殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

偵察うぐいす

2011年02月22日 23時13分48秒 | 選挙うぐいす日記
対立する現職候補の事務所開きが、こちらより半月遅れで行われた。

その日、我が陣営を引っかき回す消耗夫人は休みであった。

彼女の子分は2人出てきており、偵察に行くと言う。


裏で炊き出しをしていた私は、ちょうど手が空いて、その場に居合わせた。

    「行ってらっしゃい!しっかりミヤゲを持って帰ってね」

「は?お菓子、買って来たらいいですか?」

    「アハハ!座布団1枚!

     行くからには、どこの誰が来てるか

     よく見ておいでってことよ」

「え~?そんなのわかりませんよ。

 私達、ここの生まれじゃないし、誰が誰だか…」

    「じゃあ何しに行くのよ」

「偵察…」

    「そりゃ偵察じゃなくて、見物(けんぶつ)じゃん」

事務所にいる一同は、どっと笑う。


「みりこんさん、一緒に来てもらえませんか?」

ということで、私も付いて行くことになった。

事務所の向いに車を停め、様子をうかがう。

現職らしく、早くから賑やかな人だかりができている。

私の知り合いもいて、受付けをしている。

あ!あいつ、こっちだったのか!と、ひそかに思う。

ま、お互い様だけどね。


「スパイになったみたい!ドキドキするぅ!」

「私、手が震えてきた」

2人の子分は、車の中で大興奮。


駐車場の誘導係とおぼしき若者が、揃いのジャンパーを着込んで

道の両側に10人ほど立っている。

私は車から降りて、その1人に「事務所開きですか?」と話しかけてみる。

「あ…はい…」と仏頂面で答えた後は、無言。

何を言っていいかわからず、戸惑っているのだ。

もう一人にも同じことを言ってみるが、やはり同じ反応。

こういう時は、私のようなオバンだろうと、通りすがりのよそ者だろうと

フリでもいいからちゃんと受け答えをして、好感度を上げなければねえ。

誰が見てるかわからないんだから。


各自、真っ昼間から大げさに誘導灯を握りしめてはいるものの

車の誘導はしていない。

やりようが無い…立ち位置が見当違いだからだ。

何もわかっちゃいないまま、事務所の前に、ただ立たされているのだ。

立たされたまま、何か特別なことをしているような錯覚の使命感で

コワモテを気取っている。

事前の打ち合わせ…つまり教育は、行き届いてないようだ。


ただの寄せ集めかどうかは、末端を見るのが手っ取り早い。

人材に余裕はなさそうなので、ホッとする。

こっちの偵察隊と、いい勝負である。


外で候補のお出ましを待つ人々の中に、我が夫を発見。

今、神経痛で動けない義父アツシの代わりに行っているのだ。

アツシはこっちを応援している。

    「ちょっと行ってくるわ」

「み、みりこんさん、そんな危険な…」

    「どこが危険よ。参加は自由よ」

夫のそばに行き、回りの人としゃべって、車に戻る。


2人は「すごいスリルだった…」と感動している。

絶対、何か勘違いしていると思う。

こんな物知らずの身の上で、選挙を手伝ってるつもりになれる

その度胸のほうが、すごいスリルじゃ。

物知らずだからこそ、誤解されたら面倒なので

自分の旦那がいたとは言わない。


緊張して喉がカラカラ…と言う2人と、帰りにコンビニへ寄った。

子分1号は、財布を持たずに来た私に

「みりこんさん、何飲まれますか?」と聞き

抹茶ラテを買ってくれる。

子分2号は「すいません、私も財布を持たずに来たので、せめてサービスを…」

と言いながら、抹茶ラテを開封して渡してくれる。

なかなか可愛いところがあるじゃないか。


吊り橋効果(一緒に危険な目に遭うと、相手を好きになる心理)ではないが

以来2人は、すっかりなついてしまった。

抹茶ラテを買ってくれたから、というのもあるけど

バラけたら、おとなしくていい子達だ。

くっつく相手を間違えて、損をしているだけ。

かといって、こっちにくっつかれても困る。

群れるのは嫌いじゃ。

消耗夫人に返品したい。
     
コメント (36)
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