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ICTの進展と地域社会(前半)-市民講座

(講師 伊東暁人教授)

午後、静岡大学・読売新聞連続市民講座に出席のため、靜岡へ行く。今日の講師は静岡大学人文学部経済学科、伊東暁人教授で、テーマは「ICT(情報通信技術)の進展と地域社会 ~絆の再生と創造~」である。

当初は孤独死などの増加から、老人と絆の問題を考えていたが、3.11後、内容を考え直した。東日本大震災をテーマに上げないわけにはいかないと思ったという。

今日は、8月6日、講師の父親も広島の被爆者だったために、感慨もひとしおであるが、津波の被災地の跡を見ると、これは広島と大変よく似ていると思った。そこでは、いのち、くらし、こころのすべての面でトータルな崩壊を呈している。共通しているのは、
 「奇襲瞬間性」‥‥突然、一瞬に
 「無差別性」‥‥‥老若男女を問わず、
 「全面性」‥‥‥‥人間と他の生物、人工物と自然環境を問わず、
 「総合性」‥‥‥‥からだ、くらし、こころのすべての面で被害を受ける、
 「持続拡大性」‥‥被害がその後も持続、拡大する。地震と津波だけならばこの部分は当らないと思ったけれども、原発事故でこの項目も共通することになった。

東日本大震災において、ICTがどのように機能し、あるいは機能しなかったのか。検証が始まっている。地震・津波・原発事故情報を我々は茶の間にいて、次々に入って来るのを見ていた。しかし、本当に情報が欲しい場所に伝わったかというと、欲しい被災地では、当初、通信規制を受けながらわずかに繋がっていた携帯も、中継局が電源が切れて、予備のバッテリーも3~4時間で次々にダウンしていき、全く使えなくなった。安否情報システムも機能し始めたのはようやく二日後からであった。頼みのインターネットも被災地ではネットの入口がすべてダウンして、災害に強いインターネットもしばらくは役に立たなかった。

被災地の避難所には、安否情報も伝わらず、支援物資もアンマッチが続き、避難所では模造紙に手書きの情報が細々とあるだけであった。家族の安否を尋ねて、被災者たちの避難所巡りが続いた。

安否情報はこの後、少しずつインフラが復旧し始めて、写メールで集めた手書き模造紙の画像を全国のボランティアがテキスト化し、NHKの安否ダイヤルなどと連係し、ようやくネットでも確認できるようになった。

外にDMAT(災害派遣医療チーム)は出動したが、トリアージ(怪我の程度にレベルを付けて診療優先順を決め、限られた診療能力で、助かる人を出来るだけ多く助けるためのシステム)が有効に機能することは少なかった。「津波に重傷者なし」といわれるように、助けられた人には難しい診療は要らず、助けるのが遅れた人はそのほとんどが死亡していた。

通信衛星によるインターネットアクセス及び携帯電話利用は、超高速インターネット衛星「きずな」、技術試験衛星Ⅷ型「きく8号」、NTTドコモのワイドスター、KDDIのインマルサット・イリジウムなどがあったが、いずれもまだ実験的に使われた程度に終った。(続く)
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