「お気に入りの場所…逆モヒカン」
最近あんたの亭主はどうなっているんだ…とお思いのかたもおられよう。
夫の頭は、今大変なことになっている。
え?頭は下半身と共に、元々大変だろうって?
いや、髪の毛ね。
夫は会社で求人の必要が生じ、以前勤めていた子のところへ会いに行った。
その彼、太一君は、自分の頭をバリカンで刈ろうと準備したところであった。
夫は、ついやってもらいたくなったそうだ。
こんな時に、こんな衝動にかられる人は、少ないと思う。
それが夫なのだ。
つまらぬことほど、言い出したらきかない。
太一君は、おっとりした優しい子。
夫の性質もわかっているので、こころよく始めてくれたと思う。
しかし、ジャーと刈り始めた時、バリカンが突然故障した。
頭の中心を、後頭部から頭頂部にかけて刈り込んだところであった。
太一君は、壊れたバリカンをハサミに持ち替え、頑張ってくれたようだが
慣れているとはいえ、しょせんしろうと…結果は無残であった。
夫は、トラ刈りの逆モヒカン・前髪少々・カッパもどき
という斬新なヘアスタイルで、さりげなく帰宅。
こういう時、妙に落ち着いているのも、夫なのだ。
「ひんえ~!」
私はムンクの叫び。
ちなみに会社復帰の話は「お姉さんがいるからイヤ」と断られた。
辞めた原因も、それであった。
お姉さんとは、夫の姉カンジワ・ルイーゼのことである。
若い頃の夫は、某軍団の、昨年禁煙に成功した人によく似ていた。
よく、間違えてサインを求められたり、写真を撮られたものだ。
結婚前の若かりし私は、そのおかたのファンだったので
道を間違えた。
元々バカという不治のヤマイの上、面食いの菌に冒されていたのだ。
あのそっくりさんが、名刺をちらつかせて青年実業家のフリをすれば
妻子があろうが何だろうが、バカな女はコロリとだまされ
貧しく生い立った女ほど、“実業”の実情がわからないので
ありもしない玉の輿を夢見て、略奪に燃える。
タチ、悪し。
しか~し!
その面影は、もはや完全に消え失せた。
切れ長だった目は、40代の半ば
シワの奇跡によって、突然大きなパッチリ二重となる。
太って、顔にもたっぷりと肉がつき
顔の色も黒ずんで、まったくの別人となり果てた。
今では、悪者一味の手先となり下がった桃太郎侍…
または、肥満で使い物にならないゴルゴ13…
そして悪く言えば、ただ顔の濃いデブ。
生々しい暮らしを続けると、自然な“枯れ”に失敗するようだ。
夫はこの数日、ニット帽をかぶって過ごしている。
頭を隠してしまうと、くどい顔が強調されて、とっても不気味。
隠すぐらいならさっさと直せばいいものを、かたくなに拒否する。
いつも月に2~3回のペースで理髪店に行く夫だが
気軽によく行くからこそ、こうなってしまったら、かえって行けない。
こんな頭じゃデートもできまいに…と、一応心配してやるが
それよりも、短い部分に合わせて丸刈りになるほうが恐いらしい。
まったく、おじんというのは厄介だ。
そこで、早く伸びるようにと、ワカメを与える。
頑張って食べる夫。
ただの気休めでも、ヘルシーなのは確かである。
最近あんたの亭主はどうなっているんだ…とお思いのかたもおられよう。
夫の頭は、今大変なことになっている。
え?頭は下半身と共に、元々大変だろうって?
いや、髪の毛ね。
夫は会社で求人の必要が生じ、以前勤めていた子のところへ会いに行った。
その彼、太一君は、自分の頭をバリカンで刈ろうと準備したところであった。
夫は、ついやってもらいたくなったそうだ。
こんな時に、こんな衝動にかられる人は、少ないと思う。
それが夫なのだ。
つまらぬことほど、言い出したらきかない。
太一君は、おっとりした優しい子。
夫の性質もわかっているので、こころよく始めてくれたと思う。
しかし、ジャーと刈り始めた時、バリカンが突然故障した。
頭の中心を、後頭部から頭頂部にかけて刈り込んだところであった。
太一君は、壊れたバリカンをハサミに持ち替え、頑張ってくれたようだが
慣れているとはいえ、しょせんしろうと…結果は無残であった。
夫は、トラ刈りの逆モヒカン・前髪少々・カッパもどき
という斬新なヘアスタイルで、さりげなく帰宅。
こういう時、妙に落ち着いているのも、夫なのだ。
「ひんえ~!」
私はムンクの叫び。
ちなみに会社復帰の話は「お姉さんがいるからイヤ」と断られた。
辞めた原因も、それであった。
お姉さんとは、夫の姉カンジワ・ルイーゼのことである。
若い頃の夫は、某軍団の、昨年禁煙に成功した人によく似ていた。
よく、間違えてサインを求められたり、写真を撮られたものだ。
結婚前の若かりし私は、そのおかたのファンだったので
道を間違えた。
元々バカという不治のヤマイの上、面食いの菌に冒されていたのだ。
あのそっくりさんが、名刺をちらつかせて青年実業家のフリをすれば
妻子があろうが何だろうが、バカな女はコロリとだまされ
貧しく生い立った女ほど、“実業”の実情がわからないので
ありもしない玉の輿を夢見て、略奪に燃える。
タチ、悪し。
しか~し!
その面影は、もはや完全に消え失せた。
切れ長だった目は、40代の半ば
シワの奇跡によって、突然大きなパッチリ二重となる。
太って、顔にもたっぷりと肉がつき
顔の色も黒ずんで、まったくの別人となり果てた。
今では、悪者一味の手先となり下がった桃太郎侍…
または、肥満で使い物にならないゴルゴ13…
そして悪く言えば、ただ顔の濃いデブ。
生々しい暮らしを続けると、自然な“枯れ”に失敗するようだ。
夫はこの数日、ニット帽をかぶって過ごしている。
頭を隠してしまうと、くどい顔が強調されて、とっても不気味。
隠すぐらいならさっさと直せばいいものを、かたくなに拒否する。
いつも月に2~3回のペースで理髪店に行く夫だが
気軽によく行くからこそ、こうなってしまったら、かえって行けない。
こんな頭じゃデートもできまいに…と、一応心配してやるが
それよりも、短い部分に合わせて丸刈りになるほうが恐いらしい。
まったく、おじんというのは厄介だ。
そこで、早く伸びるようにと、ワカメを与える。
頑張って食べる夫。
ただの気休めでも、ヘルシーなのは確かである。