人を愛すると言う事は、美しい事であり、誰もが望みます。
また、愛されることは、何にも増して、喜ばしい事です。
しかし、解っていても、時にこの気持ちが薄れ、愛情よりも
憎しみが勝ることもあるのです。
山よりも高く海よりも深い愛情で結ばれた二人が、
月日が経つにつれ、思いは、何の変哲もない、
平坦なつまらない砂漠へと変わってしまう事もあります。
目を合わせるだけで、手先が触れるだけで、電撃の様に
時めきが走った事が、まるで嘘であるかのように、
何の感情もわかない、むしろ、その場にいる事すら
拒んでしまう人間の心情は、あまりにも深く難解です。
しかし、こんな極端な感情はともかく、私達が生きて行く時、
二人の気持ちは、この間を止まることなく行き来して行きます。
人生には様々な波が有る様に、男女の間には、想像もし得ない
局面が訪れるものです。
当然、家族が生まれたり、仕事が上手く行ったりと、心踊る場面も
用意されているのですが、御互いの気持ちが理解できず、
辛い思いをしなければならない時期もあるものです。
愛情が強ければ憎しみも強いと言われる様に、この二つの感情に
御互いの理性が追い付いて行かない場合も多々あるものです。
とは言っても、楽しい時はともかく、嵐が訪れた時に、いかに対処し
新たなる未来に進んで行くかが問題です。
しょせん男女は、全く違う生き物と言っても良いのですから、
悪く言えば、全てが受け入れられると言うのは、少なからず本能の
偉大なる力と言う事も出来るのです。
本能のままにお互いを受け入れ、欲を満たした途端、多くの動物の様に
離れ離れと言うのでは、非常に寂しいものです。
人間が人間である所以は、相手の気持ちを思いやることが出来る事です。
これは、自分にとって何の利益が無くとも、相手が喜ぶ事に因り
喜びを感じられるのです。
特に、自分にとって、相手の魅力が感じられなくなったとき、
動物ならば、次なるパートナーを求めるのでしょうが、
人間は、相手の存在の価値観を自分の喜びとして感じられるのです。
そのため、動物の様に、繁殖の時期が去っても、御互いにペアと成り、
人生を歩んでいくのですが、この時、御互いに、オスとメスの価値が
下がって行っても、いつまでも慈しみ合う事が出来るのが人間です。
人類の素晴らしいのは、自分の欲望を満たす事だけでなく、
自分以外のものの喜びを理解し、その助けが出来る事です。
特に、誰かが病に伏した時、自分の痛みの様に気づかい、
苦しみを取り去る為に様々な努力をします。
この事は、人がこの地上で生きて行く為の大切な行いとも言えます。
しかしながら、現代の様に、何もかもが個人的に手に入る世の中と成り、
一人でも生きて行けるようになると、他者への幸せを願う気持ちが薄れ
対人的にも周囲の人々を察する事が出来なくなってしまうのです。
食料や物が無い太古の昔は、どうしてもお互いに助け合わないと生きて
行く事が出来ませんでした。
そのため、御互いに協力し合いながら、生活を支えてきました。
自分一人では何もできなくとも、多くの人々と力を合わせれば
進歩できることを身を持って知ったのです。
この事は、対人関係のみならず、自分たちの食料を与えてくれる
大自然に対しても敬意を払う結果と成り、自分以外の人や自然と
一緒に生きる事に因り、人々の心も成長して行ったのです。
しかし、現代社会に於いて、誰しも誰かの力を借りなければ
生きていけないと言う訳ではなく、一人でも生きていける環境が
生まれたのです。
経済的な支えが有れば、人に頼ることなく生活が出来、自分の欲望を
優先できる人生が送れるようになったのです。
この事は、個人の自立として喜んでいい様にも思えますが、
集団生活を行ない、御互いに関わり合いを持って生活している事を考えると
様々なトラブルが生まれて来るように思えます。
一番の問題は、心の問題です。
人は、この世に生きている価値観を、自分自身では中々実感できないのです。
誰かの為になっている、誰かを支えていると言う心境の時は生甲斐を感じ
他の誰とも関わり合いを感じなくなると、周囲が人で囲まれている事から
より一層孤独感が増してしまうのです。
いつも前向きに物事が進んでいる時は良いのですが、仕事が思うように
上手く行かなかったり、病に伏した時、自分の存在を気遣う人がいないと
心に大きなダメージを受けやすいのです。
近年、働く女性の自立が目立ってきた所為か、働きたいし子供も欲しいと言う
女性たちが増えてきました。
特にキャリアウーマンと言われる方々が、両方を求め結婚する場合が
多くなっています。
一人でも多くの女性が結婚出来る事は喜ばしい事なのですが、
もう一つの傾向は、いざ子供が出来ると、その先は男を必要としない
新しいタイプの女子が増えて来た事です。
この事は、動物に多く見られる、生殖のみの雄を求める場合に似ています。
子供が出来ると離婚し、シングルマザーで子供を育てる事にステータスを
感じる方が居るのです。
確かに、個人的に自立できる芸能人にその様な女性が多く見られますが、
いかにも動物的で、一番大切な、異性と共に苦しみと喜びを共有する
大切な心の成長を見失ってしまう様に思えます。
より楽で楽しい生活を望むのが普通なのかも知れませんが、
人との関わり合いは、特に男女の関わり合いは、非常に奥が深く
何故、多くの人が長きに渡って人生の伴侶を求めるかの大切な訳が
解っていないのです。
私達の人生は、誰もが、波瀾万丈、様々な出来事に遭遇するものです。
そんな時、御互いに相手の力を借りなければ乗り越えられない事が
幾つも訪れるのです。
何も言わなくとも、側に存在するだけで、苦しみが癒され、辛い時を
乗り越えられることもあります。
それ程にも、人の力は大きいのです。
その大きな力は、何処から生まれるのか、それは、御互いの深い愛情です。
ラブラブの時の、自分の心に一杯溢れていた相手の存在が、いつの間にか
見えなくなったときも、相手に対して変わらぬ愛情を注げることが、
御互いに相手から人生の山を乗り越えられる力を貰う事ができるのです。
人を好きになり愛するようになると言う事は、全てを受け止め全てを慈しむ
と言う事です。
自分の周囲の人々に、心から愛情を注ぎ、いつも見守る気持ちが続く時、
自分の存在価値を人々から愛情を持って知らされるのです。