先日、知人の家で、久しぶりに釣書(つりがき)を見た。
ご存知だろうが、釣書は生年月日、出身校、親兄妹、趣味などの
プロフィールを書いた便箋と、写真がセットになっていて
結婚相手を探すエントリー用紙みたいなものだ。
結婚相手を釣る書面なので、釣書というのか
釣り合わぬは不縁の始まり…とも言うから
あらかじめ情報公開して、釣り合いを取るためなのかは知らないけど
私の田舎じゃ、12~3年くらい前までは、たまに見かけることがあった。
いまどきは、異性と知り合う方法も合コンが主流だし
他人の結婚の世話をしてやろうという、もの好き人口も減った。
一定の年齢になったら、何が何でも結婚するという風潮も無くなった。
不特定多数の人間に個人情報をさらしてまで、結婚相手を求める意識が薄れ
あんまり出回らなくなったのだと思う。
まだあったのだ…と思うと、ビックリマンシールやミニ四駆を見たような
ちょっと懐かしい気持ちになった。
その釣書は、30代後半の女性のもの。
以前から、写真館で撮影した正装は年々減り
スナップ写真が多くなっていたが、この写真も観光地で写したスナップだ。
勤め先が統合になってウンヌン。
親を残して転勤はしたくないからウンヌン。
だからこの際、結婚…ということらしい。
こういう場合、地味は清楚、肥満は健康的ということになる。
言葉どおりのかたがたは、私のようなシモジモの目に触れるまでもなく
どこか上品な所で、物慣れた人の手によって、どうにかなってるはずだ。
「急ぎなので、いい人がいたらお願いします」と言うけど
いい人って、この女性を好きになって、幸せにしてくれて
一緒に親の面倒を見てくれる人のことよね。
そんな奇特な人、知らないわよ。
見るだけ見ておいて、まったく役に立たない卑怯でふがいない私であった。
さて釣書といえば、過去に印象深い写真があった。
あれは十何年前だったか、やはり世話好きの知人の家で見たものだ。
26才の女の子を呼んで、見せている所へたまたま行き合わせた。
女の子も顔見知りだったので「どう思う?」と聞かれた。
「29才。ジャニーズの人みたいでしょ?」
男性のスナップ写真を見せながら、世話好きは言う。
「顔は好み…」
と女の子も言った。
でも、なんで鳥居の下で体育座りしてんの?
お稲荷さんによくある、小さい赤い鳥居よ。
鳥居は無いんじゃないの?鳥居は。
「この人、もしかして、小さいんと違う?」
「え~?そう~?」
世話好きは釣書をめくったけど、そこに身長体重は書いていなかった。
「小さいよ…Gパンのすそを見てごらんよ。
ジャニーズJr.じゃん。
あなたの肩ぐらいまでしか無いよ」
大柄な彼女と写真を交互に見ながら
スネの中間あたりまで上がったまつり縫いの影を、私は意地悪く指摘する。
Gパンは、お母さんが買って来て、スソ上げしたんじゃなかろうか。
Gパンの中心には、ご丁寧にアイロンでラインが入っている。
もちろん、肝心なのは人柄であって、身長なんてどうでもいい。
だけど小細工すると、かえって損よね。
はぁ~ん、そういう人なんだ…って、思われてもしかたがないじゃん。
きっとお母さんには、鳥居は大きいものという頭があったのよ…
小ぶりな鳥居を見つけたから、そこに座らせれば
息子が大きく見えると思ったんじゃないかしら…
マザコン以前に、この程度の写真でごまかせると思い込んでる
浮世とのズレが危険だわ…
そんなおうちにお嫁に行くと大変よ…
などとまくし立てたので、女の子は会うのをやめ
世話好きは、もっと小柄な女の子を探してみると言った。
まだ若かった私は、それが正義だと思っていた。
腐り果てた今なら、勧めもせず止めもせず
できれば会って欲しいとひそかに願い、後日談を楽しみにするだろう。
結果がどうであれ、その思い出は後になって
彼と彼女の青春を彩ったのではなかろうか。
若者2名の希望を潰したことに変わりは無いので、一応悪かったと思った。
でも彼女、ほどなく別の人の世話でお見合いをし
できちゃった結婚をしてくれたので、ホッとした。
