殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

甲子園

2011年03月25日 09時15分19秒 | みりこんぐらし
春の選抜高校野球が始まった。

選手宣誓は、すばらしかった。

どこかの国の総理にも、見習ってほしいくらい立派であった。

あれは本人の純粋で真摯な気持ちに、神が宿ったのでは…とすら思う。

チームは1回戦で敗退したが、日本中を勇気づけた彼の偉業は

長く人々の心に残るであろう。


思えば高校野球と私は、吹奏楽でつながっていた。

高校生の時は、ブラスバンドの一員として、応援に出かけたものだ。

弱小チームだったので、勝つのを見たことはなかった。


弱小なので、やはりメンバーもそれなり。

行って応援したからといって、別段ありがたがられることもない。

昔の田舎は、野球をやってさえいれば大人に信用され

立派と思い込まれて優遇される風潮だったので

野球部員は普段から横柄であった。


こっちも応援するというより、皆で楽器を吹きに行っていた。

バスを仕立ててどこかに出かけ、演奏する…それがただ嬉しいばっかりで

勝敗どころか、暑いも寒いも気にならなかった。


当たり前だが、こっちが年を取るにつれ

高校球児はどんどん年下になっていく。

今じゃ我が子より年下だ。

そのうち孫と同世代の子が活躍するようになるのだろう。


未曾有の大災害をおして開催が決定し

感動の選手宣誓で幕が開いた今年の春の選抜。

今回は出場校の中に、私の同級生の息子がいる。

我々ブラスバンドが、ブースカドンドンと応援していた

あの野球部男子の息子である。

強豪校の居並ぶ都会なら、珍しくないのかもしれないが

知り合いの子供が出場するなんて、田舎じゃ10年に1回あるか無いかだ。

めでたいことである。


私には、さらにもうひとつ嬉しいことがある。

夫の不倫相手だった女性の息子も出場しているのだ。

夫が耳の手術をした時、病院で鉢合わせした看護師の息子である。

義母ヨシコに抗議され、逆ギレした亭主と一緒に

うちへ乗り込んできた思い出がある。


町は今、その子の話題で持ちきりだ。

当時、幼稚園児だった彼をチラッと一回見たことがあったが

あれから十数年を経て、こんなに大きくなっていたのだ。

どんな関係であれ、縁ある子供が出場するのは嬉しいものである。


夫にあられもない裸の写真を贈ったインランなお母様も

「誠意を見せんかい」とユスりなすったお父様も

電話でヨシコと大喧嘩したお祖母様も、さぞ喜んでおられることであろう。

とことんまで争って、あちらの家庭をモメさせる事態にならなかったのを安堵する。


野球は、お金と家族の協力が不可欠なスポーツだ。

できれば平和な家庭環境が望ましい。

真実を何もかも白日のもとにさらすだけが、正しいわけではないのだ。

何も知らずにすくすくと成長した彼は、こうして郷土の星となってくれた。

感無量である。

なにやら私まで協力したような気がするから、厚かましいではないか。


ヨシコは、我が夫ヒロシのいる所で、イヤミっぽく言う。

「母親の尻癖が悪くても、子供はマトモに育つのねっ!」

当時の怒りが再燃するようだ。

自分のお気に入りの病院の、お気に入りの看護師であり

何も知らずに彼女の実家で売る年賀ハガキや宝くじを買っていたため

裏切られた気持ちは大きかった。


それを聞く夫はどんな気分か知らないが

複雑なことは脳が受け付けない男なので、そ知らぬ態度を貫いている。

私のような者の応援は迷惑かもしれないが

試合の日はぜひ、テレビの前で声援を送りたいと思う。
コメント (34)
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