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秋葉街道似多栗毛7  森町泊り(1)

(大代川の改修工事が始まった)

町内の懸案になっていた、大代川土手の改修工事が始まった。ブルの音が聞こえていたが、ムサシの散歩で通ると土手より河床へ重機が降りるスロープを作っていた。既に河床に生えた葦は刈り取られている。何とか渇水期に工事を終えることが出来そうである。

秋葉街道似多栗毛の解読を続ける。

川原より、とめやと見えて、としの頃五十ばかり女、臨月前と見えて、女「もし、御前方は御二人様でござりますか」弥二「そうさ、供の者は秋葉がけは外して、先へやりやした。おいらぁ、ただ二人」
女「わしは旅籠屋でござります。今晩はこの所御泊りでござりましょう。どうぞ、私の方へ御宿を御願申します」
※ とめや(留め屋)- 宿の前で客を呼び込む役。留め女。

北八「おめえ何屋だ」女「はい、お恥ずかしゅうござります」
北八「なに、家名を言うが恥ずかしいもんだか」
弥二「喜太八、やぼを言うな。腹を見ろう。ほてい屋の看板が仕込んであらぁ」
女「あなたさまは、お気の利いた御方だなぁ。私の所は布袋屋寿八郎と申します。もうついそこでござります」

北八「ほてい屋寿郎治なら、定めて弁天さまと云う、しろものもあるだらうね」女「はい、わたしが娘がござりますが、御客様方がみんなほめられます」
北八「いくつばかだね」女「今年十八でござります」
北八「むこさんはあるか」女「いんえ、むこもまだ決まりませぬ」

北八「奇妙々々、そしてこの節ぁ勝手でも働いて居るのか」女「この間はちっと気分がわるくて、引っ込んでおります」
喜八「そいつぁつまらぬ。座敷くらいはつとまりますか」
女「立って働くは、ようござりますが、いしきねぶつが出来て、座る事もあお向きにもなれませぬ」
※ 奇妙(きみょう)- 非常に趣・おもしろみ・うまみなどがあること。また、そのさま。
※ いしき(居敷き)- 尻。
※ ねぶつ - できもののこと。


自分の子供の頃、家族揃って、身体の所々へできものが次々に出来て、膿が出て治癒するまで長く掛かった。膿の袋まで上手に取らないと完治に時間が掛かるという知識なども得た。小学校六年の夏、ふくらはぎに出来て、痛くて動けなくて、辛かった思い出がある。ところが気付かないうちに、家族の誰にも全く出なくなって、今に至っている。おそらく、戦後間無しの栄養状態が影響していたのだと思うが、どういうメカニズムなのか、今もって知らない。

北八「南無三、はずれ山だ」と咄しながら、早や、ほていやの前へ来ると、宿のかゝ「おぬけや、御泊りだよ。さあ、これでございます」
弥二「なに、こいつぁ、おめえの腹ばかりでもない家だ。大方今日はこんな宿だろうと思った。えいわ、外れついでに、喜太八、泊ろう」
喜太八は不承ながら、わらじをとき、ぶそ/\足をすゝぎ、両人共に奥へ行く。
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