鳥居マンのほうは、知らない。
ご存知だろうが、釣書は生年月日、出身校、親兄妹、趣味などの
プロフィールを書いた便箋と、写真がセットになっていて
結婚相手を探すエントリー用紙みたいなものだ。
結婚相手を釣る書面なので、釣書というのか
釣り合わぬは不縁の始まり…とも言うから
あらかじめ情報公開して、釣り合いを取るためなのかは知らないけど
私の田舎じゃ、12~3年くらい前までは、たまに見かけることがあった。
いまどきは、異性と知り合う方法も合コンが主流だし
他人の結婚の世話をしてやろうという、もの好き人口も減った。
一定の年齢になったら、何が何でも結婚するという風潮も無くなった。
不特定多数の人間に個人情報をさらしてまで、結婚相手を求める意識が薄れ
あんまり出回らなくなったのだと思う。
まだあったのだ…と思うと、ビックリマンシールやミニ四駆を見たような
ちょっと懐かしい気持ちになった。
その釣書は、30代後半の女性のもの。
以前から、写真館で撮影した正装は年々減り
スナップ写真が多くなっていたが、この写真も観光地で写したスナップだ。
勤め先が統合になってウンヌン。
親を残して転勤はしたくないからウンヌン。
だからこの際、結婚…ということらしい。
こういう場合、地味は清楚、肥満は健康的ということになる。
言葉どおりのかたがたは、私のようなシモジモの目に触れるまでもなく
どこか上品な所で、物慣れた人の手によって、どうにかなってるはずだ。
「急ぎなので、いい人がいたらお願いします」と言うけど
いい人って、この女性を好きになって、幸せにしてくれて
一緒に親の面倒を見てくれる人のことよね。
そんな奇特な人、知らないわよ。
見るだけ見ておいて、まったく役に立たない卑怯でふがいない私であった。
さて釣書といえば、過去に印象深い写真があった。
あれは十何年前だったか、やはり世話好きの知人の家で見たものだ。
26才の女の子を呼んで、見せている所へたまたま行き合わせた。
女の子も顔見知りだったので「どう思う?」と聞かれた。
「29才。ジャニーズの人みたいでしょ?」
男性のスナップ写真を見せながら、世話好きは言う。
「顔は好み…」
と女の子も言った。
でも、なんで鳥居の下で体育座りしてんの?
お稲荷さんによくある、小さい赤い鳥居よ。
鳥居は無いんじゃないの?鳥居は。
「この人、もしかして、小さいんと違う?」
「え~?そう~?」
世話好きは釣書をめくったけど、そこに身長体重は書いていなかった。
「小さいよ…Gパンのすそを見てごらんよ。
ジャニーズJr.じゃん。
あなたの肩ぐらいまでしか無いよ」
大柄な彼女と写真を交互に見ながら
スネの中間あたりまで上がったまつり縫いの影を、私は意地悪く指摘する。
Gパンは、お母さんが買って来て、スソ上げしたんじゃなかろうか。
Gパンの中心には、ご丁寧にアイロンでラインが入っている。
もちろん、肝心なのは人柄であって、身長なんてどうでもいい。
だけど小細工すると、かえって損よね。
はぁ~ん、そういう人なんだ…って、思われてもしかたがないじゃん。
きっとお母さんには、鳥居は大きいものという頭があったのよ…
小ぶりな鳥居を見つけたから、そこに座らせれば
息子が大きく見えると思ったんじゃないかしら…
マザコン以前に、この程度の写真でごまかせると思い込んでる
浮世とのズレが危険だわ…
そんなおうちにお嫁に行くと大変よ…
などとまくし立てたので、女の子は会うのをやめ
世話好きは、もっと小柄な女の子を探してみると言った。
まだ若かった私は、それが正義だと思っていた。
腐り果てた今なら、勧めもせず止めもせず
できれば会って欲しいとひそかに願い、後日談を楽しみにするだろう。
結果がどうであれ、その思い出は後になって
彼と彼女の青春を彩ったのではなかろうか。
若者2名の希望を潰したことに変わりは無いので、一応悪かったと思った。
でも彼女、ほどなく別の人の世話でお見合いをし
できちゃった結婚をしてくれたので、ホッとした。
鳥居マンのほうは、知らない。