殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

うぐいす準備

2011年02月19日 21時19分22秒 | 選挙うぐいす日記
私はこの頃、ちょくちょく出かける。

4月にある選挙の準備で、後援会の事務所に通っているのだ。


この陣営とは、初出馬からのつきあいなので

要望があれば裏方のほうにも関わってきた。

が、そろそろおとなしくしないと若手が育たないと思い

選挙が始まるまでは行かないつもりだった。

しかしこの4年の間に、参謀だった人が亡くなり

めぼしい後任のいないまま、活動が始まった。

ブレーキ役がいないので、若手どころか、年取った変なのだけが増殖中だそう。


中でも夫婦でうるさいのがおり、写真が気に入らないだの

ハガキがおかしいだの、陣営にやる気が感じられないだの

何につけ、候補や周囲の者に食ってかかるのだという。

興奮して号泣する者もいて、ひと騒ぎもふた騒ぎもあったというではないか。

なんでその時、呼んでくれなかったのだ…選挙まで来ないつもりでいたのも忘れ

見せ物を見逃した惜しさでいっぱいになる。


この消耗夫婦、私と同年代で、子供が同級生なので顔見知り。

昔から不思議ちゃんで、前回、前々回の選挙の時も

よくもめ事の原因になっていた。

年月を経るにつれ、さらに磨きがかかってきたみたい。


特に彼らが声を大にして主張するのが

みりこん隊長率いる、うぐいす部隊の解散である。

今回、市会から県会へ鞍替えするにあたり

うぐいすはプロを雇うべきだと言う。

候補に言って即座に却下されたので、今度は別の人に訴えて回る日々。

言われた者は、うなづけば一味にされ、首を振ればもっと執拗に絡まれるので

どう対応していいかわからず、困り果てているという。


コモノってのは、やたらと変革を叫ぶもの。

苦手な人間を排除して、小さな自分が居心地良くすごせる土壌を

一から作りたがる。


実は私も、半年前に依頼があった時、鞍替えを機に

プロに切り替えたほうがいいのではないかと、候補に進言した。

しかし、慣れた人で戦いたいというのが、本人のたっての希望であった。

私がしゃしゃり出ているばっかりに、人様が困っているとなれば

知らん顔はできまい。

「とにかく1回、現状を見てほしい」ということなので、陣中見舞いに出かけた。


4年ぶりの再会を懐かしんでいると、消耗夫婦も近寄って話しかけてくる。

国会議員の誰それをこっちに向かせたのは我々…

この団体に話をつけたのは我々…

こんなにあれこれしてやっているのに、誰も評価してくれない…

候補夫妻は、もう口もきいてくれないし、目も合わせてくれない…

結局、浮いちゃって淋しいのよね。


実のところ、その議員や団体を引っ張ったこと自体、陣営は大迷惑なのであった。

選挙区外の者に頼んだって、気を使うばっかりで実入りは少ない。

しかし見当違いとはいえ、その努力は認めてやろうではないか。

「すごい!あなたがたでないと、そんなことは思いつかないわ!」

などと賞賛してやると、激しく喜ぶ。

嘘ではねぇずら…こいつらでないと、こんな無駄なことは思いつかない。


うぐいす総替えの話がなかなか出ないので、こちらから言ってみる。

    「総選挙でしょう…県内のめぼしいプロは出払うから、私で我慢してね。

     もちろん、そういう事情は、おわかりになってるでしょうけど」

「そんなこと…もちろん知ってる…プロは不足するもんね!」

しょせん根拠無き変革…面と向かっては言えないわよね。

“今回は引いてください”なんて言われるのを楽しみにしていたのに、残念。


消耗夫婦のご子息は仕事で煮詰まり、精神的に深刻な状況で休職中だと

涙ながらに語る。

もちろん、会社が悪いと言うのはお決まり。

前の選挙の時は、息子の大学自慢をしまくっていたが

4年という時の流れをしみじみ感じる。

強気な勘違いは、このあたりから発生しているようだ。


よそで人を消耗させるから、一番可愛い者に返ってくる…

それは道理ではあるが、実際には、親が困ったちゃんだと

子供は周囲に気を使う優しい性質に育つことが多く、彼らの息子も例外ではない。

優しい子が新人として働くには、厳しい環境だったのだろう。

そういう出会いの縁が生じるだけで

親が悪いわけでも、子が弱いわけでもないのだ。


女房のほうは、子供の不登校で悩む親のサークルを主宰しており

同じ悩みと同じ雰囲気を持つ、数人の取り巻きも

朝から晩まで金魚のフンのようにくっついている。

夫婦と一緒に泣いたりわめいたりした女どもだ。


皆で熱心にぬり絵をしているので、殺風景な事務所を

飾ってくれるのかと思ったら、サークルで使うイラストであった。

取り巻きの一人が自前のパソコンを持ち込み、熱心にキーを叩いているので

支援者の住所録でも作成中かと思っていたら、サークルの会報を作成中であった。


つまるところ、連日仲良しグループが集まり

事務所で、昼食とお茶つきの会合を開いているのだ。

選挙より、自分の子供を見てやれよ…と思うが、余計なお世話であろう。

こいつらが原因で、不登校ならぬ不登所になった支援者もいるというのに

おめでたいことである。


というわけで、心美しい人ばかりでは、何かと大変なのはわかったので

腐りきった私も、時々顔を出すことにした。

消耗軍団ににらみをきかせて、心美しい人を助けるためではない。

見るのが面白いからだ。

陰でヒソヒソ言いながら、誰かがどうにかしてくれて

胸がすく瞬間を待ち焦がれる、建て前の善より

いっそ無邪気な悪のほうが、私にとっては好ましいから困ったものである。
コメント (26)
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