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ICTの進展と地域社会(後半)-市民講座

(庭のホソバヒャクニチソウ - 庭や畑のあちこちに種が散って花を咲かせる)

(昨日より続く)
今、よいイメージの言葉として何気なく使っている言葉に「絆(きずな)」という言葉がある。もともとは、犬や馬などの動物をつなぎとめておく綱(=騎綱)のことを言った。本来の意味からすると、「絆」は人々をつなぎとめるという意味より先に、自由を奪い束縛するというマイナスイメージの意味であった。つまり、人々の間の絆が希薄になってきた要因のなかに、絆のマイナスイメージに起因する部分が多分にあった。

日本の地域社会の変容を見てくると、
 1960年代 ~ 産業化、都市化の進展で、人口、経済、文化などが大都市へ集中し、交通網の発達とモータリゼーションの進展により、生活圏が拡大し、地域社会への依存度が低下した。
 1980年代 ~ 国際化の進展が地域社会の崩壊に拍車をかけた。
 1990年代 ~ 情報化の進展で、一極集中から多極分散を期待させたが、
 2000年代後半 ~ 急激な少子高齢化の進展が、一方で地域社会レベルでの福祉や生活サービスへの依存度を高め、地域社会の復興再生の必要性が高まってきた。しかし、今さら家族や血縁を基盤とした地域社会への回帰は無理で、新しい時代の新たな地域の在り方が求められる。

最近、北欧のスウェーデンに行ったが、スウェーデンは離婚率が高く家族は崩壊しているけれども、住民の社会参加が活発で、地域のコミューンが多くの役割を果たしている。これからの日本で一つの見本になるのかもしれない。

内閣府の「地域再生に関する特別世論調査」(2005年)によると、住んでいる地域が元気がないと考える人が48%ほどあった。元気がない理由には、若い人が減っている、商店街の賑わいがない、地域を支える産業の衰退などが、都市の大小に関わらずあげられた。一方、地域の活性化の活動に参加したいと思っている人も6割強いるという。

地域の人間関係は難しくなったという人が6割強、その要因は、モラルの低下、つながりの変化などが上げられる。近隣住民の交流が減り、町内会、自治会が機能していないことが知れる。現状の正直なところが世論調査で出ているようだ。

次に、「ICTによる地域再生への可能性」については、日本は情報インフラについて世界でもトップクラスまで来ているけれども、その利用面ではまだまだ遅れをとっている。これらのインフラを利用した様々な試みが現在始まっているが、行政指導による試みはあまり機能せず、成功しているのは地域住民主体で試みられているケースである。

成功している例を挙げれば、
 徳島県「とくったー」事業 ‥‥ スマートフォン利用の見守り事業
 福岡市「大名なう」 ‥‥‥‥‥ ツイッター利用の商店街活性化
 きんきさろん ‥‥‥‥‥‥‥‥ スマートフォン利用の災害時伝言板体験システム

講演の終わりは時間切れではしょることになり、結論らしきものは聞きそびれたが、実際にはまだまだ試みの段階で、ICTによって本当に地域再生が出来るのかどうか、結論はまだ出て無いのだと思った。今回の大震災でも、少し時間は掛かったにせよ、地域の絆をつなぐための様々なシステムが立ち上がった。機能したものも多く、これから研究者によって検証がされ、幾つかの可能性が示されるのだろう。
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