蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

バンクーバーの朝日(小説)

2024年08月30日 | 本の感想
バンクーバーの朝日(小説)(西山繭子 マガジンハウス文庫)

1930〜40年代、カナダ移民の二世中心に結成された野球チーム:朝日軍をモチーフに、差別とアイデンティティの確立に悩む移民二世を描く。

本作が映画の原作なのかと思ったら、解説によると著者が映画をみてノベライズしたものらしい。

移民というとアメリカやブラジルしか思い浮かばないのだが、カナダへの移民も(二世が野球チームを作れるのだから)相当に大規模で長期にわたったものだったようだ。

現地?チームに全く歯がたたなかった移民チームが活路を見出したのはバントや走塁を中心にしたスモールベースボールだった。
後世から見ると当たり前のようにみえてしまうが、そんな戦法を誰も実践していなかった当時では革新的だったはずで、そういう工夫を考え出すあたりが日本移民二世らしい、と考えるのは身びいきがすぎるだろうか。
もっとも本作では、主人公のレジー(礼治)がスモールベースボール的戦術を思いつくのは、当りそこねが偶然ヒットになったことだったのだが。
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新!店長がバカすぎて

2024年08月30日 | 本の感想
新!店長がバカすぎて(早見和真 角川春樹事務所)

吉祥寺にある武蔵野書店本店に勤務する谷原京子は、本好きで契約社員から正社員になった。しかし日常業務ではストレスがたまるばかり。その主な要因は山本店長だった。一時他店に転勤になっていたのだが、本店に戻ってきたのだ・・・という話。

本作は「店長がバカすぎて」の続編なのだが、正編を読む前につい読んでしまった。書店員のやりがいと悩みをギャグを交えて描くのだが、ほとんどの部分が後者(悩み)の方にさかれていて、本作では店長に加えて会社の跡継ぎの専務も登場して主人公:谷原京子は翻弄?される。

よくあるパターンとして、主人公の悩みのタネだった人もよくよく思い返してみると実はいい人で陰ながら主人公を支えていたのだった・・・みたいなのがある。
本作もそうなんだろうと思って読んでいると、専務はそのパターンに近く落ち着くのだが、店長の方は最後まで変人のままで、主人公とわかりあえることは決してない、というのが面白い。(第5話(新店長がバカすぎて)だけが店長視点で書かれていて、前記のパターンだったか、と一瞬思わされるのだが、すぐに覆されてしまう)
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