めぐろのめばる

目黒川近辺で日本の四季を楽しみ、未来の日本を憂う。
かつての美しい日本と日本人がいかに素晴らしかったかを思う。

中目黒の桜の見方

2018-03-24 14:34:57 | 東京

数日前には、まだ2分咲き程であったのに、昨日から今日にかけて
目黒川の桜は、一気に、満開に向かっています。
所により、まだ、堅く蕾を閉じている所も有りますが、殆どの流域で
5分以上、中には、殆ど満開ではと思えるほどの美しさに成っています。

土日は、おそらく、想像を超えた人出が予想されるため、今日は、早朝から
河畔を歩く事にしました。
太陽は、かなり高く上がっているのですが、遊歩道は、出店の準備をする人や
昨日の片づけをする業者の方など、普段とあまり変わらない光景です。

私達地元は、桜を見る時は、まず、川の上流に向かいます。
桜並木が美しいと思われる上流域から歩き始めます。と言いますのは、川は
上流から下流に流れ、当然それに沿った遊歩道も下り坂を歩くのが楽と言えます。
多くの観光客の方が、中目黒駅から、上流に向かって歩いて行く為疲れやすく
しかも、駅周辺は大混雑な為、余りゆっくりと桜を楽しめません。
上流域は人が少なく、ゆっくりと川を下りながら、桜を愛でると言うのが
ベストと言えます。

今年の桜は、やや白っぽいのですが、それでも、桜の華やかさは人々を興奮させます。
川に掛かる幾つもの橋から川の上下流を眺めると、キラキラと光る川面の上に
美しい桜のトンネルが続きます。
其々の橋の上からの景色は、川の蛇行と移り変わる景色と共に変化して、その都度
ピクチャーポイントが訪れます。
浅くサラサラと光りながら流れる川面を、居付いたカモがすいすいと泳ぎ、時折
尾を高く上げ水中に頭を潜らせます。
ゆったりとした時間が流れ、桜の花の様に、人々の笑顔が続きます。


しかしながら、今年も、観光客が全国からやって来ます。
目立つのは、中国や韓国と言った、東南アジアからの観光客のグループです。
周囲から聞こえて来る声は、殆どが海外の方の賑やかなお喋りです。
もちろん、日本人の方が圧倒的に多いのですが、桜を愛でる感覚は
日本人と海外の方とはかなり違っている様です。
どちらかと言えば、私たち日本人は、桜を通して季節の移り変わりを感じ
自然の美しさ優しさ愛おしさを感じて、声を落として、その感慨をお互いに
噛みしめる様に鑑賞しているのですが、海外の方々は、声に出して、自分の
楽しさを声高らかに表現する傾向が有る様です。

とは言え、桜の美しさは、世界的に知られる様に成っている様で、
世界の様々な地で、日本の桜が多くの人々の目を楽しませているようです。
アメリカのポトマック川の畔の桜並木は特に有名で、よく管理が行き届いた
美しい満開の桜を楽しむ光景がニュースに流れると、日本人の心ともいえる
桜が愛でられる事に日本人として、とても嬉しく思われます。

日本で春に咲く桜の殆どが、ソメイヨシノと言う品種の桜なのですが、
この桜は、もともと日本に古くからあったものでは無く、江戸時代に
元々あったエドヒガンとオオシマサクラが交雑し生まれたと言われています。
殆どが、接ぎ木によって繁殖され、いわば、クローンとして生まれたこの桜は
同じ性質を持つ事から、咲く時期も散る時も一緒になる事が多く、桜独特の
美しさを強調します。

しかし、品種的に極めて弱く、桜切るバカ梅切らぬバカ、と言われる様に、
桜を切ると、その切り口が細菌やウイルスに感染して、桜を枯らしてしまう事が
昔から知られています。
近年では、例え、枝を切っても、その切り口の感染防止処置が進歩したため、
木が死んでしまう事は少なくなりました。

