ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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中国株バブルが破裂した2

2015-08-03 08:54:01 | 経済
●中国株バブル発生の仕組み

 エコノミストの田村秀男氏は、産経新聞平成27年7月4日と同日の夕刊フジの記事に、中国の株暴落について書いた。7月4日の時点ゆえ、上海株が最安値を付けた7月9日より5日前の時点である。現在からは約3週間前である。だが、その時点で田村氏は、中国の株バブルとその崩壊の原因を深く捉えていた。
 産経とフジの二つの記事は関連しており、一本化して読むことにより、事態の理解を深めることができる。
http://www.sankei.com/economy/news/150704/ecn1507040012-n1.html
http://www.sankei.com/economy/news/150704/ecn1507040003-n1.html
 田村氏は、7月4日産経の記事で、債務危機のギリシャに比べ、「中国の先行きはもっと不透明だ。党の手でバブル化させた巨大な株式市場を制御できない。市場危機の世界への衝撃はギリシャ以上に深く、長引くだろう」と述べた。
 田村氏は、2008年9月のリーマン・ショック後の中国経済を次のように概観する。「党中央は中国人民銀行が創出する資金を不動産開発に振り向け、不動産ブームを演出した。ところが、習近平氏が党トップの座についた12年秋から相場が下落し始めた。公式発表の国内総生産(GDP)実質伸び率は前年比7%前後の水準で推移するが、代表的な物流指標、鉄道貨物輸送量は昨年から下落し続けている」と。
 ここで鉄道貨物輸送量は、田村氏が重視している指標である。中国の経済指標は、粉飾されているものが多いが、鉄道貨物輸送量はその中では信頼できるものであり、流通の量から生産と消費の量を推し量ることができる。詳しくは拙稿「アベノミクスの円安が中韓に衝撃を与えている~田村秀男氏」に書いた。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/02b51182cc3061a87f13f7e9cb2fd13b
 7月4日の記事で「モノは動かない。カネはどうか」と田村氏は問う。「中国の現預金総額は14年末約2400兆円で、米国の1・7倍、日本の2・7倍に上る。東京銀座など海外にとっては「爆買い」さまさまだが、本国でカネが回らない。そこで習近平政権は株価を引き上げ、個人投資家のカネを引きつける策に転じた。人民銀行は株価上昇を公言して利下げし、人民日報など党直属メディアが株価上昇をはやし立てる」と。
 ここで中国の株式市場の特徴について補足すると、日米欧などの市場が機関投資家中心なのに対し、中国は市場の8割が売買経験の少ない個人投資家である。不動産バブルがはじけると、個人投資家たちは不動産などに投資してきたカネを株に振り向けた。中国の個人投資家は、大半が高等教育を受けておらず、投資に関する正しい知識がない。中国人は、現世志向で、財富に対して妄信に近い執着を示す。民衆は政府・権力者を全く信頼せず、近親者と財富を信じるのみである。その彼らの金銭への欲望が株に向かった。彼らの多くは、不動産はもうだめだが、今度は株が儲かると信じて、借金をして株を買った。これを政府が誘導した。
 田村氏は、この「信用取引」について、次のように述べる。「利下げのたびに株の信用買いが飛躍し、株価が連動する。国有企業が圧倒的に多い中国の上場企業が発行した株式の大半は市場で売買されない。流通株の時価総額に対する信用買い比率は15%以上に上り、日本のバブル期の数倍以上だ。党が支配する企業も信用取引拡大と並行して、新規上場や増資などを通じて株式市場から資金調達する。株式市場はまさに党の利益のためにある。経済実体から大きくかけ離れた株価はバブルである。皮肉なことに党が呼び込んだ外資が崩壊の引き金を引いた」と。
 田村氏は、7月4日の夕刊フジの記事では、この点に関して、次のように書いた。
 「信用取引は、投資家が証券会社からカネを借りて株式投資する。人民銀行が利下げすると、証券会社の資金調達コストと投資家の借り入れコストが下がるので、たちまち信用取引が活発になる。証券会社は投資家への貸し出しによる金利収入が大きな収益源になるので、新規株式公開(IPO)や増資で自己資本を拡充し、貸出余力を大きくしてきた。
 上海株式市場での信用取引による買い残高は6月中旬時点で29兆円以上、3兆円弱の東京証券取引所の約10倍である。時価総額では上海は東証よりも2割弱大きい程度だから、上海の信用取引の度合いの大きさは、ず抜けているとみていい。昨年11月初めから今年6月初旬までの間に、上海株価は約2倍、信用取引残高は3倍に膨れ上がった」。
 「中国人民銀行は昨年11月、今年3月、5月、そして先週末に利下げしたが、そのたびに信用取引がぐんと伸び、株価上昇に弾みがついてきた。人民銀行の利下げは、信用取引を拡大させて株価を引き上げる。人民銀行は日銀のように政府から独立しているわけではなく、党中央の指令下にあるのだから、習国家主席が株高の号令をかけるだけで株価が上がる仕組みなのだ」と。

 次回に続く。

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