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風景の意味

2011-06-24 04:27:28 | 水彩画
風景を描くことが多い。今年の春は、全く描けなかった。描きたくなかった。描きたくない時に絵は描かないから「一枚の繪」の会場で菜の花を描いた時以来、筆をとっていない。いつもは散歩をしながら、頭の中で絵を描いていたりするのだが、そう言うこともない。描きたくなるように見えないからである。庭にも、杏子、桜、桃と咲き乱れた。しかし、いつもの年とは違うものに見えた。風景が美しいとか、癒されるとか、そう言うことがいかに内的な受け手のものであったかが分かる。確かに絵は美しいから描く訳でもないが、絵にしたいという根幹の部分と、美しいという感激が繋がっていることは、一応いいだろう。以前、石和の桃を描きに行っているという話をしたら、あんな農薬まみれの桃を良くも描く気に成れると、驚かれたことがある。反農薬原理主義者にしてみれば、農薬がかかっている意識が、桃の風景に重大に影響することに成る。

放射能に汚染された風景。この桜の花も放射能に汚染されたのか。こういう意識が桜の花を美しいものとして見れなかったのか。確かにそれもあるが、父が死んだ時も、母が死んだ時も、しばらく風景がなにも語りかけなくなった。多分、大津波。原発事故。多くの人が死んだ。日本と言う国自体が死んだような気がした。この時代に生きてきた一人として、ここに至る道を歩んで来たのかという、情けなさと絶望感に、取り込まれてしまった。風景に愛情が持てないという状態。マサイさんが美しい景色と言いかけて慟哭した。もう一度美しい風景と言って慟哭した。美しいと見えない自分が絶望に取り込まれる。それは心の問題だ。心が変われば風景は何も変わらない。自分の気持ちの持ちようで風景を取り戻すことは出来る。このように絞り出すようにいわれた。100年かけて風景を取り戻そうと考えたと言われた。そうして川内村の漠原人村に戻って暮らしている。

今、野山は緑に満ち満ちている。早朝、田んぼをコロガシながら歩いていると、自分自身が風景に成る。そのよそよそしい怒りに満ちたような風景の中の景色に成る。風景が許していない。風景はこの人間の仕業を許していない。もちろんそう思うのは自分の心の持ちようである。同じに風景が見えて、前のような絵を描くことができるのだろうか。このしらじらしい、怒りの風景を描いてみるべきなのか。違うように見えるなら、違うように描けばいいのかもしれない。描いてみたいという気持ちは、少しづつ湧いてきている。先日銀座に出て、少し絵を見た。友人が個展をしていたからだ。絵は震災があったことなど全く反映していない。マチスの絵もそうだ。娘さんがゲシュタポにつれて行かれる。その時期の絵が平穏ないつものマチスの絵である。多分、マチスにとっては絵と言うものは、科学的なもので、心の関与するような感情的なものではないのだろう。

マチスにあこがれ、絵を描いていた訳だが、自分が丸で感情的で、情に流されて絵を描いてきたことをしみじみ知った。多分日本人の描く繪の大半が、気持ちの絵だ。しかし、震災の影響が絵に表れないという不思議な、気持ちの繪のようだ。人のことはどうでもいいが、自分が描く気に成る絵がどんなものであるのか。今は、待っている。マサイさんの言葉が、抽象画のように聞こえた。飛躍しながら、繰り返されながら、世界観を語られていた。それは論理だけでもなく、感性だけでもなく、マサイ哲学を表現していたと思う。あの飛躍が、展開が、ちりばめられながら伝わった思想。具体的な言葉はなかったが、マサイさんのことが少しわかった。絵もそうなのだと思う。この進退きわまるような、絶望の中でどのように絵を描くのか。それが自分が生きてきたものに、真実があれば、きっといつかは表れて来るのだろう。

昨日の自給作業:コロガシ、草刈り、3時間 累計時間:32時間

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3 コメント

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風景 (おむすび)
2011-06-24 07:13:57
旅にでるとスケッチしますが、今住んでいる街を描こうと思ったことはありませんでした。
絵を描く知人が、富士山も高層ビルも同じに見えると言っていたことの意味が分かった気がします。
おっしゃるように、描くということは哲学かもしれません。だから獏原人のマサイさんもマチスも同じ次元にいる。

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獏原人村 (おむすび)
2011-06-27 22:34:42
5月の記事ですがこんなページで見つけました。

http://www.cyzo.com/2011/06/post_7711.html

下の方にコメント40件あります。
返信する
勇気の本当の意味 (笹村 出)
2011-06-28 06:41:14
マサイさんのお話を聞いてから、やっと農作業に集中してきました。
田んぼの草取りに気持ちが入るようになりました。
何としてもお茶畑を回復させます。
絵はまだ描けません。
コメントは読めませんでした。
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