ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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「A級戦犯」を東郷神社に分祀?

2008-05-26 09:43:35 | 靖国問題
 毎日新聞によると、前東郷神社宮司の松橋暉男(てるお)氏が、来月出版する著書で、靖国神社に祀られているいわゆる「A級戦犯」を東郷神社に分祀すべきだという提言をするという。
 松橋氏は、小泉政権の時代に、この分祀論を唱えたことがある。その時にも書いたが、そもそも神道には、神社に祀られている神(人霊を含む)を分離して、別に祀るという考え方がない。分祀する場合は、もとの神社(本社)には引き続き祀られ、別の神社(分社)にも祀られることになる。これが、神社本庁の見解である。
 これを例えて言えば、ろうそくに灯っている火を、別のろうそくに移しても、元のろうそくの火は消えず、新たなろうそくと両方に火が灯るようなものである。それゆえ、分祀という考え方は、神道と相容れない。
 松橋氏の主張は、到底受け入れられるものではない。しかも、松橋氏は、分祀した霊を、東郷神社の「海の宮」に合祀するよう提唱している。東郷神社は、東郷平八郎元帥を祀る神社である。いわゆる「A級戦犯」が全員海軍軍人だったというなら、一つの発案ではあろう。しかし、靖国神社が「昭和殉難者」として合祀したいわゆる「A級戦犯」14人のうち大多数は、陸軍軍人と政治家である。海軍軍人は1人しかいない。その1人の海軍軍人とは、永野修身である。
 彼以外の板垣征四郎、梅津美治郎、木村兵太郎、小磯国昭、土肥原賢二、東條英機、松井石根、武藤章の8人は、陸軍軍人である。また、白鳥敏夫、東郷茂徳、平沼騏一郎、広田弘毅、松岡洋右の5人は、政治家または官僚である。
 こうした内訳をみても、どうして彼ら14柱を合祀する先が、東郷神社なのか。私は松橋氏の主張は支離滅裂な思いつき、と断ぜざるを得ない。

 毎日の記事によると、松橋氏は著書で、「A級戦犯」合祀が中国などの反発を招いた問題は、首相参拝が行われなくても解決しないと指摘し、論争が収まった「今こそ真剣に取り組むべき時だ」と訴えているという。つまり実態は、中国共産党政府の批判をかわすために、こんな思いつきはどうかと言っているにすぎない。
 松橋氏の背後には、靖国神社に「A級戦犯」を分祀せよと迫る政治家や親中派の知識人がいるのではないか。
 私は「A級戦犯」の分祀を説く政治家や知識人は、中国の外圧に気圧されて、中国指導層の言いなりになっているように見える。仮にA級を分祀したとすれば、中国指導層は、今度はBC級を外せ、次は中国に「侵略」した兵士を全部外せと、要求してくるだろう。「A級戦犯」分祀論は、小手先の発想による愚かな主張なのである。

 詳しくは、拙稿「慰霊と靖国~日本人を結ぶ絆」をご参照願いたい。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion08f.htm

 以下は、当該記事のクリップ。

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●毎日新聞 平成20年5月25日付

<A級戦犯>「東郷神社が受け入れを」前宮司、著書で提言へ
(毎日新聞 - 05月25日 02:41)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=497824&media_id=2

 靖国神社に祭られているA級戦犯を、旧海軍ゆかりの東郷神社(東京都渋谷区)に分祀(ぶんし)すべきだ--。東郷神社前宮司の松橋暉男(てるお)氏が来月出版する著書「幻の揮毫(きごう)」(毎日ワンズ)で、神社関係者では異例の提言を行う。
 全国8万神社をまとめる神社本庁は「分祀は神道の教義上できない」との見解をとっているが、傘下の有力神社の「A級戦犯受け入れ」表明は、分祀論議に拍車を掛けそうだ。
 同書は、A級戦犯合祀が中国などの反発を招いた問題は、首相参拝が行われなくても解決しないと指摘。論争が収まった「今こそ真剣に取り組むべき時だ」と訴える。そのために、東郷神社境内の「海の宮」にA級戦犯を合祀するよう提唱。神社本庁などの主張通り靖国神社に「御霊(みたま)」が残っても、東郷神社に「移った」と見なして「ご遺族は心おきなく新しい座にお参りすることができる」ようになるとしている。
 中国などにも「誠意ある対応をしたことになる。靖国参拝のカードは有効でなくなる」ため、外交問題を沈静化できるという。
 松橋氏は「私は靖国神社に代わる新たな国立追悼施設反対の立場で、神社本庁と一致している。後任の東郷神社現宮司も私の考えをわかってくれると思う」と話している。
 松橋氏は小泉純一郎元首相の参拝が問題になった05年にも分祀論を試みたが、神社本庁から「発言を慎むように」と注意され断念。07年4月に名誉宮司に退き、提言に踏み切った。旧知の南部利昭・靖国神社宮司にも分祀の必要性を説いているという。
 分祀論は、日本遺族会の古賀誠会長も賛同。遺族会は07年5月に検討の勉強会を設けている。【野口武則】

◇東郷神社
 日露戦争の日本海海戦で勝利した連合艦隊司令長官の東郷平八郎元帥を軍神として祭る。戦前、靖国神社と同格の別格官幣社に列せられることが決まっていたが、1945年に空襲で本殿が焼失したため取りやめになった。現在、崇敬会「東郷会」の名誉会長は旧皇族の東久邇信彦氏。
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2 コメント

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 (とおりすがり)
2008-05-26 11:22:51
>>こんな思いつはどうかと言っているにすぎない<<

こんな思いつきはどうかと言っているにすぎない

かと思われます。すみません自信がないですがどうでしょうか。

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東郷神社に参拝したことがあります。大変綺麗で、商業神社(?)という雰囲気があります。
(結婚式とかのイベントも盛んのようです。場所柄的に女性の集まるスポットの近くなので)。


合祀は理解出来るのですが、分祀とは辞書にも出ていないような言葉です。断固反対します。
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>とおりすがりさん (ほそかわ)
2008-05-26 13:30:16
ご指摘のとおりです。
訂正しました。
いつもありがとうございます。
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