そもそも、私達日本人は、何の為に生きているのでしょう。
幸せになる為、経済的豊かな生活をする為なのでしょうか。
戦後、何もない時代から、世界のトップクラスの経済大国に
名を連ね、国民一人当たりの所得も、先進国に名を恥じない
豊かな国と言えるでしょう。
しかし、何故か、人々顔は晴れません。
かつて、高度成長期には、より所得を得られ、より高学歴で
地位と名誉が与えられれば、多くの方は満足したのです。
その為、どれだけ、地位にふさわしい豊かな生活を手に入れるかで
幸せのレベルが決まりました。
ところが、バブルが弾け、世の中の景気が右肩下がりになると、
人々の生活も右下がりとなり、国民の多くが、明日の生活を不安視し
より安定した仕事や生活を求める様になりました。
世の中全体が守りの大勢となり、多くの産業は、次第に委縮する事で
日本中の経済体制は、委縮倹約が主体となって、益々、世の中の流れは
滞る事と成ってしまいました。
所得が思ったように得られない多くの国民は、節約し、身を削る生活で
この時代を凌ぐ様になり、経済の活性化は、一段と難しくなっています。
この流れを、何とか上向きに変えようと、国は、様々な対策を講じ、
以前の様な、豊かな国を目指しているのですが、その思いと裏腹に
一向に世の中の流れは滞っています。
とは言いつつも、一部の大手企業や高額所得者にとっては、国民の
苦しみは対岸の火事の様で、経済の多くを支える程の資本をもってして
何の生活苦も、心配もないのです。
合併統合を繰り返し、より力を増していく大手企業にとっては、
消費者がいる限り、自分たちの未来は、何の不安もないのです。
いわゆる、負け組勝ち組に分けられる日本社会に於いて、勝ち組達の
心は、如何に不況であろうと、何の心の痛みも無いのです。
しかも、負け組が、身銭を切って買い求める、生活必需品の多くは、
勝ち組の資産と変わって行くからなのです。
と成れば、国民の一部を占める、高額所得者の一人勝ちの様な世の中で
彼らは、日頃から、幸せに満ちたりた生活をしていると思われます。
多くの庶民が持ちえない資産財産を惜しみなく生活の力として使い、
さらなる豊かな生活が保障されていると思われるのです。
しかしながら、実際は、どうなのでしょう。
日本国民の下向きの感覚は、所得の有る無に関わっていないのです。
なぜなら、様々な努力を惜しまず、高額所得者になった人達が、
昔憧れた生活に、以前のような魅力を感じないからです。
より、幸せになる為と、資産をつぎ込んで得た数々の高額の品々も
得てしまえば、一瞬にしてその喜びは消え、さらなるものを求めても
やはり同じ思いをしてしまうのです。
つまり、自分の心が癒され満足できない限り、幸せは訪れないのです。
かろうじて、人と比較する事で、自己満足をしている方々は多いのですが、
それとて、幸せとは程遠く、持つものが多くなるほど、満たされない気持ちで
心がすさんでしまう方も多いのです。
今、日本人に足りないもの、それは、自分が何を本当に求め、自分にとって
いったい何が本当に必要なのかが解らない事です。
経済的な満足は、ほとんどの場合、人との比較や差別化しかならず、
自分の心の満足度ではないのです。
小さい頃から受験勉強に明け暮れ、有名大学から、名の有る企業に就職しても
そこまで成し得た社会的地位による満足では、自分自身の価値ではなく、
社会的な比較に過ぎないのです。
では、自分の価値とは、それは、この世に存在している意味と心の力です。
意味とは、自分で決めるのではなく、社会や人々が決めるものです。
自分がいる事で、人々が生かされることです。
そして、心の力とは、周囲の人々や、自分の置かれた環境にいる人々を
生かす力です。
この二つがあって、初めて自分の存在が確認でき、自分の価値が解るのです。
ところが、バブルに明け暮れた時も、現代の様に、世の中が不景気の時も、
日本人に欠けていたことです。
バブルの頃は、ただ、経済的に豊かであったと言うだけで、何でも手に入り
欲しい物を手に入れる喜びを感じていた、子供の時代だったのです。
今や、人々は、バブルでもない、不景気の世の中でもない、自分たちの
心の奥に足りないものを求めているのです。
その為、どれだけ所得が高くなろうが、満足は出来ないのです。
私たち日本人は、太古の昔から、人と自然の中に、自分の存在理由を知り、
如何に生きて行けば良いのかを学んで来ました。
自然を破壊し、自然との関係を断ち切ってしまった時点で、日本人の心は
失われてしまったのです。
また、経済力を持って、人を評価するようになったことで、相手の気持ちを
読む事も察する事も苦手となり、人々から守られる安心感を失ったのです。
今の日本人は、経済力の衰えと、人々からの信頼を失って、自らの未来を
不安視しているのです。
特に、人の中で守られる事の安心感を得られないストレスは大きく、
自らの中に自分を満たす世界を作る事が必要となっているのです。
この事は、若者たちに多く見られる傾向で、社会的には友好的に振る舞っても
いつも心は寂しく、自分一人の世界に苦しんでいる人が多いです。
人の中で育てられる人間性無くして、自分の価値を見出すことは難しく、
多くの若者が、経済的に豊かになれば幸せになれると勘違いしてしまう事が
未来の日本の不安をより感じてしまう要因と言えます。
この事は、若者のみならず、高齢者も、一般の社会人も同じことが言え
如何に、現代の日本社会に生きる人たちが、心の奥で悩んでいるかが
解ります。
日本は、高度成長を遂げ、世界的な先進国となりましたが、肝心の心は
成長する事が出来ず、経済的に豊かな国と言えど、悩み多い国民と
なってしまったのです。
経済を支えるための国民から、一人一人の心を支える国民になった時
世界で一番豊かな国となるのではないでしょうか。