カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

フェルマーの最終定理

2011-11-12 | 読書
フェルマーの最終定理/サイモン・シン著(新潮社)

 面白い本を紹介してくれといわれても、やはり人には好みと傾向というものがあるから、ある意味でその人にあったものでなければ紹介がむつかしいと思うことが多い。しかしながらそういう分野を超えて、手放しでめちゃくちゃ面白い本というのはあるわけで、つまりこの本がそうです。数学の功績を紹介したドキュメンタリーだから、そういう方面が苦手な人は敬遠してしまうのだろうけど、しかしむしろ数学がからっきし苦手であるような人ほど、この本は読みやすいという仕掛けもあるようだ。その上数学の理解は数段あがるはずだから、ものすごく有益な本だともいえる。これは中学生くらいの人には特に絶対に読ませるべき課題図書とすべきなのではないかとさえ思える。もちろん大人だって子供に読ませて人生を喪失したまま生きていくのがもったいないです。
 という訳でとにかく読むべし、ということに尽きるわけだし、実際読みだせば手放せなくなる人がほとんどだろうから何も言うことは無いのだけど、改めて数学というものが、人間が生きていく人間性そのものなんだということに気づくことは、大変に大切なことのように思える。そうして数学は美術のように、人間を美しさで魅了してしまうのだ。
 誰もが名前だけは知っているピュタゴラスの定理の偉大さや、数学の歴史やあゆみ、数が無限であることの厄介さや、最新と思われる数学理論も幅広く知ることができる。特に日本人である僕らは、谷山志村予想というものが、フェルマーの定理を解く重要なカギであったことを知るだけでも、随分誇らしい気分を味わえるのではないか。ノーベル賞だけで無い日本人の偉大な功績は多い筈なのだ。もっともこの話は結構悲しい面も含んでいるのだが…。
 もちろんこの本を読んだからと言って数学の問題がスラスラ解けるようになるとは限らない。しかし、この本を読んだことによって数学リテラシーがあがるだけでなく、分野としてまったく違った人間であっても、数学の道を歩むようになる可能性がある。それくらい数学というものが魅力的であるのが素直に理解できる本なのである。数学嫌いを治す本、というたぐいの本は実にたくさん出版され続けているわけだが、実際はそれくらい数学というものはとっつきにくい代物であるという証明にもなっているようなのだが、このようなドキュメンタリーを一つ読むだけで、おおむねそのような問題は解決されるものと思われる。まさに画期的面白本として、名著として歴史に残るに違いないのである。
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