蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

モダンタイムス

2008年11月19日 | 本の感想
モダンタイムス(伊坂幸太郎 講談社)

魔王」の続編。割とスタンダードなエスパー迫害の物語。

SEの主人公は、先輩がトンズラした後の仕事を任されるが、依頼主とは電話も通じず、暗号がちりばめられたソースに頭を悩ます。しかし、ふとしたきっかけで暗号がとけ、主人公は大量殺人があった学校の事件と依頼主が何らかの関係があるのではないかと疑い、関係者を訪ね歩くが・・・といった話。

このブログでも何度も書いてきたことだけれど、伊坂さんの作品には共通した特徴がある。
① 超能力者(あるいはそれに近い抜きん出た能力を持った人)が登場する。
② まともで常識的な主人公と突飛な発想・行動をするバイプレーヤーを絡ませる。
③ 異なる場面を互い違いに描き、ラストに向かって除々に収束していく。
④ 現在の日本の国の体制に懐疑的で、その将来に悲観的である。
⑤ 有名な映画や文学作品等からの引用が頻繁に行われる。

本作品では、正編である「魔王」と同様、主人公の目線でストーリーが一直線に進むので③は当てはまらないかもしれない。しかし、その他はほぼ該当する箇所があったように思う。

魔王」「ゴールデンスランバー」「モダンタイムス」といった近作では、④の要素が非常に色濃く出ていて、しかも後の作品になるほど絶望感が強くなってきているように思う。
どの作品も、結論は、「もうこの国(あるいはこの世界)を変えていくことはできないから、後は逃げるしかない」である。

私としては、暗い調子のストーリーの中にも、②のようなヘンテコなバイプレーヤーの登場や、⑤のような引用を多用するといった味付けをして、ある種の軽妙さを演出してくれていた「重力ピエロ」「ラッシュライフ」「チルドレン」「グラスホッパー」といった作品の方が好みなのだが・・・
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