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殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

接待うぐいす

2010年11月20日 12時02分55秒 | 選挙うぐいす日記
ユルい陣営も、極秘計画・チェリープランが功を奏したのか

熱と活気を帯びてきた。

午後、選挙カーの出発を見送った後に

こぞって出かける気ぜわしさが、緊張感を生む。

まったりと午後ティーなど楽しむ暇は無いのじゃ。


この陣営は皆、人柄がいい。

いい年寄りの顔の広さは、あなどれない。

日頃は閑静な住宅街で余生を送る人々も、いったん出かけて刺激を受けたら

帰りにどこそこへ票を頼みに寄ってみようか…という気も起きる。

買物に来た知り合いと偶然出会い、なぜここに立っているかを説明するうち

気負わずに投票を頼むこともある。

実際に、彼らは目の前で何度もそれをやった。

これこそが、チェリープランの最終目的なのだ。


演説を終えた候補には

「今の、迫力があって、良かったですよ!

 特に3つの約束のところ…私ら主婦にもわかりやすかったわ」

などと言う。

こうしてやると、話がぐんぐん良くなるし、疲れも少ないのだ。


さて2日目の午後から、町内会長兼、後援会長のじいさまが

「後部座席にうぐいす一人では淋しい」と言い出し

事務所でたむろするじいさま達を、順番に選挙カーに乗せ始めた。

人材不足を逆手に取って開き直り

“コンパクトで効率のいい選挙”を目指す候補と私は

選挙カーの後ろにもう1台、車をつけようという後援会長の提案を

却下したばかりだった。

少しは、立ててやらないといけない。


午前と午後、交代で一人ずつじいさまが送り込まれるが

なにせ平均年齢70いくつ…

車に揺られるだけで、くたびれるお年ごろである。

居眠りをする者、おざなりに手だけ窓から出して寒がる者

耳が遠くて大声でしゃべるので、マイクが声を拾ってしまうこともある。

何べん注意しても、すぐ忘れる。


「お茶、お茶」「飴、飴」

あんたがノド飴ほしがってどうするんじゃい!

「フタが開かん…」「袋が破れん…」

手袋をしたままでは、すべって無理というものだ。

しかも前立腺の問題か、トイレ近し。


女はツブシがきくが、男の年取って何もできないのは、使いようが無い。

票も集められず、営業電話もできず、買物掃除の雑用もだめ。

事務所にいてもやらせることの無い、ある意味選ばれたじいさま達なのだ。

車に乗せたからといって、急に役に立つわけがない。


候補は毎日2時間ほど、単独活動のために選挙カーを離れる。

その時は、お手振りじいさまが2人になり

運転手と合わせて、じいさまは計3人となる。


この陣営の恐怖は、ユルさに加え、選挙カーの運転手にもあった。

高齢かつ不慣れな人ばかりで、午前、午後、夕方、夜の4回

日替わりどころか、時替わりで交代する。

もちろん急発進、急ブレーキは常識、段差も輪差もお構いなし。

毎日が、実にスリリング。


コースを覚えるどころの騒ぎではない。

交差点や分かれ道のたびに、いちいち右だ左だと道案内がいる。

慣れてないと、ついスピードが出てしまうので、速度のコントロールも必要。


候補が乗っている時は、助手席で彼がそれをやる。

忙しそうで気の毒ではあるが

そんな運転手しか調達できなかった自業自得である。


しかし候補がいない間は、それを私がやる羽目となる。

デンジャラスな選挙カーを私に託し、すまながる候補に

     「悔いのないように、思うことを思いっきりやりなさい。

      後は任せて!」

なんて大見得をきった手前

「もう嫌です」とは、口が裂けても言えやしない。


しゃべりながらのおモリもせわしいが

道行く人も車をのぞき込んで、失望をあらわにする。

そりゃそうだろうよ…うぐいすはババアで、あとはジジイだらけ…

選挙カーというより、高齢者の占拠カーだ。


じいさま達は、選挙カーで市内観光という

珍しい体験をした興奮と達成感で、ご満悦である。

それでいい…それでいいのさ。

投票してくれる保障の無い通行人に媚びるより

じいさま達の票のほうが、断然堅い。

接待だと思って、耐えるしかない。


そんな中、次第に頑張り始める精鋭もちらほら育ってくる。

    「さっき、手を振ってくれた人を、よく見つけてくれましたね!」

    「キビキビして、かっこいいですよ!」

    「この道、しろうとは知らないはずですよ!さすがですね!」

などとほめると、子供のような笑顔になり

さらに張り切るのが、けなげでいじらしい。


すべては次の選挙のためである。

この仕事を引き受けた瞬間から、私はすでに勝つ気でいる。

勝つんだから、4年後を見据えた動きをする。

ただし4年後、このうちの何人が生存しているかは、定かではない。
コメント (69)
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