水曜10時に放映中のドラマ「家政婦のミタ」が、人気らしい。
松嶋菜々子演じる、感情の無い家政婦ミタさんが
母親の亡くなった家に派遣される。
家族は、ロボットのような家政婦に戸惑いながらも
彼女の言動から様々なことを学んで、絆を取り戻していくドタバタ劇である。
テレビ局は違うが、前に「家政婦は見た」というサスペンスドラマがあった。
市原悦子が下世話な家政婦を演じる人気のシリーズだ。
これは人気で、長く続いた。
回を重ねるにつれて、ラストシーンでは
派遣先の家庭の悪をあばき、啖呵を切って去るという
水戸黄門めいた筋書きに迷走していった感もあったが
彼女の出るドラマは必ず面白いという神話は、広く定着した。
「家政婦のミタ」が、この「家政婦は見た」を
もじったタイトルであることは明白。
この秋のドラマは、私にとって近年まれに見る豊作である。
「DOCTORS 最強の名医」も始まったし「相棒」も復活した。
「科捜研の女」も再開したけど、沢口靖子の芸風が変化していて、いまひとつ。
ただパッチリ目を見開いて、沈黙するシーンが激増し
ずっとびっくり人形を見せられているようだ。
それまで放映していた「京都地検の女」の
名取裕子の熟練が懐かしくなる。
毎日「カーネーション」もあるし
長期連続物の「江」と「イ・サン」もある。
ざっと地デジだけでも、これだけあるのだ。
しかもフィギュアスケートのシーズンに入った。
この程度で充分、我がテレビライフは多忙である。
その中で、中国のテーマパークのような勇気に敬意を表し
「家政婦のミタ」を最優先で見ることにした私だった。
劇中、母親の死は、旦那の浮気が原因の自殺だったことが明らかになる。
浮気旦那に離婚届けを突きつけられたとはいえ
年端のいかない4人の子供を残して、あっさり死ねるかどうか疑問ではあるが
さっさと死んでもらわなければ物語が始まらないので、しかたがない。
母親が死んだ家の子供は、もっとおとなしいと思う。
大人の顔色を見ながら、息をひそめて暮らすものだ。
自分より大人のほうが悲しいのだと言い聞かせながら、悲しみに耐える。
時には感情が溢れてしまうこともあるだろうけど
この家みたいに、始終ギャンギャンとうるさく叫ばない。
興奮したら、もっとつらくなるのを知っているからだ。
だが、躾の行き届いた良い子では
面白さが半減してしまうので、しかたがない。
父親ですら49日の意味を知らないライトな家族でありながら
やたら「長女だから」「長男だから」と古風に自負するのも不自然ではあるが
それでは進行に支障があるので、やはりしかたがない。
視聴者は物語のすべてに、リアルを望んでいるわけではないのだ。
とはいえ、浮気するお父さんの言動は、実にリアル。
「妻は自殺なんです!僕のせいなんです!」
「子供なんて欲しくなかったんです!
