殿は今夜もご乱心

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還暦

2017年08月31日 09時07分14秒 | みりこんぐらし
週刊ヒロシにかまける間に8月が終わりそうなことに気がついて

取り急ぎ、夫の還暦のことを書いておきたいと思う。


今月の初め、夫ヒロシは60才の誕生日を迎えた。

還暦という節目である。

数え年なら去年だったけど、うちは満60才方式を取った。

夫の同級生にお坊さんがいて、この年末、彼のお寺に皆が集まり

厄落としの行事を行う予定になっている。

そう、還暦とはめでたいばかりではなく、男女共に大厄なのだ。

この行事が今年なので、夫も今年でないと気分が出ないらしい。


還暦といえば、赤い頭巾にちゃんちゃんこのイメージ。

しかし近年の60才は若い。

そんな物を着込んでニコニコするのは似合わない。

あの赤い装束は白髪や、丸くなり始めた背中で着こなすものであり

いまどきの60才には自虐めいたコスプレでしかない。


「せめて赤いベストか何か‥」

夫には一応申し出てみるが、きっぱりと断られる。

息子たちは誕生日に先立ち

バドミントンのウェアをプレゼントしていたので

私はケーキを買うことにした。


思えば私の祖母は、50年前に60才で死んだ。

元々心臓が丈夫でなかったが、朝起きたら死んでおり

その死因は老衰ということになった。

薄くなった髪を後頭部でお団子にし、地味な着物を着た祖母は

サザエさんの母、フネさんを劣化させたような外見で

どこから見ても正真正銘のおばあちゃん。

その年齢と死因に、誰も不審を抱かなかった。


今であれば、自宅で死亡すると変死扱いで

老衰なんて言われたらサスペンスだ。

現代の60才はそれほど若い。

栄養面やライフスタイルの変化もあるだろうけど

私は人類の進化を感じずにはいられない。



さて誕生日当日は、夫の友人夫婦が祝ってくれた。

町内の店で、一席設けてくれたのだ。

家族や親戚で還暦祝いというのはよく聞くけど

まさか友達から招待を受けるとは思ってもみなかった。


この子たちは、我々夫婦より5才ばかり年下。

ご主人と夫が野球のチームメイトだった縁で、昔から親しい。

その延長で、夫の両親が彼ら夫婦の仲人をしたため

家族ぐるみの付き合い。


「ご夫妻でおいでください」と言われ、狼狽する私。

こういうの、慣れてないのよ。

夫はよそのおネエちゃんと行動することが多かったし

私は単独か、子供たちとセットがパターン。

夫婦だけでイベントに参加なんて、葬式以外にあったかしら。


しかも我々は、筋金入りの冷や飯食い。

ご馳走やお楽しみ方面は夫の両親担当、労働方面は我々担当。

明確な役割分担で、この道37年よ。


夫なんて悲惨よ。

仕事関係の会合では、会議が夫担当で

その後の食事会は義父担当だったもの。

そうよ、同じ会合の途中で父子が入れ替わるのよ。

あからさまにもほどがあるってもんよ。


「食いしん坊め」

私はよく腹を立てたわ。

でも世の中って面白いわね。

義父の会社が好調な頃、その身勝手は「グルメ」と呼ばれてた。

ざけんじゃないわよ。



ともあれ、多分初めての夫婦単位のおよばれに

「生きてて良かった」としみじみ思った。

いい友達を持った夫を見て、自分の我慢が報われたような気がした。


二組の夫婦は久しぶりに語り合い、楽しい時間を過ごした。

この子が還暦の時は、忘れずに盛大な宴会をしてやろうと心に誓う。


9時に帰宅したら、皆が待っていた。

今度は家族で祝うのだ。

下戸人口の多い我が家、お祝いのケーキは外せない。

夫好みのケーキは生チョコ仕立て。

さっそく入刀し、ワイワイ言いながら食した。


その後、寝たら胸ヤケが‥。

さもありなん、酒を飲んだ後にケーキじゃあ

胸も焼けようというもの。

ついぞこの間まで、胃薬のコマーシャルを見て

「胸ヤケって何?どんなもの?」と首をかしげていたが

近頃はわかってきた。

驚異の胃袋を持つ私も、消化に問題が生じる年齢になったのだ。

還暦、近し。
コメント (6)
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