めぐろのめばる

目黒川近辺で日本の四季を楽しみ、未来の日本を憂う。
かつての美しい日本と日本人がいかに素晴らしかったかを思う。

野生動物を美味しく頂く為に

2016-08-03 16:36:38 | 料理

最近、都内にもジビエ料理なるものを出すお店が多くなりました。
ジビエとは、本来市場に出回らない野生動物を指していて
日本に於いては、シカ、イノシシ、熊、野鳥等、多くが
有害動物駆除の一環として捕らえられた野生動物が使われます。

これまで、牛、豚、鶏と言った人工的に繁殖させる事に依って
市場に出回っていた食肉は、誰の口にも合って、私達が生きるための
蛋白源として長い歴史の中で、食肉として確立されて来ました。
私たちの食生活も、世の中の嗜好の変化と共に、次第に変わって来て
本来ならなかなか手に入らない野生動物が、一般のレストランなどで
食べられるようになったのです。

しかしながら、これらの食材は、なかなか手に入らなかった事だけでなく、
食べるにあたっての幾つかの問題もありました。
まず、野生の動物である事から、私たちが食べるには堅かったり癖が有ったりと
たとえ食材として手に入ったとしても、中々ポピュラーなものとはならず、
一部の食通の食べ物として出回っているに過ぎませんでした。

私達は、たんぱく質を得るための食材として、家畜を育てて来た為
野生の動物を手に入れて食べる事は滅多にありませんでした。
特に、野生動物は、食べるにあたって癖が強い事が多く、上手く処理しないと
食料としては適さない事も多かったのです。

その為、このジビエ料理も、私たちの口に合う様に処理出来る事に依って
一般に出回るようになったのです。
野生動物は、もともと臭いが強いものが多く、その臭いをいかに消すかで
先人たちは苦労して来ました。
上手く臭いを無くすと、本当に上手い野生食材は多いものなのです。
とは言うものの、やはり、誰もが食べられるものではありません。
店の数も少なく、食材の量もまだまだ一般に多く広がるには程遠いです。

私たちの食材として多く出回るまでは、まだまだ先になると思われますが、

野生の物を食すると言う事でいうと、海や川の魚を食べる事も同じことが
言えるのです。
山の食材に比べ、断然多く捕獲され、本来日本人は水産資源でたんぱく質の
補給を行って来たことから、魚を食べる事は、野生の生き物を食べている
と言う感覚はありません。

しかし、この魚に関しては、自分自身で捕獲できる可能性が高く、

漁師さんの力を借りず、自らが手に入れる事が出来るのです。
その一つの方法が、釣りです。
今や釣りは一大産業に発展しましたが、釣った魚を有効に食料として
利用している方は、まだまだ多くはありません。

たとえ、食料として持ち帰っても、なかなか美味しく食べる事が出来ず、

釣っても食べないで、リリースしたりする方も多いです。
しかし、食べるとなったら、やはり野生の魚は、何かと問題が有ります。

釣っても食べないと言う方の多くは、不味い、臭い、と言った理由で

釣っても捨ててしまったり、リリースしてしまったりしているようです。
でも、釣った魚は、漁師さんが捕まえて、流通させてから食べるよりも
断然新鮮で美味しいのです。

要は、美味しく食べる方法を知らない方が多いのです。

山で獲れる野生動物を使ったジビエ料理も、問題の多くは、食材の持つ
臭みです。
海でとれる魚も、臭くて食べられないと言う人が多いのです。
ジビエ料理もポイントは臭みの取り方なのです。

イノシシ、シカと言った野生動物は、猟師が射止めた後、一時間以内に

処理することが必修と言われます。
つまり、一時間以内に解体処理をして、内臓と血液を取り去ることが
美味しく食べる一番重要な方法です。

魚を釣ったとき、帰って美味しく食べるには、いかに早く血抜きをして

クーラーなどで冷やして置くかと言う事がポイントです。
東京湾では、季節季節で様々な魚を釣る事が出来ます。
今の時期、スズキの洗いは絶品であり、料亭などでは目が飛び出る程の
値段で提供されています。

