イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「魚の心をさぐる―魚の心理と行動 」読了

2021年09月29日 | 2021読書
益田玲爾 「魚の心をさぐる―魚の心理と行動 」読了

この本も以前に読んだ、「クロダイの生物学とチヌの釣魚学」と同じシリーズの書籍だ。中高生向けに書かれているというだけあってかなり平易な文章で書かれているので読みやすい。

魚の心を理解することができればきっと釣果も上がるのではないかと思うのだがそんなに簡単ではない。「魚の心理」と書かれてはいるが、さすがに魚に心(意識としての)はなかろうとは思うので行動学というようなものだろうか。
仕事の中では、客の行動心理というものがあって、商品をどんな位置に置くかで売り上げが変わるんだなどと教えられたことがあったけれども、結局売れないものは売れなくて、その論を当てはめると釣れないものは釣れないのだということになる。
著者は、自称、「魚類心理学者」と名乗っているそうだが、まあ、それは読者に対するサービスでしかないということだろう。

どこか僕の釣りに対して何か益のあるところはないだろうかと探しながら読むのであるが、そんなに世の中は甘くない。もともと著者の研究というのは、栽培漁業を効率的に進めるためのものだそうなので釣りとは直接的な関係がない。
ただ、魚が持っている習性についての解説には参考になるものがある。著作の中では、シマアジが頻繁に取り上げられていて、まあ、アジはアジなのでマアジも似たものだろうと思うので少し記録に残しておく。
シマアジというのは回遊性の魚ではなくて何かの障害物に寄り付く習性がある。それを寄り付き行動と呼ぶそうだがそれは視覚だけではなく、側線による触覚からも位置を確認しているそうだ。特に夜は寄り付き行動が顕著らしく、朝一の釣りではやはり漁礁をピンポイントで狙う必要はありそうだ。
また、側線であるが、体側だけではなく、目の周りにも存在していて、音に対する反応のほうが光に対する反応よりも若干早いそうだ。僕はあまり思わないが、マアジは海底を叩く錘の音に敏感ですぐに逃げてしまうので底を取るときにも錘を着底させてはいけないというのをテレビで放送していたが、音に敏感となるとそういうこともあるのかもしれない。しかし、それじゃあ底を取ることはできないのじゃないかと素人の僕は思うのである。
アジを釣るにはビニールよりも荷造り紐のほうがはるかに釣果が上がるということが去年と今年の釣りを通してわかったことだが、それもきっと、あのモジャモジャした紐が水流をはらんで何らかの音を出しているのがいいのかもしれない。
色よりも、音。それはひとつありなのかもしれない。

魚の学習能力についてだが、イシダイの実験では、4~7センチの大きさの時にいちばん学習能力が高まり、10センチごろから低下するという。それは、これくらいの大きさになってくると、仔魚は浮遊生活を終えてそれぞれが本来棲息している場所に定着しはじめる。時を同じくして神経線維が発達し始める。加えて本来の食べ物を探すようになることで学習能力が高まっていくからだと想像される。しかし、著者は栽培漁業のための研究が主体なので稚魚までのことしか書かれていない。もっと魚が大きくなったときの魚の学習能力というものはどうなるのだろうということは知りたいと思う。ただ、それを知ったからといって、どの形に切り出したビニールが効果てきめんなのかということは永遠の謎であるというのは間違いがない。
その、神経線維だが、そこに大量に含まるのがDHAというやつらしい。魚はDHAを体内で作り出すことができず、DHAを作る植物プランクトンを食べた動物プランクトンを食べることによってしかDHAを得ることができないそうだ。だからDHAを大量に摂取させるとわずかだが学習能力が向上するらしい。
人間はどうかというと、わずかだが体内で作り出すことができるとはいえ、大半は外部からの摂取に頼っている。ひとつの説として、人間に毛が少ないのは水辺での活動に適応するためにそうなり、(NHKでは、獲物を追いかけて長距離を走るために毛がなくなったと言っていたが・・)人間はそこで魚をたくさん食べるようになったことでDHAを体内に蓄え脳を大きくしたという考えがこの本の中に紹介されていた。多分僕は一般人よりもたくさん魚を食べている部類の人間だと思うが、脳が発達していないのはなぜだろう・・?人類進化の謎がここにも存在していた・・。

真鯛についても少し書かれていて、クラゲとの関係が書かれていた。真鯛の仔魚は浮遊中にクラゲに捕食されることが多いそうだ。
2、3年で釣りの対象になるくらいの大きさに成長するということなのでクラゲの多い年の2、3年後は真鯛が少ないということになる。そういえば、ここ数年は加太の海にもたくさんのクラゲを見た。ずっと真鯛が釣れないのは僕の腕のせいではなく、クラゲの責任に転嫁できそうだ。
逆にマアジは、プランクトンを捕食したクラゲを襲って食べることがあるらしく、また、仔魚の頃から逃げ足がはやいのでクラゲの増減にはあまり影響されないらしい。同じ海域に生息しているのなら、真鯛が減った分マアジの勢力範囲が広がるということだから現状では僕みたいなヘッポコでもおかずになるくらいの魚を釣ることができているのかもしれない。印象では、わずかだがマアジと真鯛はいくらかの棲み分けをしている感じもするし、これはあくまでもシマアジでの研究結果を読みながらかんがえているので根本の仮説が間違っているということは大いにあるのではあるが・・。

ストレスに対してはどうかというと、ストレスがかかるほど潜行水深は深くなるそうだ。これは経験上もそうだが、おそらくどの魚にも当てはまりそうだ。どの魚も釣れない日ほど底の方で食ってくる。これも、かといってそれをどうすることもできないのではあるが・・。

それよりも、漁獲高の多寡については、「卓越年級群」というものがあるそうだ。『稚魚期の減耗が少なかったためなど、何らかの要因である資源生物の加入量が極端に多い年級群(年齢集団)のこと』でそういった年級群がたくさんあると僕みたいな釣り人でもなんとか魚を確保できそうだ。この集団がいっぱい出現し続けてくれることを願うばかりだ。

この本の内容とはまったく関係がないが、いつも思っているのが、この世の中には魚を集める特効薬のようなものがきっとどこかに存在しているかもしれないということだ。
そしてひとつ見つけた。見つけたといってもテレビで見たというだけのことだが、それは納豆だ。「ザ!鉄腕!DASH!!」という番組で、ゴンズイは納豆に寄ってくると言っていた。
ゴンズイはチヌ釣りをしているとよく掛かってくる魚だ。この放送を見ながら、それならチヌにも効くのじゃないかとひそかに思った。
今年の秋のひとり遠足はこれを試してみようと思っているのだ。

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