ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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現代の眺望と人類の課題105

2009-01-28 10:59:36 | 歴史
●クリントン政権はかつてなくユダヤ人が多かった

 ブッシュ父に替わって、ビル・クリントンが大統領になったのが、1993年(5年)である。以後、2000年(12年)までクリントン政権が続いた。クリントンは、民主党カーター外交を継承して、中東においては和平を促進した。
 実は、クリントン政権は、史上例を見ないほどユダヤ人が多くいた。それ以前に最もユダヤ人が多かったのは、先に書いたフランクリン・D・ルーズベルト政権である。ルーズベルトが私的なブレーンとしていたグループには、政界・財界・学界・法曹界で活躍するユダヤ人が多かった。財務長官のヘンリー・モーゲンソー、労働長官のパーキンス女史らが政権の中枢にいた。

 しかし、クリントン政権におけるユダヤ人の多さは、FDR政権とは比較にならない。閣僚となったユダヤ人は、ルービン財務長官、後任のサマーズ、オルブライト国務長官、アイゼンスタット国務次官、ホルブルック国連大使、コーエン国防長官、グリックマン農務長官、ライシュ労働長官、カンター通商代表・商務長官、バーシェフスキー通商代表、バーガー国家安全保障担当大統領補佐官である。また中東政策担当者を務めたインディク中東担当国務次官補、ロス中東特使、ミラー中東特使らもユダヤ人だった。
 クリントン政権は、レーガン政権時代に膨らんだ「双子の赤字」を解消し、財政黒字に転じるほどの経済的成果を挙げた。この時の主要経済担当スタッフのうちFRB議長はグリーンスパン、財務長官はルービン、同次官で後長官がサマーズで、三人ともユダヤ人だった。彼らは、巨大国際金融資本の意思を受けて、アメリカ財政の建て直しを推進したと思われる。

 クリントン政権にユダヤ人が多かったといっても、みなが同じ思想、同じ政策を持っているわけではない。しかし、一つ顕著な事実は、二期目のクリントン政権で1997年(平成9年)、マデレーン・オルブライトが国務長官に就任すると、アメリカはイスラエルからの輸入量を大幅に増やして巨額の貿易赤字を記録するようになったことである。これはイスラエルへの巨額の財政支援となった。ブッシュ子政権でもこれは続いた。ブッシュ子政権の親イスラエル外交は、急に始まったものではなく、クリントン政権でユダヤ人が政権中枢で多く活動するようになっていたのである。

●PNACによるアメリカの軍事革命論

 クリントン大統領は、イスラエルとアラブ諸国の融和に努力し、オスロ合意に貢献した。しかし、その政権の時代に、ネオコンが勢力を伸ばしていた。1997年にクリストルがケイガンとPNACを設立し、政府にイラク攻撃をけしかけ、アメリカの軍事力による世界制覇を要求していた。PNACは、2000年(平成12年)9月、つまり9・11の1年前に、「アメリカ防衛の再建~新しい世紀のための戦略・力・資源」という出版物を刊行した。この文書に「ニュー・パールハーバー(新しい真珠湾攻撃)」という表現が登場する。ブッシュ大統領は、9・11の当日の日記に「ニュー・パールハーバー」という言葉を記した。PNACの文書を読んだか、その内容を聞いていたかしたのだろう。
 「アメリカ防衛の再建」は、軍事費の大幅な増加、国土安全保障局の設立、中東軍事基地の建設、宇宙の軍事化による軍事技術の革新など多岐にわたる提言をしている。そしてアメリカ政府に「軍事革命(RMA)の完遂」を求めている。この革命は、パクス・アメリカーナ、すなわち「アメリカの平和」を、より効果的に確立するための革命である。すなわち、アメリカが世界的な覇権を確立するために、抜本的な戦略転換を呼びかけるのが、「アメリカ防衛の再建」という文書である。

 ブッシュ政権が9・11の翌年、平成14年(2002)に公表した「国家安全保障戦略」は、PNACによる「アメリカ国防の再建」の提言をほとんど取り入れている。さらに加えて、「われわれの最良の防衛は攻撃である」と言っている。ここに先制攻撃理論が提唱されている。
宇宙の軍事化に重点を置いた「軍事革命」については、PNACによる『2020年のビジョン』と呼ばれる文書が、よりはっきりとその目的を述べている。
 文書は冒頭で、次のように言う。「アメリカの宇宙軍は、米国の利益と投下資本を守るために、軍事作戦による宇宙支配をするものである」と。この目的を達成する方法は、「全領域の支配」つまり「地球規模の戦闘空間の支配」である。「全領域の支配」とは、陸海空だけでなく、大気圏外の宇宙空間をも支配することである。つまり宇宙の軍事化による地球規模の支配を通じて、米国の利益と投下資本を守ることが、この軍事革命計画の目的である。
 PNACと9・11の関係については、別の拙稿「9・11~欺かれた世界、日本の活路」をご参照願いたい。ここで指摘したいのは、ユダヤ人ネオコン・グループが主催するPNACが、アメリカの軍事革命、及び世界戦略に重大な影響を与えてきたという事実である。そして、ブッシュ政権が遂行したアメリカが世界的覇権を確立するための抜本的な戦略転換は、同時にイスラエルの国益に合致し、イスラエルの安全保障をアメリカの富と権力で強化するものだった。ブッシュ政権の誕生をもって、アメリカ政府をかつてないほどシオニスト化したのである。

 次回に続く。


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