白状しよう…1ヶ月前から、左肩が五十肩になった。
五十も近いので病名に不足は無いが
痛いのなんのって…吐き気がするくらいだ。
原因はわかっている…アルトサックスさ。
慣れないので、左手の親指一本で総重量の半分近くを支える格好になる。
つい力が入ってしまい、どうにか吹けるようになった頃
発症してしまった。
年取ってから新しいことを始めるって大変なんだなぁ…
とつくづく思う。
泣きながらバンドリーダー…通称「モトジメ」に
回復するまで、軽いフルートに換えてくれ…と懇願する。
モトジメは「この根性無し!」とののしるが
背に腹は代えられない。
一緒にアルトサックスに挑戦しよう…そして夢はジャズ…
二人は確かに誓い合った。
彼の意気込みはすさまじく
吹いていると下唇の内側に下の歯が当たってズタズタになるとかで
歯医者へ走り、下歯を丸く削ってもらった。
モトジメは金管楽器出身なので、口元の力加減がつかみにくいのだ。
「慣れたら大丈夫なのに。バ~カで~!」
とさんざんあざ笑ったバチが当たった。
病院にも行ったし、色々やってみたがいっこうに良くならない。
しかたなくとうとう最後の手段…「アレ」を使うことにした。
アレとは、知人のおばあちゃんが開発した
民間療法の真っ黒い液体である。
脱脂綿に浸したものをナイロン袋に入れ
患部に当てれば、たちどころに痛みはおさまる。
おばあちゃんはもうずいぶん前に亡くなったので
これは言わば形見の品である。
効き目は強力が、ただひとつ問題が…。
ものすご~くクサい。
ニオイのほうも強力なのだ。
楽になるのはわかっていても
これをやると、通常の社会生活はまず送れない。
部屋にも服にも髪にもおぞましき香りが染みつく。
これさえあれば、村八分や嫌われ者の名は欲しいままである。
もはやこれまで…
予定と予定の合間を選んで
勇気を振り絞り、禁断の一升瓶を開ける。
ボンッ…と音がして、たちのぼるハゲしい香り…。
肥だめに酢とニンニクをぶち込んだ感じかしらん。
「クサい」
「あっちへ行け」
家族の迫害を受けながら耐える。
片袖を脱いで湿布してると…
あら?なんだか試合後に肩をアイシングしている甲子園投手
菊池クンみたいじゃない?
ハンカチ王子みたいじゃない?
などと見せびらかすが
「ハンカチ王子は右じゃ」
と冷たく言われる。
孤独とニオイに耐えた甲斐あって、かなり楽になった。
それに気をよくして義母のところへ行ったら
「こないだから太ももの付け根が痛い」
と言う。
義母はすでにこの液体の愛用者だ。
それで痛みが取れないとすると…私は考える。
「骨盤よ!骨盤が歪んでるのよっ!さあっ!ユカに寝て!」
自分のやっている体操を教える。
「痛い…できない…」
と言うのを
「歪んでる人は痛いのよっ!もう一回!イチ、ニ、イチ、二!」
と何回もやらせる。
「もうダメ…」
「なに言ってんの!これで若返るのよ!
ワン、ツー、ワン、ツー!」
若返ると聞いて、歯を食いしばり頑張る義母。
数日後、夫が
「これからオフクロを病院に連れて行って来る」
と早めに帰って来た。
「どこか悪いの?」
「太ももの神経痛で、おとといから通ってる。
歩くのもつらいらしいんだ」
骨盤の歪みではなかったのだ…。
神経痛患者に、無理な体操を強要。
すまん…ヨシコ…。
五十も近いので病名に不足は無いが
痛いのなんのって…吐き気がするくらいだ。
原因はわかっている…アルトサックスさ。
慣れないので、左手の親指一本で総重量の半分近くを支える格好になる。
つい力が入ってしまい、どうにか吹けるようになった頃
発症してしまった。
年取ってから新しいことを始めるって大変なんだなぁ…
とつくづく思う。
泣きながらバンドリーダー…通称「モトジメ」に
回復するまで、軽いフルートに換えてくれ…と懇願する。
モトジメは「この根性無し!」とののしるが
背に腹は代えられない。
一緒にアルトサックスに挑戦しよう…そして夢はジャズ…
二人は確かに誓い合った。
彼の意気込みはすさまじく
吹いていると下唇の内側に下の歯が当たってズタズタになるとかで
歯医者へ走り、下歯を丸く削ってもらった。
モトジメは金管楽器出身なので、口元の力加減がつかみにくいのだ。
「慣れたら大丈夫なのに。バ~カで~!」
とさんざんあざ笑ったバチが当たった。
病院にも行ったし、色々やってみたがいっこうに良くならない。
しかたなくとうとう最後の手段…「アレ」を使うことにした。
アレとは、知人のおばあちゃんが開発した
民間療法の真っ黒い液体である。
脱脂綿に浸したものをナイロン袋に入れ
患部に当てれば、たちどころに痛みはおさまる。
おばあちゃんはもうずいぶん前に亡くなったので
これは言わば形見の品である。
効き目は強力が、ただひとつ問題が…。
ものすご~くクサい。
ニオイのほうも強力なのだ。
楽になるのはわかっていても
これをやると、通常の社会生活はまず送れない。
部屋にも服にも髪にもおぞましき香りが染みつく。
これさえあれば、村八分や嫌われ者の名は欲しいままである。
もはやこれまで…
予定と予定の合間を選んで
勇気を振り絞り、禁断の一升瓶を開ける。
ボンッ…と音がして、たちのぼるハゲしい香り…。
肥だめに酢とニンニクをぶち込んだ感じかしらん。
「クサい」
「あっちへ行け」
家族の迫害を受けながら耐える。
片袖を脱いで湿布してると…
あら?なんだか試合後に肩をアイシングしている甲子園投手
菊池クンみたいじゃない?
ハンカチ王子みたいじゃない?
などと見せびらかすが
「ハンカチ王子は右じゃ」
と冷たく言われる。
孤独とニオイに耐えた甲斐あって、かなり楽になった。
それに気をよくして義母のところへ行ったら
「こないだから太ももの付け根が痛い」
と言う。
義母はすでにこの液体の愛用者だ。
それで痛みが取れないとすると…私は考える。
「骨盤よ!骨盤が歪んでるのよっ!さあっ!ユカに寝て!」
自分のやっている体操を教える。
「痛い…できない…」
と言うのを
「歪んでる人は痛いのよっ!もう一回!イチ、ニ、イチ、二!」
と何回もやらせる。
「もうダメ…」
「なに言ってんの!これで若返るのよ!
ワン、ツー、ワン、ツー!」
若返ると聞いて、歯を食いしばり頑張る義母。
数日後、夫が
「これからオフクロを病院に連れて行って来る」
と早めに帰って来た。
「どこか悪いの?」
「太ももの神経痛で、おとといから通ってる。
歩くのもつらいらしいんだ」
骨盤の歪みではなかったのだ…。
神経痛患者に、無理な体操を強要。
すまん…ヨシコ…。