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まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

幻の岩日北線「とことこトレイン」で雙津峡温泉を楽しむ

2021年04月27日 | 旅行記F・中国

4月25日の選挙投票後に日帰り乗り鉄で出かけた錦川鉄道。その終点にして同社の拠点がある錦町駅からさらに先に向かう。ここから乗るのは「とことこトレイン」。ちょうど線路の車止めの先に乗り場があり、電気自動車が2両のトロッコ車両を牽引して発車を待っている。乗り場のすぐ先にはトンネルが待っている。

錦川鉄道の前身である旧国鉄岩日線は、岩国から六日市を経て山口県の日原まで(プラス、山口線に乗り入れたその先の益田まで)を結ぶ計画で建設され、とりあえず途中の錦町まで開業した。その先は「岩日北線」として建設が予定され、島根県に入った六日市までは路盤の整備がなされたものの、結局工事は中止となった。さらには元々の錦町までの区間も廃止対象となったが、何とか第3セクター線で存続している。

建設中止となった区間のうち、錦町から6キロほどの雙津峡(そうづきょう)温泉までの路盤を当時の錦町(現在は合併されて岩国市)が譲り受け、「岩日北線記念公園」として整備し、2002年から「とことこトレイン」を運行している。3月~11月の土日祝日を中心に1日3往復、歩行者は敷地に入ることはできないが、トロッコ列車に似せた車両で未成線を行くことができる。これも一種の乗りつぶしになるだろうか。

片道、往復どちらでも選択できるが、往路のみ乗ってみることにした。雙津峡温泉で1時間あまり時間があり、日帰り入浴もできるので一風呂浴びて、帰りは岩国市の生活バスに乗って錦町に戻ることにする。

座席は1列に4人が並んで座るトロッコスタイル。家族連れ、カップルなど10数人が乗車。中には、母親と子どもがトレインに乗り込み、父親がクルマで先回りするらしい家族連れもいる。これから所要時間40分、平均時速10キロで走っていく。

発車するとすぐにトンネルに入る。広瀬トンネルだが、トレインでは「きらら夢トンネル」と呼んでいる。全長1796メートルと長い。トレインに乗ると結構大きく見えるが、鉄道では単線である。鉄道車両というのはそれだけ大きく、単線区間でもトンネルは結構大きく掘る必要があると実感する。

最初は照明をつけて走行したが、そのうち消える。代わりに、外にはいくつもの壁画が過ぎていく。写真がなかなか上手く撮れないのだが、何やら昔の人が洞窟に描いたような作風に見える。これらは、特殊な光を当てると光る6色の石を使った作品で、地元の子どもたちによるものである。

やがて、壁画が天井まで広がる区間に出る。こちらは山口県内の大学生たちの作品とのこと。ここでしばらく停車、ぜひトロッコを下りて鑑賞してくださいとのこと。壁画の作風と相まって、異次元の世界に来たかと想像するのも面白い。未成線、廃線のトンネル跡をこのように活用するのも珍しいことだろう。

まあ、これがトレインの目玉として活用できたからといって、そもそも建設じたいが未成線として無駄になった歴史は事実である。別にこの日の選挙を意識して絡めることでもないが、昭和の政治の負の遺産であることは動かしようがない。列車が走った後で赤字なので廃線がいいのか、そもそも列車が走る前に赤字が見込まれるとして建設を中止したのがよかったのか、一概には言えないが・・。

トンネルを抜けると宇佐川を渡る。その高架上に路盤がある。岩日北線の計画当時、ここに出市(いずし)という駅が設けられる予定だったところ。確かに周囲には集落が広がっていて、駅があっても不思議ではないところだ。ちなみに、駅は駅でも「道の駅」がすぐ近くに広がっている。形は違うとはいえ、この地に何か人が集まるスポットを作ろうという見立ては当たっていたようだ。

この先、路盤の上を走る。岩日北線は鉄建公団が手掛けた区間で、基本的には踏切を設けず、山を崩したり高架橋で路盤を造っていく。しばらく、宇佐川を左下に見て走る。ちょうど新緑の時季、緑が鮮やかだ。地面からの衝撃は結構伝わってくるが、風を受けて走るというのもよい。