しかし、一般では、ほとんど出回っていませんし、たとえ食べても

差ほど美味しくはありません。
料亭などで出るスズキは、生きている内にきちんと絞めて、血液を抜くことで
美味しい状態で料亭に卸されているのです。

庶民にとっては、そう簡単に美味しいスズキの洗いは食べられないのです。

夏場のウナギ以上にスズキの洗いは高価なのです。
でも、釣りに行けば、東京湾に於いて釣りあげる事は、それほど難しいと
言うものではありません。

釣り方はともかく、もし、手に入ったら、その場で、しっかりと血抜きをして

全身の血液を抜いておくと、帰ってから料亭の味が楽しめます。
臭いのほとんどは、この血液から生じるものです。
ジビエ料理も、臭いを出す血液をしっかりと抜くことに有ります。

東京湾の魚は、江戸前と言って有名ですが、確かに釣れる魚は、他の地の物より

旨みが強く美味しのです。
しかし、釣れる場所によって臭いが強かったりして、食べようとしない釣り人も
多いのですが、どんな魚も、上手く血抜き処理ができると、絶品となります。
ジビエとして食べられる野生動物も、旨みの濃さは家畜よりもはるかに強く
その処理技術が上がったことで注目を浴びる事と成ったのです。

現代社会は、多くの流通機構を通って私たちの食料が運ばれてきます。

しかし、中には、その過程で、新鮮さも、旨みも、味わいも損なわれてしまう
美味しい食材も多いのです。
自らの手で収穫したり捕獲したりして、大自然に生きる野生動物の
本当のおいしさを味わう事は、食生活の中に新たなる楽しみを増すものです。


料理の厳しさ、妻の有難み

2014-06-02 16:52:56 | 料理

私は釣りが大好きで、日曜ともなると、釣り道具を沢山持って
出かけて行きます。
昼間は暑くて、日焼けの心配もあるので、もっぱら夜釣りに行きます。
ボーズの日も多いのですが、たまに釣ってくると、その処理は妻の役目です。
台所で黙々と美味しく食べれれる様に、慣れた手つきで片付けて行きます。

我が家ではごく普通の情景ですが、その後ろ姿を見ているといつも思い出すのは、

結婚して間もない頃、ゴキブリを見るだけで逃げ回る妻が、台所で何やら
格闘しています。

そっと後ろから覗き込むと、そこにはまな板からはみ出る大きさのカツオが一本あります。

出刃を片手に、魚の位置を決めるやいなや、突然、一刀両断の見事な包丁さばきで
大きな頭を断ち切りました。
それには、驚くと言うより、思わず後ずさり。

私が出会った女性の中では断トツの小心者で、包丁を持つ手もハラハラしていたのに

頭をぶった切ったと思いきや、あっという間に骨と身をはずし、いつものスーパーで見る
大きな4つの柵に切り分けてしまいました。

その日の夕飯のオカズは、食べきれない程のカツオのお刺身でした。

恐る恐る聞いてみると、小さい頃から親父さんが釣ってくる魚をお袋さんと料理していて
見よう見まねで覚えたそうです。

そんな衝撃から30年が過ぎ、今ではどんな尾頭付きの魚であろうと、表情一つ変えず

あっと言う間に美味しい魚料理にしてしまいます。

それが当たり前の毎日でしたが、先月の終わりに、たまたま釣ってきた魚を

処理してくれる妻が外出中で遅く帰る事となりました。
いつもなら、魚の処理は妻の仕事と当たり前に考えていましたが、この日は、どうしてか
ちょっと包丁を握って見たくなりました。

獲物は50センチ程のスズキです。

キッチンの片隅に料理本を置いて、鱗を取る事から始めました。
初めての魚料理が、ヒレに刺が沢山ある大きな魚とあって、やり始めたのは良いものの
全てが未経験、包丁で身と骨を分けるのも四苦八苦です。

釣りは何十年もしているので、そこそこなんでも釣ってしまいますが、

料理となると本当に難解です。
妻だったら10分もかからないでしょう。時計を見ると30分を廻っています。
どうにか刺身用の柵に下し、残りを潮汁ように仕立てると、骨を切る時に
力が入っていたのか親指が痺れます。

遅く帰った妻は、そんな私に驚くとともに、よく頑張ったと褒めてくれました。

しかし、最後に、次からはお願いね!

この言葉が、今後何を意味するか、先日、大漁で意気揚々と帰ってきた後の

私の悪戦苦闘が物語っているのです。