前回のバーンスタイン(Bernstein)のnからしりとりして、今回はドイツの名バリトン歌手の一人であったグスタフ・ナイトリンガー(Gustav Neidlinger)について少し語ってみたい。
この名歌手の録音暦は1950年代初頭から確認する事ができるが、やはり多くのオペラ・ファンにとって、特に《ニーベルングの指環》のアルベリヒと、<パルシファル>のクリングゾルあたりで印象に残っているのではないかという気がする。キャリアの初期にはモーツァルトの初期オペラの録音にも顔を出していたようだし、<フィデリオ>のドン・ピツァロや<ローエングリン>のテルラムント、あるいは珍しいところで<運命の力>のフラ・メリトーネといったあたりも記録にはあるようだ(※ドン・ピツァロについては、映像を昔観たことがある)が、やはりワグナーの、それも《指環》のアルベリヒこそ名刺代わりの当たり役だったという感が強い。
『バイロイト祝祭劇 100年』という記録映像の中でリハーサル風景が紹介されているが、ナイトリンガーも少しの時間ながら登場してくれる。お腹が出てずんぐりした恰幅の良い体型、目をぎょろっとむいて、にたり笑いをしながら後ずさりするアクション。堂々たるいぶし銀の太い声と併せて、「これこそ、アルベリヒのイメージだよなあ」と、つくづく感心したのであった。
現在カタログ上で確認できる限りで、1952年のカイルベルト盤から1957年のクナッパーツブッシュ盤まで、《指環》のアルベリヒ役については、この人が殆ど出突っ張りである。58年のクナッパーツブッシュ盤ではアンダーソンに、60年のケンペ盤ではクラウスに席を譲っているようだが、66~67年のベーム盤に再登場している。またバイロイトとは別に、例のショルティのデッカ録音にもやはりアルベリヒ役で参加している。
私が持っているのは上記のうち、クナ御大の56年と57年、それぞれの全曲盤。そして、ご多分に漏れず、入門者に最適なショルティ盤。以上の3セットである。私の意見としては、録音マイクを前にしてやや襟を正したショルティ盤での歌唱よりも、クナ御大の指揮によるバイロイト・ライヴでの豪快な歌いっぷりの方がやはり好きである。
スタジオ録音の優秀な音質でこの人の声を堪能できる一例として、ちょっと珍しい作品だが、ミレッカーの喜歌劇<Bettelstudent(確か、「乞食学生」という古い邦訳があった)>と<Gasparone>の、それぞれのハイライトを収めた一枚物の録音(EMI)に、彼が<Bettelstudent>のオルレンドルフ役で参加したものを最後に挙げておこう。
この人に限った話ではないが、今の現役の歌手達からは、こういう歌声はもうほとんど聴くことが出来ない。
この名歌手の録音暦は1950年代初頭から確認する事ができるが、やはり多くのオペラ・ファンにとって、特に《ニーベルングの指環》のアルベリヒと、<パルシファル>のクリングゾルあたりで印象に残っているのではないかという気がする。キャリアの初期にはモーツァルトの初期オペラの録音にも顔を出していたようだし、<フィデリオ>のドン・ピツァロや<ローエングリン>のテルラムント、あるいは珍しいところで<運命の力>のフラ・メリトーネといったあたりも記録にはあるようだ(※ドン・ピツァロについては、映像を昔観たことがある)が、やはりワグナーの、それも《指環》のアルベリヒこそ名刺代わりの当たり役だったという感が強い。
『バイロイト祝祭劇 100年』という記録映像の中でリハーサル風景が紹介されているが、ナイトリンガーも少しの時間ながら登場してくれる。お腹が出てずんぐりした恰幅の良い体型、目をぎょろっとむいて、にたり笑いをしながら後ずさりするアクション。堂々たるいぶし銀の太い声と併せて、「これこそ、アルベリヒのイメージだよなあ」と、つくづく感心したのであった。
現在カタログ上で確認できる限りで、1952年のカイルベルト盤から1957年のクナッパーツブッシュ盤まで、《指環》のアルベリヒ役については、この人が殆ど出突っ張りである。58年のクナッパーツブッシュ盤ではアンダーソンに、60年のケンペ盤ではクラウスに席を譲っているようだが、66~67年のベーム盤に再登場している。またバイロイトとは別に、例のショルティのデッカ録音にもやはりアルベリヒ役で参加している。
私が持っているのは上記のうち、クナ御大の56年と57年、それぞれの全曲盤。そして、ご多分に漏れず、入門者に最適なショルティ盤。以上の3セットである。私の意見としては、録音マイクを前にしてやや襟を正したショルティ盤での歌唱よりも、クナ御大の指揮によるバイロイト・ライヴでの豪快な歌いっぷりの方がやはり好きである。
スタジオ録音の優秀な音質でこの人の声を堪能できる一例として、ちょっと珍しい作品だが、ミレッカーの喜歌劇<Bettelstudent(確か、「乞食学生」という古い邦訳があった)>と<Gasparone>の、それぞれのハイライトを収めた一枚物の録音(EMI)に、彼が<Bettelstudent>のオルレンドルフ役で参加したものを最後に挙げておこう。
この人に限った話ではないが、今の現役の歌手達からは、こういう歌声はもうほとんど聴くことが出来ない。