子供ができて、結婚してくれないと死ぬと言われて、仕方なく…」
お父さんはしょっちゅう、ミタさんに熱く告白する。
何か重たそうなことを叫べば、同情してもらえると思っている。
このお父さん、相当な甘ったれだ。
しかしこの甘ったれ加減、浮気者の特徴をよく現わしている。
子供が苦手なら、せめて増やさなければいいものを。
朝ご飯はパンより和食がよかったなら、ダメ元で言ってみればいいものを。
環境が不本意なら、せめて改善を試みればいいものを。
その時点では、あらがう気概を持たず、流れに任せておきながら
後で「実は不満でした」と、死者に鞭打つ。
「子供がかわいいかどうか、わからない」と、子供の前で口走る。
信じられないお父さんであろうが
浮気者って、本当にこういうことを普通にする。
何でも自分が中心なので、我に快を与えぬ存在は、そのまま悪となるのだ。
やってることがことなので、彼に快を与えてくれる協賛者の人数は少ない。
だから居場所を無くして孤立する。
振られた浮気相手を待ち伏せし、ストーカー呼ばわりされる。
そこへ浮気相手の新しい彼氏登場。
左遷される前に、部下だった男だ。
母親の死の真相を知った娘が、ミタさんを使って
父親の勤務先に社内不倫を言いふらし、お父さんは左遷されたのだった。
当然のごとく新彼に軽蔑されるが、そんなことよりも
彼女に冷たくされたショックのほうが大きいお父さん。
「こんなみっともないこと、やるわけないじゃん、普通…」
と思う人もいるだろう。
ところが、やるのだ。
何でなのか、自分にもわからないまま、浮気者はやっちゃうのだ。
浮気をすると、感情の目盛りが快と不快の両極二個しか無くなるようだ。
その上、受け入れがたい衝撃があると
浮気者は、より熱心に快の方角を求めてしまう。
そっちの方角が、たとえさらなる不快をもたらすとしても
今の不快目盛りに居たくない気持ちの方が強い。
時には、見境を失える衝撃を待っているように見えることもある。
周囲はそれを“無茶”と呼んで戸惑うが、本人に違和感は無い。
外見が草食系だけに、ギャップが不気味なのはさておき
4人も子供を作っておきながら、外に女をこしらえる
いたずらに旺盛なスタミナ。
いつも現実から逃げ回り、おのれのスケベの言い訳に不平不満を活用。
嘘は得意なのに、変なところでバカ正直。
まさに浮気男の象徴的キャラクターである。
制作者は想像を働かせて、なさけない浮気者の極地を
表現したに過ぎないと思われる。
しかし想像の極地が、実は浮気者のリアルな生態となった意外性が
私には興味深い。
ところで、あの家政婦のもの言いは
夫の姉カンジワ・ルイーゼにそっくりである。
姿も声も違うが、笑わないところと、木で鼻をくくったような受け答えで
会話のキャッチボールが不可能なところだ。
キャップをま深にかぶって、地味なダウンを着ているのは
犬を散歩させる時のルイーゼと同じ。
よその人には珍しかろうが、うちには昔から
家事をやらないミタさんが一人いる。
家族で大いに笑いながら、楽しく見るドラマがあるって
とても幸せなことだと思う。
笑いの意味はちょっと違うけどさ。
松嶋菜々子演じる、感情の無い家政婦ミタさんが
母親の亡くなった家に派遣される。
家族は、ロボットのような家政婦に戸惑いながらも
彼女の言動から様々なことを学んで、絆を取り戻していくドタバタ劇である。
テレビ局は違うが、前に「家政婦は見た」というサスペンスドラマがあった。
市原悦子が下世話な家政婦を演じる人気のシリーズだ。
これは人気で、長く続いた。
回を重ねるにつれて、ラストシーンでは
派遣先の家庭の悪をあばき、啖呵を切って去るという
水戸黄門めいた筋書きに迷走していった感もあったが
彼女の出るドラマは必ず面白いという神話は、広く定着した。
「家政婦のミタ」が、この「家政婦は見た」を
もじったタイトルであることは明白。
この秋のドラマは、私にとって近年まれに見る豊作である。
「DOCTORS 最強の名医」も始まったし「相棒」も復活した。
「科捜研の女」も再開したけど、沢口靖子の芸風が変化していて、いまひとつ。
ただパッチリ目を見開いて、沈黙するシーンが激増し
ずっとびっくり人形を見せられているようだ。
それまで放映していた「京都地検の女」の
名取裕子の熟練が懐かしくなる。
毎日「カーネーション」もあるし
長期連続物の「江」と「イ・サン」もある。
ざっと地デジだけでも、これだけあるのだ。
しかもフィギュアスケートのシーズンに入った。
この程度で充分、我がテレビライフは多忙である。
その中で、中国のテーマパークのような勇気に敬意を表し
「家政婦のミタ」を最優先で見ることにした私だった。
劇中、母親の死は、旦那の浮気が原因の自殺だったことが明らかになる。
浮気旦那に離婚届けを突きつけられたとはいえ
年端のいかない4人の子供を残して、あっさり死ねるかどうか疑問ではあるが
さっさと死んでもらわなければ物語が始まらないので、しかたがない。
母親が死んだ家の子供は、もっとおとなしいと思う。
大人の顔色を見ながら、息をひそめて暮らすものだ。
自分より大人のほうが悲しいのだと言い聞かせながら、悲しみに耐える。
時には感情が溢れてしまうこともあるだろうけど
この家みたいに、始終ギャンギャンとうるさく叫ばない。
興奮したら、もっとつらくなるのを知っているからだ。
だが、躾の行き届いた良い子では
面白さが半減してしまうので、しかたがない。
父親ですら49日の意味を知らないライトな家族でありながら
やたら「長女だから」「長男だから」と古風に自負するのも不自然ではあるが
それでは進行に支障があるので、やはりしかたがない。
視聴者は物語のすべてに、リアルを望んでいるわけではないのだ。
とはいえ、浮気するお父さんの言動は、実にリアル。
「妻は自殺なんです!僕のせいなんです!」
「子供なんて欲しくなかったんです!
