KYO‐Gのコラム

大好きなハワイ、トライアスロン、ロードバイク、サーフィン、スキーその他興味があること、そして単なる日記(笑)を書きます。

ファミリーレストラン「デニーズ」の140店舗閉店の発表で考えたこと。

2008年04月13日 09時05分49秒 | 時事・ニュース
「デニーズを減らすのは、外食を取り巻く環境が厳しいからです。メニューは今のお客さまのニーズにマッチしていません。また、原油高による影響があります。このため、外食を控え、惣菜などを買って家で食べる傾向もあります。実際、集客は落ちており、ファミレスは厳しいですね」(広報担当者)
以上「J-CASTニュース "デニーズ、ジャスコ「大量閉店」 ファミレス、スーパーはもうダメなのか"より抜粋」

これを読んだとき、「経営の質が悪いのではないか」と考えました。

エムアウト社長の田口弘さん(元ミスミ社長)はこのように言っています。
"「まず、マーケットありき」。供給側の論理ではなく、顧客の視点を徹底する。 "

これを見ると、「メニューは今のお客さまのニーズにマッチしていません。」と言う広報担当者の話を読んだだけで、供給側の論理であることがわかります。
「不採算店を閉鎖し、収益を改善する。」という考えは、だれでも思いつきます。
規模を縮小した場合、セントラルキッチンの効率や食材購入規模によるスケールメリットが損なわれたりする可能性があり、存続するお店の採算分岐点が高くなる可能性があります。
規模が少なくなると、間接部門が全体に占める比率が高くなり、利益が下がることになります。


そこで、消費者側の視点で今回のデニーズの決定を検証してみたいと思います。
僕は5年くらい前まで営業をしていたので、ビジネスの商談や自分の食事や事務処理などをさまざまなファミリーレストランを使って行っていました。
その経験を踏まえて考えてみたいと思います。

1.デニーズの環境

デニーズ680店のうち140店舗を閉店するというのは全体の2割にあたり、とても大きな数字です。
逆に考えると、その2割をのぞいた8割については黒字もしくは黒字に近い店舗だと思われます。

まず、全国で680店舗というのは、全国展開をしているとしたら少ないのではないかと考えました。
そこで、どこに店舗があるのかを調べたところ、下記の通りでした。

福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、大阪府、兵庫県 以上の16都府県。

全国といっても、関東周辺と中部と関西での店舗展開です。

そこで、ファミリーレストランの老舗であるすかいらーくグループを調べてみました。
ガスト1,136店、バーミヤン701店、夢庵312店、すかいらーく156店、グラッチェガーデンズ118店、藍屋61店、Sガスト41店、ととやみち24店、エスバ23店、その他3店、合計2,575店でした。

このようにデニーズとは規模が違い、すべての都道府県に何らかのお店があります。


2.デニーズという業態について

上記の1の数字を見ると、すかいらーくという名前の店が156店しかありません。
すかいらーくというのは、会社の名前を持った店舗であり、その名前のお店を大事にしているのかと思っていたのですが、すでに大きく変化していたのです。
ほとんどがガストという低価格帯のお店に変更しているようです。

デニーズは、約30年くらい前からデニーズという業態を変化させることなく、存続させてきました。


3.デニーズと他のファミリーレストランとの比較

デニーズは、ドリンクバーがありません。

そして料理ですが、他のファミリーレストランに比べて単価が高く、だいたい1割から2割くらいの価格差があると思います。価格帯が似ているところとして、ロイヤルホストがあります。

食材については、少々他のファミリーレストランより良いと感じます。
そこで、売り上げ原価を調べたところ、売り上げの3割の原価で、デニーズもすかいらーくも同じ原価率でした。
料理の値段が高い分、食材の質が高いと仮定できます。しかし、デニーズとすかいらーくのスケールメリットを生かした調達コストを考えると、売り上げに対しての、食材の質という面を含めた原価という面はすかいらーくの方が有利であり、このことを考慮にいれて考えないとならないと思います。


4.ファミリーレストランという業態の位置づけ

ファミリーレストランができたときは、「本格的な洋食を手軽な値段で楽しめる」という位置づけでした。外食するということが家族のスペシャルなイベントだったのです。国民総中流という位置づけとして、「週末は家族でファミリーレストランに行き食事をする」ことが意識としてあったと思われます。

1980年後半からのバブル期の前くらいから、ファミリーレストランはスペシャルな場所でなくなったのです。

外出したあとに食事を作る時間がないから行くとか、人と会う場所として行くとか、家庭で料理を作る人が手を抜きたいから行くというように、料理を楽しむところから、場所を提供するところという位置づけに変わってきたのです。
行く目的が料理から場所になったのです。
バブルがはじけて、その場所についての価格をシビアに判断されてきています。

5.世帯消費の減少
世帯消費が減少しています。
平成18年 家計の概況で、外食の消費が落ち込んでいるのがわかります。
ファミリーレストランに行く層の収入が落ちているのが原因です。統計では18年度は上昇していますが、17年度の落ち込みからの回復で上昇しているのです。
主力の顧客層の収入は厳しいといえます。

