まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

湯村温泉へ

2017年01月22日 | 旅行記E・関西
浜坂の駅前に降り立つ。鈍行で5時間とはずいぶん遠くに来たと思うが、ここはまだ兵庫県である。福知山線の分岐である尼崎が県の南東で、浜坂は北西である。だが気候風土は結構異なる。改めて兵庫県の広さを感じる。浜坂には、以前にユースホステルの松葉ガニのプランで泊まったのが印象的である。高級旅館でなくてもこれでもかとカニを味わえたのがよかった。今はユースホステル自体が休館とのことだが、またいつか復活してほしい。

次の湯村温泉行きのバスは11時30分発である。全但バスの車両だが、新温泉町のコミュニティバスとして運行されている。乗客は私を入れて4人。そのうち一人は出発前にバスの外観、そして内装の細かいところをスマホで撮りまくっていた。確かに年代物の車両とは思うが、何かマニアの心をくすぐるものがあるのだろうか。

バスは山側に進む。七釜温泉を通り、30分ほどで湯村温泉にさしかかる。終点一つ前の薬師湯バス停で下車する。ここから階段を下りたところにあるのが、公衆浴場の薬師湯である。施設は比較的新しい建物。料金は400円だが、シャンプーやボディソープはないとのこと。小さな容器のシャンプーと固形石鹸を追加で買って中に入る。シャンプーや石鹸を置いていないのは、いかにも地元の人たち向けの銭湯だなと思う。高級ホテルの大浴場もいいが、こうした地元向きの大浴槽、そして露天風呂に浸かり、正月気分を味わう。

風呂から上がると休憩スペースのテレビでは箱根駅伝の中継をやっている。復路は青山学院の独走のようだ。

薬師湯からすぐのところに、湯村温泉のシンボルである荒湯がある。ここは多くの観光客で賑わっている。湯村温泉といえばドラマ『夢千代日記』で有名なところである。

・・・と書いたが、吉永小百合さん主演の映画を一度DVDで観たことがあるが、ストーリーもよく覚えていない。架け替え前の餘部鉄橋が出ていたと思うが、全体的に暗い話だったという程度の印象で、そもそもこの話は実話なのかフィクションなのかすら理解していない。改めて調べたところでは、ある実話をもとに、早坂暁氏がその舞台を湯村温泉に設定して書き下ろした作品だという。

温泉の中心には夢千代の像が建てられている。この像は吉永小百合さんをモデルにしたそうで、像のそばには早坂氏と並んで吉永さんの手形も飾られている。薬師湯から歩く途中に夢千代日記の資料館である夢千代館というのがあったが、別にいいかなと素通りした(ストーリーの記憶が曖昧なら、今更ながらそうしたスポットに立ち寄ればよかったと思う)。

それよりも湯村温泉の名所といえば、中心部の荒湯。湯村温泉は平安初期に慈覚大師円仁によって発見されたと伝えられ、荒湯には円仁の像も安置されている。源泉の温度は98度と高温で、寒い中でも湯気が立ち込めている。この高温を利用して玉子や野菜をゆでることができる。観光客向けには横の土産物店で玉子やじゃがいも、とうもろこしなどが売られており、私も玉子を買う。12~13分でゆで上がるということでしばし待つ。

そして出来上がった玉子。最初に割ったものはまだ半熟だったが、その次はいい具合にできあがっていた。これを荒湯の横を流れる川沿いでいただくのがよい。足湯もある。5個入りを買ったのだが、板東英二ではないので一度に全部は食べられないとして、3個は土産として持って帰る。

そろそろ帰りのバスの時間ということで今度はバスターミナルに戻る。途中に円仁が開いたとされる薬師堂があるのでお参りする。本尊薬師如来は病気平癒や延命のご利益があるとして信仰されており、湯治を目的とした温泉というのにも合っている。

バスターミナルには何台もの観光バスが停まっており、団体客がぞろぞろと降りてくる。ちょうど昼時ということで日帰り温泉のツアーだろうか。なお湯村温泉には梅田から阪急の高速バスが出ており、青春18の旅でなければそちらのほうが便利である。一方で帰りの路線バスといえば・・・乗客は私一人。やはり地方の路線バスはどこも厳しい状況のようだ。

浜坂駅に戻り、14時20分発の鳥取行きで鳥取を目指す。列車の出発まで少し時間があるので、バス乗り場横にある足湯にしばらく浸かる。これで湯村、浜坂という2つの温泉をはしごしたことになる。また、駅前のまち歩き案内所をのぞいて見ると、「セコがにの味噌煮」という一品を見つける。写真はないのだが、漁師の冬の保存食として作られたのが始まりで、現在は浜坂の家庭料理となっているそうである。それをこの冬に初めて土産物として発売しているとのこと。殻つきのセコがにをぶつ切りにして味噌やみりん、砂糖で味付けしたもので、帰宅してからいただいたのだが、味噌の風味とかにの旨味がよく合っていて美味かった。セコがには漁期が短いこともあり、味噌煮も限定販売のようだが、これはまた食べてみたい一品である。

鳥取行きに乗車。そういえば昨年も1月3日に智頭急行経由で鳥取に来ている。その時は快晴の下、若桜鉄道やら鳥取砂丘を回ったのだが、今回はそこまで行く時間はないかなと思う。そのぶん、鳥取で何か美味いものということで・・・。
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