殿は今夜もご乱心

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ウグイス日記・アンチエイジングの巻

2014年11月09日 12時45分17秒 | 選挙うぐいす日記
今回の選挙は市議選。

応援する候補は、4年前に初当選したY君である。


この3年、ウグイスから足を洗ったつもりで

依頼はお断りしていた。

朝から晩までワイワイ言うのが、年齢的にきつくなったのもあるが

夫の両親の病気もあった。

私が最も懸念したのは、活動中の葬式である。

迷惑をかけるし、縁起が悪いではないか。


しかし最近、親は死なないことがわかった。

いずれは死ぬだろうが、今じゃない。

彼らの常套句「死ぬかもしれない」に

だまされた気がする私であった。


そこへちょうど、Y君二期目の選挙が訪れた。

Y君は4年前から頼んでいたと言うが、覚えていない。

それはともかく、私は「やる」とうなづいた。


ウグイスと家事の両立に自信は無い。

しかし偶然とは恐ろしいもので

選挙戦最初の3日間、夫と次男は本社の社員旅行で台湾に行く。

洗濯物の多さと食べる量ではトップ1と2の二名が

日本からいなくなるのだ。

「ハワイかヨーロッパしか行きたくない」

身勝手な理由で旅行を拒否した長男に、ばあちゃんと家事を託し

あとはおでんやシチューで切り抜けることにして

私は若武者のイクサに参戦することにしたのだった。



さて今回はもう一人、プロのウグイスが加わるという。

昨年の市長選で候補が目をつけ、予約したという話だ。

名前も顔も知らないが、とりあえず

一人でやった前回よりは楽そうである。


初の対面は選挙戦初日。

「顔合わせなんか時間の無駄。

誰とでもうまくやるから大丈夫」

という私の意向で、顔合わせは行わなかったからである。


とはいえ当日の朝、私は少し迷った。

荷物の問題である。

私がウグイスを行うにあたり、欠かせないものがある。

手袋と毛布は誰でも知る必需品だが

それに加えて、硬めの座布団2枚とクッションが必要なのだ。


座布団は、座高を上げるためである。

車の後部座席は、身体が沈むように作られている。

常に沈下に反発し、のり上がって手を振っていたのでは

体力の消耗が激しい。

車の窓枠で、30分もしないうちに脇の下がズタズタになってしまう。

クッションは背もたれに使う。

正しい姿勢を保ち、左右どっちを向こうと

食後であろうと疲れようと

常に同じコンディションの発声ができるように

位置を変えながら調整するためだ。

いかに楽をするかをテーマに考案した、私オリジナルの苦肉の策である。


これをプロ様がご存知かどうか。

オリジナルと思っているのは私だけで

プロ様の間では常識かもしれないではないか。

ご存知なければ、2人分持ち込ませていただく。

だがご存知で持参されていれば、失礼な上にただの大荷物。

私の迷いはここにあった。


一応持って行って、必要なければ自分の車に置いておこうと決め

いざ選挙事務所へ赴いた。

事務所の人達と4年ぶりの再会を喜ぶ。

皆さんご存命で、ホッとした私である。


やがてプロ様がお出まし。

とても可愛い人だ。

パッと見、推定年齢30代半ば。

若かりし頃、ウグイスをしていたというステージママのお母様も

送迎係として同伴していた。

高齢者中心の事務所が一気に華やぐ。


すぐに母子の手荷物を見たが、バッグ一つである。

はい、全てわかりました。

ということで、自己紹介をすませると

私は自分の大荷物を選挙カーに持ち込んで

2人分の巣作りをさせていただく。


推定年齢30代半ばのプロ様に、恐れながら…と

巣のご説明をさせていただき、目を丸くして驚く彼女を座らせて

調整させていただく。

「すごく楽ですね!知りませんでした!」

いたくお喜びになられるプロ様。

顔が可愛い上に、とても素直なのだ。

候補が気に入ったのは、この素直であろう。


しかし私はもっと驚いていた。

私も人間稼業は長いので、人の年齢はだいたい当たる。

しかしこの人だけは、全くの見当違いだった。

だって、47才というではないか。

たまげたのなんのって。

若作りというのでなく、本当に若く見えるのだ。

子供っぽいのでもなく、ちゃんとおしゃれなのだ。

歩くアンチエイジングだ。

47才と言われれば、お母様の高齢にも納得できる。


どうしてこんなに若く見えるのか…

これから始まる選挙戦より、そっちの方が大事なくらい

私は考えるのだった。

小柄、細身、色白は、まず王道として欠かせない。

おメメパッチリ、ふっくらした唇、際立つアゴのラインも必需品である。


このお方はそれに加え、髪型のワザがあった。

目まで垂らした前髪と、時代劇のお姫様みたいな横の髪のカットで

顔の大部分を隠蔽しているのだ。

さらに丹念なヘアカラーと徹底的なストレートパーマも

彼女のアンチエイジングを助演している。

最も重要なのは、親の保護が強いお嬢様である点と

謙虚で清らかな性格によるものであろう。


歩くアンチエイジング、ナミ様と私の一週間は

こうして始まったのであった。
コメント (8)
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