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殿は今夜もご乱心

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みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

ハルマゲドン・13

2025年07月20日 10時00分39秒 | みりこんぐらし
今日は参議院選の選挙日です。

期日前投票は済まされましたか?

今回の参院選は、日本の未来を決める大切な選挙です。

まだ投票がお済みでない方は今日、ぜひ投票に行ってくださいね。

投票したら俄然、夜の選挙速報が楽しみになります。

私なんて、そのために行ってるようなものです。



さて、無事に入院したサチコだが、ホッとしてばかりはいられない。

やるべきことが、幾つかある。

まず新聞販売店に電話して明日からの新聞を止め

次に民生委員への連絡。

入院したことを知らなければ

誠実な彼は暑い中を何度も訪問するだろうから、留守を伝えておく。


それから隣の家、さらにサチコの鬼電の犠牲となった姪の祥子ちゃん。

「何とかして」と言われたので、何とかしたことを連絡する。


「祥子姉ちゃん、迷惑かけてごめんね。

さっき入院させたけん、しばらく大丈夫よ」

「サチコ叔母さん、入院したん?

それがええわ…本人もしんどかろう」

「夏に悪化するけん、暑い間は病院よ」

「ずっと入院しとくことは、できんの?」

「まだ元気なけん、無理なんよ」

「そりゃ残念じゃね。

ちょっとの間じゃけど、あんたも身体を休めんさいよ」

「うん、ありがと」

「マーヤちゃんは、話し合いに帰ると言うとった?」

「そげな話は出んよ。

帰るわけないじゃん。

あの子は最後まで、逃げ切る気じゃもん」

「やっぱり…

私、マーヤちゃんと久しぶりに話して、びっくりしたんよ。

こっちが一緒懸命に話しても、全然他人事。

自分の話すことが、マーヤちゃんの頭を素通りするのがわかるんよ。

ほんと、あれはショックじゃった。

一回帰って、みりこんちゃんと話し合えって言ったら

仕方なくウンと言ったけど、あれは早う電話を切りたかっただけなんじゃね。

何の役にも立たんで、ごめんね」

「ううん、私は嬉しかったよ…ありがとう」


それらが終わると、マジで役に立たない妹二人に連絡。

マーヤには、なかなか電話に出ないから困ったと

嫌味たっぷりに伝えた。

生徒に怪我人が出て、手が離せなかったそうな。

ああ、そうですかい。


ついでに、入院費の請求があんたとこへ行くから支払え、という旨と

入院する時に先払いする3万円の“預かり金”を立て替えているので

領収を送るから私の口座に振り込めと伝えた。

これぐらいはしてもらう。

私なら3万円を送る時に、日頃のお礼として金額に色を付け

別便で何か品物でも送るが、マーヤは3万円ポッキリに違いない。


ともあれサチコは、デイサービスの代金が引き落としなのに

病院の入院費が振り込みなのはおかしい…

私が入院費の支払いを口実に通帳を預かって

うまいことチョロまかしているんじゃないのか…

ずっとそう言って疑っていた。


何年も通うデイサービスとは違って、病院は3ヵ月で退院するので

引き落としの手続きはしない…

口座から口座に振り込んでいるから、記帳を見ればわかるだろう…

口を酸っぱくして何度も説明してきたが、納得しないままだった。

やはり老人のお金は、実子が扱うのが正解だ。

いちいち疑われて警察に通報されたんじゃ、かなわん。


その警察沙汰だが、サチコの主張は

継子に無断で書類を書かれて実印を押され

家の名義を変更されたというもの。

それが事実と断言するのであれば

まず書類の提出先である国土交通省に問い合わせ

書類の存在を確認するのが先である。

国交省からうちへ調査に来た職員の名刺があるのだから

そこへ電話を一本かければ済むのは誰でもわかるだろう。


そして本当に書類が提出されていたら、無効の手続きを取れば

継子の陰謀は終わる。

無効が無理となれば、ここで裁判か警察だ。


しかしサチコは本丸の国交省を避けて、いきなり警察へ行った。

私は「国交省に聞いてみろ」と何度も言ったが

そのことに触れると、いつも話をそらした。

認知症は言い訳にならない。

手当たり次第に電話をかける電話魔サチコが

国交省だけ避けるのは不自然である。

つまりサチコに、書類の提出先を確認をする気は無いのだ。


それを「なぜ?」と疑問には思わない。

私にはわかっている。

ヨレヨレのサチコを連れていると、地元の人々は言うさ。

「優しい娘さんがいて良かったですね」

「しっかりした娘さんが近くで安心ね」

サービス精神旺盛な人になると、「綺麗な娘さん」とまで言う。


サチコはずっと、これが気に入らなかった。

彼女にとって優しくて、しっかりしていて、ついでに綺麗な娘は

実子のマーヤでなければならないからだ。

そしてそれを言われるたび、サチコにはこう聞こえたはずである。

「あれほどかわいがっていた、自分の子はどうしたの?」


実子の無関心は、サチコにとって最大の泣きどころ。

聞くたびに身を切られるような思いなのは

途端に落ち着きが無くなって機嫌が悪くなるので、私にも見て取れた。


そして言う方もそれをわかっていて、わざと言っているフシがあった。

