲が草に負けてしまう。

 行っている折衷直播き法はもちろん自然農法である。JAS有機基準よりも徹底している物になる。自給用のものであるので、有機基準の認可は受けない。有機基準の制度そのものが納得も行かない、と言うこともある。国が制度を推進しているのに、認証費用が必要というところがおかしい気がする。

 問題になるのは雑草はコナギである。コナギは小田原にもあるし、石垣にもある。中国でも見た。イネ作りではコナギを入れないことが最大の目的である。ヒエについては8センチ以上の深水で防ぎきれる。コナギを防ぐ方法はアカウキクサによる抑草を今は試みている。

 ジャンボタニシでも完全に抑えられる。昨年石垣島で2期作期間だけ、イネ作りを行った。お借りした田んぼにはジャンボタニシがうじゃうじゃいたが、稲が食べられるようなことはなかった。ジャンボタニシの被害に遭うのは水管理が十分でないからだと思う。
 
 ジャンボタニシは集めて食べていた。食用で日本に導入された物と言うだけ在って美味しかった。水管理のやり方次第である。このことを回りの農家さんに話したが、少しも信じて貰えなかった。目の前で実際を田んぼを見て貰っても、信じたくない物は信じられない物なのだ。

 草の出やすい田んぼでは、直播きは除草が大変になる。そこで田んぼには雑草を入れない。直播き云々以前に、田んぼに雑草を入れないというのは重要な要素だ。簡単に言えば、出る雑草は一本残らず取ると言うことだ。一軒の自給は60坪で可能だ。60坪の小さな田んぼであれば、草を取りきることが出来る。取り切っていれば、草は出なくなる。

 のぼたん農園の農法は初めての子供でも、経験の無い年寄でも可能な、楽で簡単な方法にできる限りしている。そうでなければ、自給の田んぼの壁が高くなるからだ。田植えよりも、種まきの方が簡単というところがよい。体力もいらない。根気もいらないという誰にでも可能な技術の確立を目指す。楽しいイネ作りである。

 直播きの手順。まず前年のイネ作りが終わったら、荒起こしをして、すぐに代掻きを行い、10センチ程度の水を張っておく。通年通水が石垣の土壌では良い。土壌が通年通水しても緩くならない。そして、石垣であれば、12月に種まきをする。小田原であれば、5月に種を蒔く。石垣で早く種を蒔くのは、早く播けば台風に遭わないですむからだ。

 稲刈りのあと何もせずにそのまま水を張って置いた田んぼの代掻きを10月から始める。二ヶ月在れば、出ている稲などは、種まきに問題がグタグタな状態になる。石垣の気候は何でも分解が早い。11月の半ばに堆肥をれて、水をひたひたぐらいにして代掻きをして田んぼを平らにする。平らである事が、直播きには重要になる。

 12月に入ったところで、種まきの2,3日前に水を抜いて、田んぼに30センチの格子状の線を引く。格子の真ん中か交点か、どちらかの方法で種を蒔く。線を踏まないようにと指示した方が上手くゆくので、交点に播くのが普通。成れた人なら、線など無くても、播くことは出来る。しかし、初めての人にもやってもらいたいので、線は分りやすく引く。
 
 種籾は3粒前後播く。そのくらいが泥で汚れた手でもつかみやすいからである。1粒でも10粒でも問題は無い。結果はほとんど同じである。重要なことはしっかりした30センチ格子に発芽させることである。泥のついた手で種がつかみにくいので、タオルで手をふきふきやるといい。

 代掻きの終わった田んぼの中を歩くというのが大変なことになる。そこでせめて長靴くらいで歩ける土壌の状態にしたい。乾いてしまうと水が溜まらなくなり、まずいので天候にもよるが、水を抜いて3日目か4日目ならば、何とかなる。もし乾いてしまえば薄く水を入れれば良い。

 種を蒔いた直後に大雨になってしまったことがあるが、発芽には問題が無かった。何故問題が起きないかと言えば、発芽させた種を蒔くからである。普通の直播きは乾いた種を蒔いている。だから発芽まで時間がかかる。ドローンなどで播くなら、乾いている状態でなければ扱いが困難になる。

 しかし、手で播くのであれば、発芽させた種籾を蒔くことが出来る。発芽させた種籾であれば、少々泥に埋まっても問題が無く成長してくれる。種籾が発芽するためには、酸素が必要である。浸種して、鳩胸状態よりも進んだ種を使う方が良い。

 芽が一日も早く延びることが、様々な問題を取り除くことになる。播いて3葉期になるまでの時間が短いほど、鳥害やネズミの害などに遭いにくいことになる。発芽したのであれば、なるべく早く水を戻してゆく。水が戻るとネズミは来なくなる。

 ある程度の被害は覚悟して、補植のための苗を他に準備をして置く必要がある。一カ所苗床を用意して、苗代でも苗を作っておく。そうすれば、被害が生じても対応が可能になる。苗代の田んぼは苗代が終われば、一本植えの田んぼにする。種籾をとるには一本植えでなければだめだからだ。
 
 
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