2つ目の長いトンネル、第1山根トンネルは全長1158メートル。こちらは先ほどのような仕掛けはないが、コウモリが生息しているという。夜行性の生き物の寝床としては最適なのだろう。トンネルの中に黒い塊が見えるとそれがコウモリだという案内があったが、そういえば1~2ヶ所、そうしたところがあったかな。あまりよくわからなかった。もっとも、あまりお目にかかりたくない生き物ではあるが。

トンネルを抜けると両側に桜の木が茂る。もう1ヶ月ほど前に来れば満開の桜の下を走る名所に出会えたことだろう。こちらは「とことこトレイン」のために整備された桜並木だという。その途中、立派な鯉のぼりを掲げた家もある。季節は着実に次に進んでいる。

最後に国道を跨ぎ、終点の雙津峡温泉に到着する。連結車両が折り返せるようロータリー状になっている。この近くに周防深川という駅も設けられる予定だった。

この先にトンネルがあるが、完全に封鎖されていた。あくまで温泉があるからここまで利用しようとなったことだろう。ちなみに、島根県側の六日市でも未成線の一部区間を遊歩道として整備しているそうだ。

さて、復路はバスに乗るとして、それまで雙津峡温泉で過ごすことにする。吊り橋で対岸に渡り、少し坂を上ると「憩の家」に着く。日帰り温泉、食事が楽しめる店だ。源泉かけ流しラジウム温泉とある。

浴槽は内湯の大浴槽のみとシンプル。一方で洗い場のシャワー、カランの湯も源泉が使われているとか。飲用泉もある。訪ねた時はちょうどお年寄りが多く、それぞれが静かに入っていた。実際にはクルマで来る客が大半だろうが、列車でも「とことこトレイン」と合わせて訪ねることができる温泉といっていいだろう。

もう少し時間があるので、昼食としよう。定食がメインだが、その中に猪料理がある。ぼたん鍋、鉄板焼き、酒蒸しとある。酒蒸しというのは初めてでどんなものか興味がわいたので、そちらを注文。

他には山菜の付け合わせ、ご飯、味噌汁、果物がついてくる。その酒蒸しは浅い土鍋に入っている。蒸気が出てきたら食べ頃というが、結構じっくり待つ。途中で店の人が来て土鍋の蓋を開け、「一度肉をひっくり返してください」という。鉄板焼きのほうが早く食べられたかなと思うが、まあいい。

ほどよく煮立ったのがこちら。薬味としてネギ、ニラが乗っている。酒蒸しにすることで猪の臭みを消すとともに、肉に柔らかさを与えるという。確かに臭みが消え、ニラやネギによって香りも引き立っているし、肉も無理のない歯ごたえ、そして旨味も出ている。ジビエ料理にビール煮、ワイン煮が多いのは同じ理由なのだろう。それが酒蒸しということで和風の味にもなった。

うーん、缶ビールでも注文すればよかった。メニューにはなかったが、出る時に入口のケースにあったのに気づいて残念。

温泉、食事も楽しめたし、まだ昼前だが帰途に就くことにする。この日は1日中遅くまで出歩くつもりはなく、早い時間に帰宅してゆっくりするつもりだった。「とことこトレイン」は13時25分発までないので、11時52分発の岩国市の生活バスに乗る。

バスは先客もおらず、宇佐川、そして先ほど通った未成線跡を見ながらひた走る。気になるのは、途中いくつかのバス停があるのだが、案内もなく通過していくこと。バスの乗客は他にいないし、それらのバス停から乗る人もいないのだが、だからといって「次は○○です」の案内もないのはいかがなものか。もし私が途中のどこかで降りるなら、下手するとタイミングを逃してしまいそうだ。

そして、いろいろな看板も出てきて錦町駅到着。ここは降りる意思表示がいるかなと、駅前に入ったところで席を立つ。「ここでいいんですか」という確認の言葉はあり、無事に降りることはできたが、下手すればそのまま乗り過ごしかねなかった。案内放送を流すのが面倒なら、乗った時に「どちらまで?」と訊いてくれてもよかった。

時間があるので駅近くの河原で少し憩った後、12時31分発の岩国行きに乗る。往路と比べて乗客は数えるほどで、今度は川の見える転換クロスシートを確保。錦川に沿って下る・・・。

 

 

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