この週末のオリックス・バファローズの本拠地開幕3連戦は、首位西武を相手に2勝1敗という好成績。残念ながらナマ観戦はできなかったが、先発陣の安定と打線の好調でしばらくは楽しませてくれそうな期待を抱かせてくれる。
そんな中、ある人たちとの夜の会食があるということでやってきた鶴橋のガード下。そこで見つけたのが近鉄線らしいというか、「またこういうの、出たんや」という一冊。
『秘蔵写真でよみがえる! 近鉄バファローズ大全 ~手に汗握った「猛牛軍団」の熱き反骨魂!!』(洋泉社MOOK版)。
このところ、今はなき近鉄バファローズ、阪急ブレーブス、南海ホークスの栄光の歴史についてさまざまに触れられた本に出会う。昨今の復刻ユニフォームでの試合イベントというのに刺激されてか、あるいは昔のプロ野球の世界に触れてみたいという人たちのニーズなのか、こういうのを見かける。
本書は近鉄OBということで、梨田昌孝、北川博敏、藤瀬史朗、そしてパールス時代ということで関根潤三という各氏のインタビュー記事も交え、近鉄球団史を数々の写真とともに紹介している。他誌からの引用も多かったが、これらの写真を見るといろいろなことが思い出される。特に近鉄があと一歩のところで大逆転優勝を逃した、昭和最後の名勝負である「10・19」については巻頭特集として大きく取り上げられていた。
私も近鉄ファン歴ある者として、近鉄関連の思い出の名勝負を挙げろと言われれば、やはり一番はテレビにかじりついて見ていたこの「10・19」ということになる。普段なら「なんてオーバーな実況やねん」と思っていた安部憲幸アナウンサーの「This is プロ野球!!」というのも、こういう試合では蓋し名言と思ったものである。大阪朝日放送にも、まともな時代があったもんですな・・・・(それに引き替え何やねん、最近の阪神に対する気色悪い幇間のようなヨイショ放送は)。
この特集で「なるほど」と思ったのが、なぜ「10・19」で近鉄が勝てなかったのかという、本誌なりの分析である。球場のファン、テレビで観戦する多くの野球ファンは近鉄に優勝させたかったとしている。ただその中で、仰木監督、中西コーチ、そして選手たちの「焦り」から来るちょっとした言動が、ロッテの有藤監督をはじめとしたナインたちのプロとしての闘争心に火をつけ、そして度重なる抗議が審判の心証を悪くしたという。だから、先の「This is プロ野球!」と称された新井の三塁ゴロ、水上の送球もよく見ればセーフだったのが、審判がアウトにしてそれでチャンスが潰えた・・・としている。
でもまあ、それも含めてドラマチックな試合だったのだと思う。そんなことで優勝を逃したのも、今にして思えば近鉄らしいといえば近鉄らしい・・・。
本誌を彩る数々の写真は見ているだけでも面白い。近鉄ものとなると西本監督との特別な関係だか応援団出身だか何だか知らないがしゃしゃり出て、上から目線でごちゃごちゃ書いてくる佐野正幸氏が執筆陣にいないだけ、フラットな視線ですっきりと読める。プロ野球史についての一冊ということで、これは残しておきたいところである・・・。