まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

不味い!

2008年03月10日 | ブログ

食に関するエッセイというのは数多く出ているが、その多くが美味礼賛が中心である中、その名もズバリ『不味い!』である。(小泉武夫著、新潮文庫版)

この著者、小泉武夫氏は「農学博士。専攻は醸造学、発酵学、食文化論。学術調査を兼ねて辺境を旅し、世界中の珍味、奇食に挑戦している『食の冒険家』でもある」というのがプロフィール。食に関するエッセイも数多く出版している。

さてこの『不味い!』、著者がこれまでに出会ったありとあらゆる不味いものを集めた一冊である。とはいっても単に「あの店のあの料理が不味かった」という不満を並べ立てるのではなく、その「不味さ」というものの原因を分析しようというものである。「さまざまな不味さとの対決を通して、一体、その本質はどこに宿っているのか、また原因や要因は何なのかを知ることにより、美味さとは何であるかを知る」(本書「はじめに」より)のがこの書のテーマとか。

「不味さ」の要因。それは食材の側、作り手の側、どこかに原因があるという。例えば食材の側なら、農薬を多量に使用したり、多量の餌でやたら太らせた養殖モノなどが挙げられるし、作り手の側なら化学調味料での不味い味付けや、「食べる客」のことを考えない作り手のプロ意識のなさ・・・など。またこのほかにも、外国などで現地人は普通に食べているが、遺伝子的に日本人の口には合わない料理というのも紹介されている。

単に「不味い」と嘆くのではなく、その裏では現代日本人の食に対する考え方(製造者、料理人、消費者ともに)に対する警鐘も込められている。ここでは世間を騒がせた食品偽装に関することは触れられていないが、この書物を読むとそんな一部メーカーの食品偽装など軽い問題で、世の中にはもっと深刻な食物危機が進んでいることがうかがえる。その意味ではなかなか示唆に富む一冊であった。

ただこれを読むときの注意が一つ。食事しながら読まないほうがよろしい・・・・。

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