平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
秋葉街道似多栗毛13 一之瀬 - 花立
一ノ瀬の坂を登り花立の茶屋で、
つまずいて ひんすりゃどんと 落っこちて またもおけつを 花立の茶屋
※ ひんすりゃどんと - 「貧すりゃ鈍す」のもじり。「ひん」は馬のいななき。
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秋葉街道似多栗毛の解読を続ける。前回に続いて、上記の挿絵と歌は本文より少し後に載せられているものである。
馬子「旦那方ぁ、ばんには小奈羅安の野口屋がようござります」
弥二「どこもいゝが、女のたんと有る家がいゝ」
馬子「あい、あっちにやぁ娘がござります」
弥二「それなら、その家がよかろう」と、段々話しながら行くに、喜太八は馬の上にて酒の酔いが増し、死んだようになって居る。
残りなく坂も登りしまいて、花立の前にて、馬はつまづきて、急ぐとて、喜太八を馬より真っ逆さまに落す。
喜太八、大きに怒り「べらぼうめ、人を落っことした。この野郎め」と、馬方につかみ付く。店(タナ)の亭主出て、引きわけ、謝りけるうえに、
北八「それは済ましてもやろうが、駄賃はどうする」
馬子「駄賃はもらわずとようござります」
喜八「えい事があるもんだか、弐百はきめた物だ。取らねばならぬ。酒手はまけてやる」という。
馬子「この旦那はとんだ事をいう。少し来て落ちたで、駄賃はようござりますというに、どっちへ取るだ」北八「しれた事、こつちへとるのさ」
馬子「人を馬鹿にした。馬にのせて駄賃を出すものが、どこの世界にあらず」と大きに腹を立て、
北八「それでも、さっきにきめる時、弐百で乗せるというから、酒手はどうするといったら、貴様どうでもようござりますと云うたではねえか。それで乗りてきたから、酒手はまけるが駄賃は取る」と高声にてつかみつき、喧嘩になるゆえ、弥二「でえてぇ、御前も悪いが、この男が酒が過ぎ、聞きそこねいた」と、「両方ともにわしに(まかせて)下され」と、その座を済し、亭主にも礼をゆい、ここを出ながら、
馬に乗り 駄賃お(よ)こせと さかしまに 落ちて御客は しりを花立
馬に乗って駄賃を取ろうとした喜太さん、喧嘩にならないように治める弥二さん、漫才のボケと突っ込みのように、役割分担されているようで、あれこれ言いながら最後に治めるのは弥二さんの役割のようだ。
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