クラシック音楽オデュッセイア

2009年の大病以来、月1回程度の更新ペース。クラシックに限らず、身の回りの事なども、気の向くままに書いております。

ニールセンの<4番>~トムソン盤とシュミット盤

2014年01月31日 | 演奏(家)を語る
2014年1月31日。年が明けてから、もう1ヵ月経ってしまった。毎月末、このブログの更新をする時が来るたびに、「早いもんだなあ」と思う。この何日かは日中の陽気が暖かくなったりして、春も遠からじと感じられるようになった。今の状況としては、来月の9日よりも前に、都知事選挙の期日前投票をしてこようと思っているところである。

さて、今月も何枚かのCDを新しく聴いたが、その中で今回題材に出来そうなのは、オーレ・シュミット指揮ロンドン交響楽団によるカール・ニールセン(※1)の<交響曲第4&5番>(alto盤)になるだろうか。俗に<不滅>というかっこいい表題が付くことでお馴染みの第4番の方を、ここでちょっと話題にしてみたい。私がこの曲を初めて聴いたのは、学生時代。バーンスタイン、NYPのLPレコードだった。赤く着色されたミョウバンか何かの結晶みたいなジャケットの模様が、今でもはっきりと記憶に残っている。以来、随分たくさんの演奏録音に触れてきた。しかし、この難曲、私にはどうも理想的な演奏が見つからない。どの指揮者の演奏についても必ず何か不満があって、一度として十全に満たされたことがない。若い頃愛聴していたバーンスタイン盤もCD時代になって聴き直してみたら、「あれえ、こんなもんだったのかなあ。オケが粗いし・・」と、些かガッカリしてしまったのだった。そんなわけで現在、私の中でとりあえずの総合点トップとなっているのが(以前にも書いたことがあるけれど)、ブライデン・トムソン指揮ロイヤル・スコットランド管弦楽団のCD(chandos盤)ということになる。

もう随分前に亡くなってしまったが、このトムソンという人は“知る人ぞ知る”名指揮者であり、類稀なる実力者であった。ニールセンの交響曲集に於いても絶妙な楽器のバランスを保ちながら、確信に満ちた揺るぎのないテンポで曲が進行する。柔らかくて品のある響きを基調としながらも、時に圧倒的なパワーを見せる。で、聴き終えた時の充実感というのが、ちょっと半端じゃないわけである。「う~ん、素晴らしいシンフォニーを堪能させてもらったなあ」と。(※ちなみにこの第4番について言えば、第2楽章にもう少し寂しげな詩情を漂わせてくれていたらさらに素晴らしかったろうと思われるのだが、その「寂しさの欠如」は、この指揮者の音楽に終生付いて回った不満点だったように思われる。)

さて、今月入手して聴いたシュミット盤だが、これのどこが良かったかというと、それはもう、ティンパニーの鮮烈な立ち上がり。特に第4楽章。めっちゃ、ゴキゲン。w 演奏者も冴えているが録音の良さも特筆もので、1970年代半ばの録音とはにわかに信じ難いデジタル的な鮮明サウンドだ。左右に飛び交う打楽器の爆裂音を、とことんまで満喫させてくれる。これには、さしものトムソン盤も真っ青(笑)。それともう1つ思ったのは、その終楽章のテンポの速さ。現在活躍中の指揮者でこの曲を得意としている人、たとえばオスモ・ヴァンスカとか、ミヒャエル・ショーンヴァント、あるいはサイモン・ラトルといった面々の演奏を今はいつでも「ようつべ」で鑑賞できるようになっているが、皆さん総じて、(特に終楽章での)テンポが速い。煽りたてるような快速進行で聴く者を興奮に巻き込もうという意図が見てとれるのだが、私などの感覚ではむしろ、トムソンのようにしっかりした足取りでやってもらった方がずっと感動的に曲を締めくくれるように思えて仕方がない。いずれにしても、逸早く1970年代に今風の快速突っ走りをやっていたのがシュミット氏だったわけである。ただ、シュミット盤の場合、録音の焦点がティンパニーに当てられている関係もあって、弦楽器、管楽器のセクションがちょっとぼやけ気味で、演奏自体も気ぜわしくて安定しない印象を与えるものになっているような気がする。あちらが立てばこちらが立たずとでもいうか、まあ、このあたりは仕方がない部分もあるだろう。後は、聴く時のこちらの気分。じっくりと名作シンフォニーを堪能するにはトムソン盤、水際立ったティンパニーの鮮烈な音でスカッとしたかったらシュミット盤という感じになろうか。

今月はあと、ジュリーニの協奏曲録音(EMI音源)を集めたボックス・セットなんてのも、限定数特価で買ったりした。これには既に聴いたことのある演奏が数多く含まれているのだが、ロストロポーヴィチと共演したドヴォルザークなどはLP以来、今回久しぶりに聴いた。かつて宇野功芳氏が、「ロストロポーヴィチのチェロを聴いていると、ぼくは歌手のフィッシャー=ディースカウを思い出す。この二人は本当にそっくりである」と書いておられたが、そのご意見、久々にこのドヴォコンを聴いて私も共感できた。w 

―今回は、これにて。

(※1)デンマークの代表的な作曲家ニールセンについては、ニルセンと短く表記する方が原語の発音に近いという話を以前どこかで目にしたことがあるのだが、ここではより人口に膾炙したニールセンを使うことにした。

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