子供ができて、結婚してくれないと死ぬと言われて、仕方なく…」
お父さんはしょっちゅう、ミタさんに熱く告白する。
何か重たそうなことを叫べば、同情してもらえると思っている。
このお父さん、相当な甘ったれだ。
しかしこの甘ったれ加減、浮気者の特徴をよく現わしている。
子供が苦手なら、せめて増やさなければいいものを。
朝ご飯はパンより和食がよかったなら、ダメ元で言ってみればいいものを。
環境が不本意なら、せめて改善を試みればいいものを。
その時点では、あらがう気概を持たず、流れに任せておきながら
後で「実は不満でした」と、死者に鞭打つ。
「子供がかわいいかどうか、わからない」と、子供の前で口走る。
信じられないお父さんであろうが
浮気者って、本当にこういうことを普通にする。
何でも自分が中心なので、我に快を与えぬ存在は、そのまま悪となるのだ。
やってることがことなので、彼に快を与えてくれる協賛者の人数は少ない。
だから居場所を無くして孤立する。
振られた浮気相手を待ち伏せし、ストーカー呼ばわりされる。
そこへ浮気相手の新しい彼氏登場。
左遷される前に、部下だった男だ。
母親の死の真相を知った娘が、ミタさんを使って
父親の勤務先に社内不倫を言いふらし、お父さんは左遷されたのだった。
当然のごとく新彼に軽蔑されるが、そんなことよりも
彼女に冷たくされたショックのほうが大きいお父さん。
「こんなみっともないこと、やるわけないじゃん、普通…」
と思う人もいるだろう。
ところが、やるのだ。
何でなのか、自分にもわからないまま、浮気者はやっちゃうのだ。
浮気をすると、感情の目盛りが快と不快の両極二個しか無くなるようだ。
その上、受け入れがたい衝撃があると
浮気者は、より熱心に快の方角を求めてしまう。
そっちの方角が、たとえさらなる不快をもたらすとしても
今の不快目盛りに居たくない気持ちの方が強い。
時には、見境を失える衝撃を待っているように見えることもある。
周囲はそれを“無茶”と呼んで戸惑うが、本人に違和感は無い。
外見が草食系だけに、ギャップが不気味なのはさておき
4人も子供を作っておきながら、外に女をこしらえる
いたずらに旺盛なスタミナ。
いつも現実から逃げ回り、おのれのスケベの言い訳に不平不満を活用。
嘘は得意なのに、変なところでバカ正直。
まさに浮気男の象徴的キャラクターである。
制作者は想像を働かせて、なさけない浮気者の極地を
表現したに過ぎないと思われる。
しかし想像の極地が、実は浮気者のリアルな生態となった意外性が
私には興味深い。
ところで、あの家政婦のもの言いは
夫の姉カンジワ・ルイーゼにそっくりである。
姿も声も違うが、笑わないところと、木で鼻をくくったような受け答えで
会話のキャッチボールが不可能なところだ。
キャップをま深にかぶって、地味なダウンを着ているのは
犬を散歩させる時のルイーゼと同じ。
よその人には珍しかろうが、うちには昔から
家事をやらないミタさんが一人いる。
家族で大いに笑いながら、楽しく見るドラマがあるって
とても幸せなことだと思う。
笑いの意味はちょっと違うけどさ。