日本人の魂を揺さぶる花として、日本人が大好きな桜のは、日本中に植えられ
多くの人々に感動を呼ぶのですが、こんなに素敵な植物であっても、やはり
人工的に作られるものは中々長生きできず、ソメイヨシノの寿命は、50年前後
と言われています。交雑した元木である大島桜は、時に、300年を超える大木に
成長しますが、ソメイヨシノが、100年生きる事は、まず有りません。
その為、今や、全国の桜の名所は、その対策に苦慮しています。

その一つが、目黒川の桜でも有ります。
新木も有りますが、多くが、30年以上、中には50年を超えた大木も少なく無く
如何に新しい桜並木に変えて行くかが地元民の悩むところでも有ります。
目黒川は、中目黒近辺とも成りますと、川幅が10メートル以下となって来ます。
この為、左右の護岸から大きく枝を広げた桜は、互いに寄り添って、美しい
桜のトンネルを作るのです。

目黒川の桜の美しさは、川を覆う、桜のトンネルに有ると言っても良いです。
橋の真ん中に立って上下流を眺めれば、そこには桃源郷に続くのではと思える
美しいピンクのトンネルが続きます。
例え、桜の花が散った季節となっても、緑のトンネルは川面の爽やかな風を通し
道行く人達に一年中憩いの場を与えているのです。

しかしながら、今日明日、そして満開となる来週の中目黒近辺の混雑ぶりは
毎年の事ながら、想像を絶する酷さです。
今日も、帰り道、昼時に近くでしたが、中目黒の駅からは、まるで通勤ラッシュの
人の流れの様に、物凄い人の数が道を塞ぎます。

多くの交通整理のお巡りさんが出ていますが、到底処理できるものでは有りません。
これから夜にかけて、山手通りは渋滞が続き、目黒川は、川の流れよりも人の流れが
上流から下流まで続きます。
とは言え、夜ともなると、川の左右の岸に沿って怪しげな提灯が点されます。
桜の様にピンクの絵模様は、昼間とは違った、耽美で優雅な夜景を生みます。
遊歩道には、様々な屋台が並び、美味しそうな料理とお酒が観光客を誘います。

毎年、桜の名所として、中目黒近辺が紹介され、日本中から世界中から多くの
観光客が押し寄せます。
ハッキリ言って、この近辺は、優雅なお花見と言うより、まるで、上野動物園の
パンダ園の前の様です。
立ち止まる事も、ゆっくりと桜を愛でると言う事も出来ません。
中目黒駅前から、目黒川上下流500メートルは、桜と言うより人を見ている様な
騒々しいお花見を覚悟しなければなりません。

私達地元が勧める所は、その先の上流域と下流域です。
特に、下流域は、川幅もゆったりとして、護岸の左右の桜もゆったりとして美しく
遊歩道の上に桜がトンネルを作り、心行くまで自分のペースで桜を愛でる事が
出来ます。

中目黒周辺は出来るだけ短時間で見終わり、そのまま、下流に向かって遊歩道を
下りながら、出来る事なら、五反田の先まで、桜を楽しむ事がベストと言えます。
朝の早い時間に中目黒近辺を見て、その後、下り坂をゆっくりと下って行けば
川と桜と東京の街並みが美しい絵葉書の様に続いています。

これから一週間程、都内の桜の名所には、多くの人が感動を求めて足をむけます。
桜を見る事で、日本の自然の美しさを感じ、私達は豊かな自然によって生かされて
いる事を感じたいものです。
本来、日本人は、一年を通じて、様々な美しい自然に癒され生かされてきました。
桜の花を見て、心が癒される様に、日本の自然によって育てられて来ました。

自然の中に生きる事で、日本人としての美しい心が生れたと言っても良いのです。
私たち日本人は、大自然の懐に抱かれる事に飢えていると言っても良いのです。
経済的に豊かな生活は、便利で楽かもしれません。
しかし、心が癒されなければ、どんなに豊かな生活をしても、幸せには成りません。
日本人として、本当の幸せをつかむにはどうしたら良いのか、外見的な美しさで
いつまでも満足できないのが日本人であり、今こそ、私達の心の魂を求める生活を
復活させなければならないと思えます。