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不可解な円の独歩高

(我が家の周りにたくさんいるハグロトンボ
- 子供の頃はおはぐろとんぼと呼んでいた)

日本が東日本大震災で苦しんでいる中、まさに足を引っ張るような円高が続いている。色々な専門家が円高理由を説明してくれるが、今もってここまでどうして円高になるのか理由が判らない。

今回の円高は対ドル76円台まで来てしまった。瞬間的には米国国債の発行額が法律で定められた発行限度額いっぱいになり、このまま置くと8月2日に国債が発行出来ず、米国政府が債務不履行という、あってはならない状態に陥る。ところが、上院と下院が日本同様、民主、共和両党でねじれ現象になっていて、両者の歩み寄りが見られず、何も決められない状態にある。それを危ぶんだ投資家がドルを売って比較的安全な日本円にどっと流れてきたための円高であると説明されていた。

今朝、オバマ大統領の声明で両者の歩み寄りが成り、発行限度額の引き上げが議会を通る見通しになったと発表された。瞬間的に2円近く円安に振れたが、
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ここまで書いていたところで、11時58分駿河湾を震源にした震度5弱の地震があった。当地では震度4というが、そこまでの揺れは無く、柵から物が落ちるようなこともほとんど無かった。びっくりさせられたが、おかげでほとんど被害は無く済んだ。東京でたくさんの地震を経験してきた息子は、震度4の揺れは無かったと話す。恐らく震度3位だろうという。

また、76円台の円高に戻ってしまった。市場の判断では、今回の発行限度額の引き上げ策の中に織り込まれた財政の削減策は不十分で、この後、米国債の格付けが引き下げられるのではないかと観測が広がったことと、足元の米国景気を示す製造業の景気指標が低い数値で発表されたことが、円高に戻った要因だと説明されている。

米国の財政赤字から信用力も下がり、景気の先行きも明るくないからドルが安くなる理由は判る。しかしその行き先がなぜ円なのだろう。その疑問の答えの糸口は中国の元にあると考えている。誰もそのことに触れないから、あるいは間違っているのかもしれないが、間違いを恐れずに述べてみる。

相場は自由市場であって始めて需給関係が拮抗し正しい相場と成る。ところがここに中国元という、価格が国によってある幅にコントロールされた通貨がある。小さな通貨であれば影響はわずかなものになるだろうが、中国は今やGDPで世界2位、しかも莫大な貿易黒字を誇っている。

通常ならドルに対して、かつて円がそうであったように、元は値上りして2割や3割、あるいは5割位は高くなっても不思議ではない。通貨の自由相場で、現代では一国が一方的に世界の富を独占してしまうことが出来ないようになっている。元が値上りすればたちまち輸出に響き、努力しなければ世界の工場の機能は維持できない。つまり輸出競争力の低下で貿易黒字が調整されるのである。今回のようにドルに不安があるならば、自由市場であれば中国の元こそ買われて元高に推移するのが当然であろう。しかし元を買う人はいない。自由相場でない元を買っても意味がないのである。本来、現在もっとも力のある元に向かうべきお金が、比較的安全という理由だけで、国内からみれば満身創痍に見える円に向かい、円高に押し上げているのである。

これだけの円高が長期化すれば、日本の企業はさらに海外に出て行かざるを得ず、日本は一層空洞化が進み、失業者が町に溢れるようになる。肝心の日本政府はこれだけの円高をただ手をこまねいているだけで、何も手を打てないのは何とも情けない次第である。中国は、よく言えたものだが、米国に対して財政赤字をもっと減らすように求める声明を出しているのは立派といえば立派である。

もっとも円高は決して悪いことばかりではない。現在穀物は世界的にかなり高騰しているが、円高のおかげで価格の上昇は抑えられ、消費者に値上りの実感は無い。しかし通貨の弱い国では高くて買えず、国民が飢える国もこのところ急速に増加しているという。
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