6.デニースの問題点

1から5の内容を踏まえて、デニーズの問題点を考えて見ます。

①価格帯が消費者が期待している価格と異なる。

(1)他のファミリーレストランより高い。
(2)食事の味と価格の不整合。(料理のクオリティーと価格のアンバランス)
(3)デニーズのイメージと値段の不整合。
・デニーズのブランドと価格がアンバランス。価格帯としてはもう少し下と考えていると思われる。
これはすかいらーくガーデンズというすかいらーくの価格より高めに設定した店を出したが撤退を余儀なくされたということからも、ファミリーレストランとしての価格帯は、経営が考える価格との相違がある。
(4)ドリンクが高い。
・ドリンクバーが無いという致命的な欠点があります。
これはビジネスの商談などではドリンクがセルフサービスでないと助かりますが、ファミリーでいく場合は、子供が喜ばない。
たくさんの種類をたくさん飲めるのは子供にとって魅力ですし、大人でも食前と食後に違う種類のドリンクが飲めるのはうれしいものであり、注文した単一のドリンクしか飲めないという制度は他店との比較が行われる場合、致命的な欠点だと思われる。
今回閉店する店舗の場所は発表になっていないが、もしかしたらこの点がイチバンの理由なのかもしれない。
地域と競合他店の位置関係を見てみたいです。

ドリンクバーがあるガストと、ドリンクバーが無いデニーズでどちらかに行くかというと、ガストに行くと思われます。
子供づれのファミリー以外のお客さんである、主婦の会合でも同様のことが言えるのではないでしょうか。


②ファミリーレストランという業態の位置を間違えている。

(1)ファミリーレストランに行く理由は、料理を楽しみに行くところではなくなっているということに気づいていないところに問題があります。どんなに料理の内容を変えたところで、セントラルキッチンの限界を超えることができないのです。

これはかなり重要なことだと思っているのですが、セントラルキッチン(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)を使い均一な味を保っていますが、これによりおいしさを失わせています。
焼くものについて、おそらくレトルトのパックをお湯で温めて提供していることが多いと思います。
これは料理から「焼きたて」ではなく、焼きたてのおいしさを奪ってしまっているのです。
これなら惣菜を買ってきて、レンジで暖めたのと同じなのです。
家庭で食べられない味を求めて外食するのですから、これではお客様はこないと思います。

すべての人に「まあまあ」といわれる味に作っている以上、味を期待していくということを考えるのは危険であるということです。

詳しく言うと、小学生からお年寄りまでの層にある程度の満足をしてもらう食事というのは、味に個性がなく作る必要があるのです。味に個性を付けることで「食べられない」という危険を冒さないのです。(ほとんどの層にある種の満足をもたらすというのは、ファミリーレストランのすごい点です。知らない土地で入るレストランは、その土地のレストランではなく、ファミリーレストランだといわれています)

これは、現在の延長線上で新しいメニューを考えても、根本的な顧客数の獲得に貢献しないということです。

(2)料理の競争相手は、他のファミリーレストランではなく、他業種である。
味については、「そこそこな味だけど、おいしいとは言いがたい」ということなので、百貨店やスーパーで売っている惣菜と味の面で差がないのです。もしかしたら、百貨店に入っている有名店舗の方がおいしいのです。
言い換えると、「高いわりにおいしくない」ということです。


(3)嗜好の多様化
家族の嗜好がそれぞれ違ってきて、さまざまな味が求められています。
また、メニューごとの専門店の味が好まれる傾向にあります。

たとえば、とんかつならとんかつ専門のチェーン店、パスタならパスタ専門のチェーン店、うどんやそば、ラーメン、カレーなど、それぞれの専門店の方がおいしいですし、ファミリーレストランには無いような味を好む人もいるでしょう。


7.デニーズを変えるなら

(1)空間にこだわる
今のデニーズの店舗のテーブルとイスの配置は、少々狭くくつろぐことができないのを改善して、空間を重視して店作りをする。
料理を求めずに場所を求める層にアピールするためである。

(2)セントラルキッチンの処理を少なくする。
最終的な調理に関しては店舗で行う。特に焼きたて揚げたてにこだわり、出来立ての味を楽しむことができるようにする。これはマクドナルドが出来立てのハンバーガーを提供するようになって格段においしく感じるようになったので、参考になると思う。大戸屋も店舗での調理をしているので、倣うと良い。

これにより、ファミリーレストランの味の限界を超えて、有名シェフの味を再現することも可能になる。

これはもう一度、「味を求めてファミリーレストランに来る」ようにする挑戦である。

(3)他店との差別化を行う。
他店がドリンクバーをセルフサービスで行っているのであれば、フルサービスでドリンクバーと同じものを提供すればいい。
大人はドリンクバーでドリンクを取りに行くのは、本音でいうとメンドウであり行きたくないからだ。
少々高くしても、お客は来る。
空間の充実とあわせて行えば、効果が高い。

(4)ファミリーレストランとしての新しい位置を作る。
上記の(1)から(3)を組み合わせて、出来立てでおいしくくつろげる空間を提供し、「デニーズに行きたい!」と思わせる店を作る必要がある。
店のテーマは「25歳から35歳の女性が行きたくなる味のレストラン」である。
この層の味覚を満足させれば他の層の味覚でもおいしく感じる。

(5)客単価は今より少々高くても良いが、できれば現在の価格が望ましい。
質が向上すれば、今より単価が高くてもお客様は来る。
できれば今の単価で実現し、低価格帯は他社に任せる。
これは、決定的な差別化が前提である。


これらにより、ファミリーからビジネスユースまで、満足することができる店になり、高収益をもたらすことができると思います。

不採算店を閉店するという考えは安易だと思います。
今後も今回の閉店店舗以外にどんどん不採算店が増えていき、閉店が加速するという事態は避けて欲しい。
そして、残りの店舗を一括売却するという事態になる・・・。


デニーズには、ファミリーレストランができたころのように、もう一度マーケットを作り出すという気持ちで取り組んでもらいたいと思います。
30年前くらい、デニーズに行って洋食を食べるのが楽しみだったように、またデニーズでおいしい食事を楽しみたい。

ぜひ、なんらかの策を考えて新しいデニーズを展開してもらいたいです。

図解 実戦マーケティング戦略
佐藤 義典
日本能率協会マネジメントセンター

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コメント (6)
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