ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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中国の対北金融ルートを断て~田村秀男氏

2017-09-19 09:31:24 | 国際関係
 これまでの国連による北朝鮮への経済制裁は、効果が上がっていない。今回の制裁も、実効性は低い。反骨のエコノミスト、田村秀男氏は、制裁効果が上がらない原因は、中国からの対北朝鮮金融ルートが存在するからだと指摘する。そして、そのルートを遮断すれば、確実に制裁の実を挙げられると主張している。
 産経新聞9月10日付の田村氏の記事から要点を抜粋する。
 「北朝鮮の国内総生産(GDP)は年間300億~400億ドルで、軍事支出は約100億ドルに上る。ミサイルや核開発を支えるのは輸出収入による外貨で、中国向けが全体の約9割を占める」
 「従来の経済制裁には致命的な欠陥がある。それを利用する元凶は、北朝鮮にとって最大の貿易相手、朝鮮戦争で「血の友誼(ゆうぎ)」を交わした中国である。北朝鮮は制裁によって輸出が減ると外貨収入が落ち込むので、軍用、民生用を問わず、輸入に支障をきたすはずだ。ところが、中国からの輸入は急増し続けている。なぜ、可能なのか。答えは簡単、中国の大手銀行が中国内外のネットワークを経由して信用供与、つまり金融協力しているからだ」「中国からの対北朝鮮金融ルートを遮断すれば、確実に制裁の実を挙げられる。そのためには、米政府が中国銀行など大手銀行に対し、ドル取引禁止という制裁を加えればよい。世界の基軸通貨ドルを入手できなくなれば、中国の金融機関はたちまち干上がるので、米側の要求に応じざるをえなくなるはずだ。ところが、オバマ前政権はもとより、トランプ政権もまた逡巡(しゅんじゅん)している」
 「大手銀行が国際金融市場から締め出されると、中国で信用不安が起きかねず、もとよりバブルにまみれた金融市場が震撼する。習近平政権は激しく反発し、米企業に報復しかねない」「中国はトランプ政権になって以来、対米輸出と対米黒字増を加速させている。トランプ政権の対中融和路線に便乗して中国は思うがままにドルを稼ぎ、北朝鮮に資金供給できるのだ。今、なすべき経済制裁は中国の対北朝鮮金融ルートを完全に遮断する対中金融制限ではないか。北京が米国だけを逆報復できなくなるよう、日欧も同調すべきだ」
 以下は、記事の全文。

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●産経新聞 平成29年9月10日

http://www.sankei.com/premium/news/170910/prm1709100021-n1.html
2017.9.10 08:00更新
【田村秀男の日曜経済講座】
対北朝鮮制裁不発の元凶 中国の金融ルート遮断を

 北朝鮮の核実験を受け、国連安全保障理事会は11日にも米国の提案による北朝鮮向け石油輸出全面禁止などの新たな制裁決議案を採決する。中国とロシアの反対で調整は難航しているが、これまでの度重なる国連の対北朝鮮制裁は不発続きだ。なぜなのか、有効な制裁案は他にあるのか。
 対北朝鮮に限らず、国際舞台での経済制裁は米ソ冷戦時代から現在に至るまで、頻繁に発動されてきた。目的は問題国の無法行為をやめさせるためだが、武力行使、つまり戦争を避けながら成果を挙げることに意義がある。
 今回の対北朝鮮石油禁輸案はいわば、「最後通告」とも言える劇薬だ。体制崩壊の危機に追い込まれる金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が折れて核・ミサイル開発を断念すれば結構だが、「窮鼠(きゅうそ)猫を噛(か)む」となれば禁輸の結果は大災厄だ。トランプ政権はもちろん、その点は留意していて、大統領も関係閣僚も折りあるごとに、体制転覆や戦争の意図を否定している。それでも、石油禁輸にまで踏み込まなければならないほど、これまでの対北朝鮮制裁は正恩氏の高笑いを止められなかった。経済制裁は北朝鮮に経済的打撃を与えられなかったのだ。
 韓国政府の調査などによれば、北朝鮮の国内総生産(GDP)は年間300億~400億ドルで、軍事支出は約100億ドルに上る。ミサイルや核開発を支えるのは輸出収入による外貨で、中国向けが全体の約9割を占める。中国の貿易統計によれば、北朝鮮からの輸入は2016年で27億ドル。このほかに、中国などへの出稼ぎ者からピンハネする分が年間約10億ドルという。
 8月初旬、国連安保理は、北朝鮮からの石炭、鉄鉱石の輸入禁止などを決議した。その時、トランプ氏は「制裁効果は10億ドル相当」とツィッターで上機嫌だったが、金氏の返事は6回目の核実験だ。
 従来の経済制裁には致命的な欠陥がある。それを利用する元凶は、北朝鮮にとって最大の貿易相手、朝鮮戦争で「血の友誼(ゆうぎ)」を交わした中国である。北朝鮮は制裁によって輸出が減ると外貨収入が落ち込むので、軍用、民生用を問わず、輸入に支障をきたすはずだ。ところが、中国からの輸入は急増し続けている。なぜ、可能なのか。答えは簡単、中国の大手銀行が中国内外のネットワークを経由して信用供与、つまり金融協力しているからだ。
 中国銀行など大手国有商業銀行が北朝鮮に協力していることは、米財務省がオバマ政権時代から綿密に調べ上げてきた。国連事務局も実態を把握している。ならば、中国からの対北朝鮮金融ルートを遮断すれば、確実に制裁の実を挙げられる。そのためには、米政府が中国銀行など大手銀行に対し、ドル取引禁止という制裁を加えればよい。世界の基軸通貨ドルを入手できなくなれば、中国の金融機関はたちまち干上がるので、米側の要求に応じざるをえなくなるはずだ。ところが、オバマ前政権はもとより、トランプ政権もまた逡巡(しゅんじゅん)している。
 トランプ氏は3日付のツィッターで「(中国の対北朝鮮圧力は)ほとんど成果を上げなかった」「北朝鮮とビジネスをする全ての国との貿易停止を検討している」とぶち上げた。北朝鮮とビジネス取引する最大の国とは、もちろん中国のことである。ムニューシン財務長官は大統領の指示を受けて「北朝鮮との取引を望む者は米国と取引できないようにする」と言明し、北朝鮮に協力する中国企業リストを作成中だが、ワシントンの関係筋からは「銀行大手は対象外」と聞く。なぜか。
 大手銀行が国際金融市場から締め出されると、中国で信用不安が起きかねず、もとよりバブルにまみれた金融市場が震撼(しんかん)する。習近平政権は激しく反発し、米企業に報復しかねない。アップルなどは中国が最大の市場であり、トランプ政権が6月以来検討中の、通商法301条での対中制裁にも米産業界は困惑している。米企業や消費者も中国からの輸入にかなり依存している。「米経済に打撃を与えることなく中国との貿易を大幅に制限することはほぼ不可能だ」(5日付米ウォールストリート・ジャーナル紙電子版)と専門家はみる。
 ここでグラフを見よう。中国はトランプ政権になって以来、対米輸出と対米黒字増を加速させている。トランプ政権の対中融和路線に便乗して中国は思うがままにドルを稼ぎ、北朝鮮に資金供給できるのだ。今、なすべき経済制裁は中国の対北朝鮮金融ルートを完全に遮断する対中金融制限ではないか。北京が米国だけを逆報復できなくなるよう、日欧も同調すべきだ。(編集委員)
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