いよいよ今日から本格的な工事が始まりました。
時間通り朝からコンクリートを壊す音が響き渡り、玄関から
一番遠い部屋に退避しているも、床から伝わる重機の音は凄まじく
これ程うるさいものとは思いませんでした。
とりあえず、作業が始まる前に、朝食や出勤の準備を整えていましたが、
実際、工事となると、物を切る音、コンクリートを壊す削岩機の音と
離れていても、思わず会話が途切れてしまいます。
何とか耐えながらも、どうなる事やら、何時までかかるのか不安な気持ちで
寛いでいると、突然、扉の隙間から白い煙が大量に侵入してきます。
驚いてリビングに入ると、中はまるで煙で包まれた様に真っ白の状態です。
どうやら、コンクリートを砕く際に、大量の粉塵が舞っている様です。
急いで工事関係者に伝え、玄関からの扉にテープで目張りをし、トイレの
窓も閉めてもらう事と成りました。
妻は、今日も、家にいて工事の進行状況を見守るのですが、私は、仕事で
家を出なければなりません。
玄関は封印されているので、庭の裏扉から出る事と成りました。
所が、今度は、扉が開きません。
力任せに押し広げると、そこには工事関係者の道具類が積み上げて有り、
外出するだけで大変でした。
少し早めの出勤でしたが、仕事場は、静かで空気も良いのですが、我が家は
まるで中東の戦地の様です。
妻は、家にいてもトイレが使えず、近くの公共施設までいかなければなりません。
トイレが使えなくなってもう2週間です。都会生活は、一皮めくれば
本当に危うい状態である事がよく解ります。
たった一軒のトイレが使えなくなってもこの状態です。
もし、大震災と成って、街中がこの状態と成った時、人々は、どれ程ショックを受け
うろたえる事かと思うとゾッとします。
近年、大震災を想定して、日本各地で様々な訓練や準備が行われていますが、
震災と言わず、我々現代人の生活は、一度ライフラインが失われれば、その影響は
地域だけでなく、日本中に影響すると思われます。
近代的な生活をしていると言っても、災害に見舞われれば、あっと言う間にその便利な
都会生活も、自由を失われ無能状態と成ってしまうのです。
私達の生活は、どんなに進歩したからと言って、様々な危険に見舞われる可能性がある事を
常に予想していなければならないと言う事です。
地震が来た時の準備と言っても、それは、ほんの初期段階の命をまもる術に過ぎず
それから長きに渡って、苦しい復興への道がある事を覚悟しなければならないのです。
今、ワールドカップで注目されているポルトガルは、かつて、大航海時代に於いて
ヨーロッパの強国の1つであり、世界中に植民地を持ち、多くの富で栄えました。
かつて、日本にも、多くの宣教師が訪れ、歴史の中で名を成す人が知られています。
しかし、そんな大国が、あっと言う間に、世界の列強から姿を消した原因が
地震であったことはあまり知られていません。
絶頂期に有ったポルトガルを襲った大地震は、国の経済を傾ける程の被害をもたらし
その後の国力を大幅に減少させる事と成ったのです。
ポルトガル・リスボン大地震と言われたこの地震は、リスボン市内の85%を破壊し
街を襲った津波の高さは30mと言われています。
この大地震の影響は、大航海時代の絶頂期に合ったポルトガルを、その後250年に渡り
ヨーロッパの小国へと強いる程の規模でした。
こんなすごい地震と同じ規模を想定しているのが、今や、危ぶまれている、東海沖
南海、そして千葉房総沖を震源とする大地震です。
しかし、もっと恐ろしい、東京直下型の地震がいつ来てもおかしくない状況と言えるのです。
プレート型の地震は、ある程度研究が進み、対策が考えられているのですが、東京都の真下の
断層が起こすとされる大地震は、全く研究が進んでいないのが現状です。
あの江戸の街に大災害をもたらした元禄大地震が、もうタイムリミットと言われています。
しかし、都会の真下は、全く地震計に依る計測が出来ず、また、関東ローム層の下は、
複雑に地層が走っている事から、調べる事も予測をする事も難しいとされ、近々起こるとされる
プレート型の大地震のニュースは有っても、東京都の下にある時限爆弾については、学者も
政府も全く無視していると言っても良いのです。
つまり、プレート近くで起こる大陸型の大地震も、日本列島の地下に数多く存在する断層地震も
いつ起こっても不思議でない状態で有り、今後、東日本大震災や大阪地震、熊本地震といった
巨大地震に因る大災害が確実に日本人の生活を破壊すると言えるのです。
更に、地球温暖化がもたらす巨大台風や集中豪雨、更には、竜巻や大豪雪、かつては、世界の
特殊な地域にしか発生しないとされた気象災害が、日本中のどこにでも起こる可能性が高いのです。
となると、近々起こるかも知れないと言う、大地震の為の準備というのは、余りにも安易とも言え
明日来るかもしれない、あらゆる災害に備えると言うのが、日本人のこれからの生き方と言えます。
かつて、ノストラダムスの大予言がメディアに盛んに取り上げられ、日本も、将来核戦争に巻き込まれ
多くの命が失われるとした報道に、ある方が、庭に大きな穴を掘り、当時としては珍しい避難カプセルを
埋め込みました。家の周囲に大きな青いビニールシートを張り、家の改築修理と言って、夜中に、
畳6畳ほどの大きさのカプセルを設置しました。
しかし、その後その部屋は、カラオケ部屋に成り、更には、倉庫と成って、多くの荷物置き場に
なってしまったと言います。
もしもの時に、そこに避難すれば、一週間は、危険な空気から命を守れると言っていましたが、
当の本人は、殆ど海外にいて、自宅にいるのは数える程と言う事で、もしもの時も役に立たない
と言う事でした。
東日本大震災を始めとする大災害が頻発する事で、災害準備グッズは飛ぶように売れていると
言いますが、それらの物を、確実に使えるかどうかは疑問です。
まるで保険の様に買い揃えても、いざと成った時、果たして、冷静に利用できるのかは疑わしく
我が家に於いても、停電に成った時には、懐中電灯の置き場所すら何処だったのか忘れています。
一応、ポリタンクに水を満たし、各部屋に数本ずつ置いていますが、果たしてそれで足るものか
はたまた、その前に家人が怪我をしないで避難できる状態なのか、起って見ないと解りません。
つまり、どんなに準備しても、最終的には、その緊迫した状態に置かれた時、如何に冷静に
最も適切な判断が出来、命を守る事が出来るかという事です。
目的の避難道具がない時、自らが負傷した時、逃げ道を閉ざされた時、様々な可能性が
予想できない事態が起こる事が考えられるのです。
地震対策というのは、非常に冷静な状態で、頭の中で想定したものです。
人々の心が身体が特殊な環境に晒された時、日頃は冷静に判断できても、多くの人達が
パニックに陥るのが現状と言えます。
こんな時、やはり、最後は、人間同士の絆が一番大切と言えます。
日頃から、人として、如何に周囲の人達と関わって行くか、お互いに相手の状況を見守り
助け合う事が一番大切と言えるのです。
便利で豊かな生活が出来ているからという油断が、もしもの時の災害を大きくするのです。
常に、現代社会の便利さ豊かさが失われた時、如何に冷静に判断して、協力し合い
家族を周囲の人を守る事を考えて居なければならないのです。
災害と言わず、日常生活に於いてピンチに立たされた時、如何にリスクを減らし、
如何に早く元の生活に戻るかを日頃から考える事が大切と言えます。