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クラシック音楽オデュッセイア

2025年正月、ついに年賀状が1通も来なくなった“世捨て人”のブログ。クラシック音楽の他、日々のよしなし事をつれづれに。

アイーダ・トランペット

2004年11月25日 | エトセトラ
前回の<エスタンシア>から続ける言葉として、実は瞬間的に<アイーダ>という題名がしりとりで思い浮かんだのだが、これほどに有名でまた人気のある作品ともなると、私などよりもはるかに詳しい方や視聴体験の豊かな方がおられることは間違いない。なので、どうもこの作品自体、あるいはその演奏について語るのは、気が引けてしまう。そこで今回は、この名作とは切っても切れない関係にある特注楽器「アイーダ・トランペット」について、少しだけ語ってみることにしたい。

シェイクスピアの戯曲、あるいはその登場人物を題材にして書かれたヴェルディの歌劇作品といえば、初期の<マクベス>、そして晩年の<オテロ>と<ファルスタッフ>ということになろうけれども、実はもう一つ、『リア王』のオペラ化も大作曲家の胸のうちにはあったらしい。1854年3月31日に台本作家のアントニオ・ソンマに宛ててヴェルディが書いた書簡に、次のようなくだりがあるらしいのである。

「歌劇<リア王>は、トランペットのファンファーレでいきなり開幕させれば非常に印象深く、また個性的であろうと思われます。それも現代のトランペットではなく、古いまっすぐのトランペットです」。

しかし、ヴェルディの歌劇<リア王>は結局実現せず、作曲家が心に思い描いていた特殊なラッパはその約15年後に、エジプトを舞台にした大作のために特別注文で作られた。それが、今あるような呼び名になったというわけである。

ただ、ヴェルディが古代エジプトの墓の壁画を見てヒントにしたという“弁のない長い筒状のトランペット”というのは、必ずしもエジプトに特有の楽器というものではないらしい。「古い時代に各地で使われていたものがたまたま、エジプトの壁画にも描かれていた」ということにすぎないらしいのである。

そういう訳なので、あのトランペットは『凱旋の場』の祝典的なムードを演出するのに大きな役目を果たしてはいるが、決して古代エジプトらしさを演出しているわけではないということなのだ。この点は、留意しておいた方がよさそうである。

【参考文献】

『オペラの運命』岡田暁生著(中公新書) 147~149ページ

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