イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「星野道夫の仕事〈第1巻〉カリブーの旅」読了

2021年12月31日 | 2021読書
星野道夫 「星野道夫の仕事〈第1巻〉カリブーの旅」読了

今年最後の本は星野道夫の写真集だ。写真集だから読書と言えないかもしれないがまあ、1冊としておこう。
今年は12月30日から元旦までまとめて休みを取った。就職した年が1987年だったのだが、以来、大晦日に朝から晩まで家にいたことはなかった。30数年ぶりに家で過ごす年末なのでゆったりと写真集でも眺めてみようという考えだ。

星野道夫は写真が好きで写真家になったわけではなかった。アラスカに憧れアラスカで生きるすべとして写真を撮ることを決め、アラスカで出会った生物学者のアドヴァイスに従ってカリブーを追うようになった。亡くなったあと、作品を数冊の写真集にまとめられたうちの1冊である。

カリブーというのはトナカイのことであるが、季節ごとに生活の場を大群で移動する。その大群の数は時として数十万頭となり大地を埋めつくすという。文字では読んだことがあってもそれはどんなものなのか想像するしかなかった。
こんな世界が誰も見ていないところに存在するのか、それでは人間原理というのは一体なんなのかと思える。人が見ていなくても、いなくてもこの世界には変わりはない。人間原理などというものは単に人間が考え出した屁理屈かエゴでしかないのかもしれない。

この本は星野道夫が亡くなったあとに出版されているので、池澤夏樹があとがきのようなものを書いているが、そこに、『カリブーにとって死は悲劇ではなく必然、生に含まれるもの、生きていることの一部である。カリブーたちはそれを知っているから、死を素直に受け取る。』と書いている。では、死を素直に受け取れない人間にとって死は生きていることの一部としては考えられないということだろうか。
たしかにそこのところの折り合いをつけるために宗教が生まれたと考えれば合点がいく。
しかし、死を悲劇と受け取る代わりに希望というものを抱けるようになったというのも人間だろう。絶望しないかぎり人間は希望を抱き続けることができる。失望したなら失ったものを見つければいい。そう思わせてくれる1冊だった。

年末なのでちょっとだけ前向きな感想を書いてみた・・。



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