小さな田舎町のことだ…

彼女の激しい性格はもとより、彼女が我々継子をどう扱ってきたかを

知らない者はほぼいない。

サチコが老いさらばえ、安全が確保されたから言うのだ。

それが人心というものである。


何とかして継子を下げなければ、実子が悪く言われてしまう…

焦るサチコの意識は、立ち退き調査を引き金に警察へ向かった。

本当は書類なんか、どうでもいい。

継子の手癖が悪いことを公にすれば、一気に落とせるではないか。

継子を落とすと実子が自動的に上がる…それがサチコの脳内システム。

これが警察沙汰の真相である。


なさぬ仲を知らない人は、これを“継子のひがみ根性”と呼ぶだろう。

私もそれに異存は無い。

無力な子供の頃から、いびつな家庭で理不尽を強いられた者は

苦い体験による学習を積み重ねて人間の心理を知り

冷静かつ理論的に誤解を解く口を持つようになる。

そうならなければ、自分の身を守ることはできないからだ。

かくして今の私ができあがった。

元はひがみ根性だ。



さてさて入院の翌日、正確には一昨日

さっそく病院のサチコから電話がかかってきた。

入院させられた恨み言かと思い

今日も怒鳴っちゃるで〜!と、やる気満々で出たら

前日とは一転、すこぶる上機嫌だ。

「あんた、新聞を止めとってや」

「昨日、止めたよ」

「あら、ほんと!やっぱりあんたは私と違って冴えとるね〜!

はいはい、ありがと」

これで終了。


ちょっと〜、せん妄チックにしてくれないと

私が嘘ついて入院させたみたいじゃんか。

ともあれ、調子はいいらしい。



警察からの電話があって以来、これはもつれるかも…

そう考えて始めた、このハルマゲドンシリーズ。

一度聞いていれば、老人の言動に衝撃を受けたり

むやみに心を痛めることが少ないと思い

僭越ながらお話しさせていただいた次第です。

ムナクソ辛気臭い話に根気強くお付き合いくださいまして

誠にありがとうございました。


重ねて申し上げますが、選挙、行ってくださいね。

あ、サチコ連れて行くの、忘れてたけど。

《完》

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4 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (ちぃやん)
2025-07-20 18:55:32
貴重な経験を教えてくださりありがとうございます
サチコサンのパワーに追いつくものではありませんが、同居の高齢者(実父母)に翻弄される日々を送る身としては、今後の心づもりに大いに役立ちました
(他人からは警察沙汰にもされましたが、それに動揺した親の対応がくたびれましたけど)

過去ログも残していただきたいのが本音ですが、わがままは言いますまい
今後も細くなが〜くでも、みりこんさんと繋がれる場を欠きたくない気持ちが一層強くなるシリーズでした
返信する
Unknown (みりこん〜ちぃやんさんへ)
2025-07-20 21:58:37
役に立ったと言っていただけて、嬉しいです。
ありがとうございます。

ちぃやんさんもご両親のお世話を
されていますものね。
出口の無いトンネルで、一日中体力テスト
しているみたいな毎日…
わかりますよ〜!
老人は変化を嫌うので、良いことでも悪いことでも
ちょっと異変があると大騒ぎしますし
なかなか興奮がおさまらないので、大変ですよね。
一緒に頑張りましょうね。
頑張るのは世話じゃなく、自分の心身を大切にして
こんな状況であっても、できるだけ楽しむのを
頑張るんじゃ。

このブログは息子たちへの遺言代わりにしたいと
思って始めましたが、開始して17年
彼らはすっかりオジさんで、私もまだ生きている…
遺すという目的は、終わりました。

新しい場所では、もうちょっとマシなブログにしたいな
と思っていますが、どうなることやら。
温かい励ましをありがとうございます。
こちらこそ末永く、よろしくお願いいたします。
返信する
Unknown (田舎のおばさん)
2025-07-27 14:44:09
みりんこさんの言い回しが楽しくて、そして少し切なくて。だからみりんこさんのブログがやめられない‼️

「薬を受け取ったのがバレないよう、バッグは大きい物を持って来ている。

子育て中のバッグも大きかったが、老人との対戦も

バッグは大きい方が便利だ。」

これは、勉強させてもらいました。

毎日暑いので、お身体ご自愛ください。 そして、お疲れさまでした(^-^)/。
返信する
Unknown (みりこん〜田舎のおばさんへ)
2025-07-27 21:01:48
楽しくて、そして少し切なくて…
素敵な表現をありがとうございます。

老人を連れ歩くことが増えて以来
バッグは大きい方が便利と知りました。
今回のように、こっそり薬のやり取りだけでなく
老人連れだと飲み物やマスクのスペアなどの他に
病院の領収書や薬歴表、介護関係の書類その他
あんまり折りたたみたくない紙類のやり取りが
けっこうあるので、A4サイズのクリアファイルは
必携。
A4がすっぽりおさまるとなると
バッグはどうしても大きい物になりますね。
気づいていただいて、嬉しいです。

ねぎらいのお言葉、ありがとうございます。
田舎のおばさんも、ご自愛くださいね。
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