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自分が主治医と頼むS医師

(今まさに夕陽がたけ山に沈む)

昨日の書き込みの続きのようなものである。

自分が現在主治医と頼むS医師は私より二つ三つ若い内科医である。それまで掛かり付けであったO医師が亡くなって、その子息の医師に移った。この医師は診察方針に異議をとなえる患者は容赦なく破門にすることで有名で、自分も見事にはまって破門になった。いわく「従えないなら他の医院に移ってもらってけっこうです」普通、こんな風に言う医者はいない。仕方なくS医院へ移った。

S医師は、もう長く生きたんだからいいだろう、などと真面目な顔で冗談をいうらしく、お年寄りはショックを受けるという話を聞いたが、まさか死期の近い病人にそんな事を言うはずはない。とにかく口が悪いとの評判であった。診察では血圧を測り、胸に聴診器を当てることは毎回やってくれる。運動不足のやや肥り気味で、身体がだるいらしく、カルテを書く手に力が入っていないように見える。定期的な血液検査の数値を見ながら、先生より数値が良いではないかと聞くと、自分はもっと良い数値だと威張る。

ある時、インフルエンザのワクチンの接種が出来るけれども、希望ならやると進められた。効きますかと聞けば、どうだろう、自分は接種したけれどインフルエンザに罹ったと商売っけはない。今までインフルエンザに罹った記憶がないし、人ごみに出ることもないから止めると言って断った。

そんな訳だから、掛かり始めの頃は、医院に閑古鳥が鳴いていた。診察時間中に先生自ら外のお花に水をやっているのを見かけたこともあった。2分ほどで診察は終るのに、お話が好きで、相槌よろしく話を聞いていると、30分も雑談が続いたこともある。さすがに次の患者が来てらしく、看護師がカルテを持ってきて、ようやく会話にピリオドが打たれた。難しい医療の話を素人の自分に伝えようと話していたのだが、最初、ちょっとした質問をしたのがきっかけで始まった話であった。

ある時、私がもう仕事を引退していると聞いて、いいなあ、と大変うらやましがって、自分はローンで建てた医院の残りが68歳まであって、それまでは働かねばならないと嘆く。それなのにもう建物が傷んできて、放っておくと崩れかねないから、修繕しなければならなくなったと、悲鳴を上げる。

しかしながら、O医師は名医の部類に入ると自分では評価している。女房と自分の帯状疱疹をいち早く見つけてくれて、酷くならないで直してくれた。往診もしてくれるというし、当番制になる前は、急患は夜間でも医院を開けて診察してくれた。

そのS医院はこの頃、自分同様O医院を破門になってくる患者に加えて、最近町内の内科医が一人高齢で廃業したため、患者がどっと移ってきて、大変忙しくなってきた。だからこの頃は雑談をすることもなくなった。建物の補修もいつの間にか終わり、お年寄りの事務員さんがみていた医療事務も、若い人に代わり、何もなかった待合室には薄型テレビが入った。

O先生もそこそこ儲かるようになったのであろう。ご同慶の至りである。
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