まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第8回中国観音霊場めぐり~平山郁夫美術館

2019年11月27日 | 中国観音霊場

向上寺からレトロは「しおまち商店街」を抜けて、平山郁夫美術館に到着。こちらはだいぶ昔に一度訪ねたことがある。

平山郁夫といえばシルクロードとか奈良を描いた画家というイメージがある。いずれにしても仏教に関係するところ。まずロビーに飾られているのが、玄奘三蔵がインドから仏典を持ち帰る情景を描いた「仏教伝来」である。

美術館といえば撮影禁止のところがほとんどだが、ここでは全館での撮影が可能である(ただし、フラッシュ撮影や三脚使用、自撮りは禁止)。展示は平山郁夫の生涯をたどる構成で、小学生から中学生時代にかけての作品もある。

12月1日まで秋の展覧会「世界遺産 敦煌」展が行われている。平山はそれまでにもシルクロード沿道の各国を訪ねていたが、敦煌を初めて訪れたのは1979年のこと。現在は北京から直行便で行くことができるが、当時は空港もなく、鉄道やクルマを乗り継いでまる3日かかったという。その敦煌にある莫高窟を描いた作品は見ごたえがある。

この展覧会の見どころの一つに、「スーパークローン文化財」の展示というのがある。文化財の保存と公開の両立として、クローン技術により文化財を再現しようというものである。東京藝術大学が開発したもので、最新のデジタル技術と伝統美術の職人芸を組み合わせた作品たちは単なる模倣や複写の域を超えて、紹介記事によっては「本物を超越した」という表現もある。

今回展示されているのは、敦煌莫高窟の第57窟。第57窟は敦煌の中でも最も小さい部類だそうだが、中の壁画の美しさで知られている。現物は保護のため公開されていないそうだが、それが敦煌から遠く離れた日本で体験することができるというのがクローン文化財である。多くの菩薩が描かれた壁画も、単に写真パネルを貼ったものではなく、石の質感が出ている。

少し前に鳴門の大塚国際美術館に行ったが、陶板画ということで製法は異なるが、あれもクローン文化財の一種と言えるだろう。

敦煌の莫高窟との出会いも、平山が後にユネスコの親善大使として世界各地の文化財保護に取り組んだことにつながる。特に政治情勢が不安定な地区ということで、カンボジアのアンコールワットや、アフガニスタンのバーミヤン(これは残念ながら後に破壊されてしまった)、北朝鮮の高句麗古墳(北朝鮮で唯一の世界遺産)などの保護にも携わった。

一方で、故郷である瀬戸田、尾道というのにも愛着があり、先に触れた「しまなみ海道五十三次」などの作品群もある。シルクロードを描いた雄大さもすばらしいが、日本の瀬戸内の穏やかな景色の作品も、ほのぼのとしてよいものである。

一通り鑑賞して美術館を後にする。その隣にあるのが耕三寺で、ちょうど紅葉まつりの時期ということもあって大勢の人で賑わっている。西の日光とも呼ばれる建物群は見どころが多いが、今回は門の前を素通りした。

「しおまち商店街」を抜けてフェリー乗り場に戻ることにする。途中人だかりができているのは肉屋の岡哲商店。その店頭で売られているコロッケが名物で、多くのテレビ出演の紹介や有名人の写真、サインが並ぶ。それがまた人を呼び、ちょうどしまなみ海道をサイクリング中の人たちも多く立ち寄って、店頭でコロッケをかじっている。私も昼食が軽めだったので1個いただく。味はまあ、普通に美味い。

こういうのをいただいたし、本日の札所めぐりは終了ということで何か一杯を。酒屋に入って見つけたのが、瀬戸田レモンを使用したというチューハイ。瓶で売られていて1本買い求め、フェリー乗り場横の岸壁でキュッとやる。

この時間だと、15時05分発の瀬戸田行きがある。そしてその前に15時発の尾道行きというのもある。この日は尾道泊まりなのでそちらにも乗れるが、実は宿泊用のバッグは三原駅のコインロッカーに入れている。少し時間があるので乗り場で待っていると、サイクリングの人たちが次々にやって来て桟橋に行列ができる。この人たちは尾道行きに乗るようだが、これだけの自転車が乗るくらいなら大型船が就航しているのかな。

そしてやって来たのは、先ほど三原から乗ったのより少し大きいくらいの小型船。歩行者だけならともかく自転車が乗れるのかな。そう思って見ていると、係員が自転車のタイプによって船の前後に誘導し、自転車を隙間なく積んで行く。何とも器用なものだ。もっとも自転車の数が多くて1隻では乗り切らなかったようで、桟橋の別の場所に控えていた続行便らしきもう1隻にも誘導していた。

こうして自転車も満載した尾道行き。その様子を見ていた、三原行きを待っていた観光客が「あれだと、先に並んでいた人の自転車が一番奥だから、着いた後出してもらえるのは一番最後になるな」と分析していた。まあ、先を急ぐわけではないだろうが・・。

続いてやって来た三原行き、今度は弓場汽船の船である。こちらは尾道行きとは対照的に自転車はママチャリが2台。こちらは沢に立ち寄って数人の乗船客を乗せ、三原に直行する。

三原からは16時04分発の播州赤穂行きに乗る。糸崎から尾道の間では車窓に海を見ることができる。そろそろ夕方の気配になってきた。

尾道に到着。駅のホームは昔ながらの造りだが、改札を出て驚いた。駅に降り立つのは何年ぶりかだが、駅舎が今年の3月にリニューアルオープンしたばかりということで、斬新なデザインの建物である。また駅前も素朴な港町風情だったのが、プロムナードも設けられすっかり表情が変わっている。

この夜は尾道に宿泊し、翌24日は朝から夕方にかけて中国観音霊場・尾道3ヶ所をめぐることに・・・。

コメント