平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
秋葉街道似多栗毛9 森町泊り(3)
今年は、周りを踏んづけられて、厳しい状況ながら、頑張っている)
秋葉街道似多栗毛の解読を続ける。
とかくする内に、豆腐一つしきの膳部も出てける。
弥二「もし、おぬけはなぜ出さぬ」かゝ「はい、おぬけは何か云いこぼしを致したとて、恥かしがつて出かねます」
弥二「なに、構うことはねいに」と、あら/\、飯も食いしまい、それより湯へ入り、越中ふんどしのしゃれ、こぶ市座頭の申し談じ、いろ/\あれども、ここに略す。
柱とは 智恵のおぬけに 引っぱられ ざと(座頭)つ逃げる ちからこぶ市
その内、しきりに奥にては、大音にて呼ばりながら、ばた/\として、旅荷物一所に帯にてひっからげ、喜八背負い、弥二郎兵衛、勝手へ探り出るに、勝手
知れざる真っ暗がりにて、柱へ天窓をぶっ付け、ほう/\のていなり。
※ 天窓(てんそう)- あたま。
その内、火打ち箱をも尋ね出して、あんとう点け、
かゝ「おまえ方、火事はどの通りでござります」両人「ついおめいの裏だ/\」
かゝ「なに、ありやぁ、この町の鋳物師(いもじ)屋の吹きの灯りでこざいまさぁ」
両人「なんだ、鋳物師屋の吹きの火か」かゝあ「さようでござります」
※ 火打ち箱(ひうちばこ)- 火打ち道具を入れておく箱。
※ あんとう(行灯)- あんどん。
いもじやの 騒ぎに家内 驚くは 宵のいもじの ばちにぞあるらん
※ いもじ -{ゆもじ(湯文字)の音変化。}腰巻。
(初編終り)
狂歌二首は、何があったのか、出来事が省略されていて、よく判らない。どうやら初編の著者と、二編以下の著者は違う人らしく、何らかの理由で初編の著者が書けなくなり、終わりははしょってしまったように見える。それを引き継いだ人が、略すなどと書き加えて、一応終わりの体裁を整えた。そのため、座頭こぶ市の話など、何を書く積りだったのか、不明のままで終らざるを得なかった。
そんな風に想像すると、膝栗毛創作方法の一端が見えてくる。どうやら、狂歌が先に出来て、それに合わせて物語が創作されるケースも多かったのではないか。森町は江戸時代、梵鐘などを造る鋳物師(いもじ)が有名であった。その「いもじ」が一方では「ゆもじ(腰巻)」と音が同じなことに着眼し、先に狂歌一首が出来た。それに合わせて物語を紡いでいる途中に、著者が病などに倒れ、中断したのであろう。
これで似多栗毛の解読も半分終った。
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